「深山伯爵令嬢の件と、今回の件は関係ありませんか?」
「……機密事項で、この場にいる者を信頼しての発言とする」
隼人は前置きしたあと、誘拐事件について分かっている事を話し始めた。
「深山伯爵令嬢は憔悴していたものの、無傷と言っていい。怖ろしい目に遭って混乱していたが、一週間経ってかなり落ち着いてきている。菖蒲さんがブローチの記憶を読んだ時に、一味が言っていたように、奴らの目的は五百木侯爵だった」
一旦息を吐き、隼人は続ける。
「五百木侯爵は青龍を使役する四大侯爵だ。……そして襲撃を受けた我が三千風家も、白虎を使役する四大侯爵家だ」
彼がそこまで言ったあと、燕谷は嘆息混じりに言う。
「……〝神無月の鴉〟の目的は、四聖獣を使役する侯爵の力を削ぐ事?」
それは、いわば国家転覆に繋がる。
大日本帝国は東と西の拠点にある大きな結界を拠点に、神話の時代に暴れたという拾の鬼や、その腹心である二体の玖の鬼を封じているという。
先の大戦で暴れた捌の鬼よりも、もっと大きな災害だ。
神話の時代、神の使いである古い天子は、黄龍の力と配下である四聖獣の力でもって大きな災いを鎮めた。
それ以来、東では皇居、西では京都御所が封印の拠点として守られ、それを各地の四大侯爵が守っている。
現在、京都御所には天子の妹君が住まい、西の封印を守っている。
「……白虎の封印を狙っているなら、思っているより厄介な事になりそうだな」
隼人が溜め息をつき、眉間に深い皺を寄せて言う。
「私の両親は捌の鬼が出現する前に殺された。……四聖獣の封印は特殊な宝物と、四聖獣を使役する術者の命と連動している。……当時、父の他にも玄武の当主が暗殺された。それで封印が緩み、捌の鬼が出現したと読んでいる」
とんでもない話を聞き、紫乃は顔を青くしていた。
葛もまた、家族を喪った原因である捌の鬼が〝神無月の鴉〟によって意図的に出現させられた可能性があると知り、拳を固く握っている。
隼人は昂ぶった気持ちを落ち着かせるようにもう一度息を吐き、紫乃を見た。
「そして、なぜ菖蒲さんを狙ったか……、だな」
話題が自分に移り、紫乃は決まり悪く視線を落とす。
「……引き続き、〝神無月の鴉〟への調査を進める。今考えても結論の出ない事を、ここで悩んでも仕方がない。燕谷と葛は通常業務に戻り、同時に情報屋や屋敷に出入りしている商人からも、関連情報を得られないか確かめてくれ」
「かしこまりました」
「菖蒲さんも気になる事が多いだろうが、今は結婚式を挙げる事を第一に考えてくれ。そのあとは私の妻として社交界に出るなど、忙しくなる」
「はい」
いまだ自分は隼人に〝菖蒲〟と呼ばれていて、そのたびに胸が痛むのだが、ここまできて「実は嘘をついていたんです」と志摩に逃げ帰る訳にいかない。
実家が援助を受けている以上、自分は菖蒲として三千風家でうまくやっていかなければならないのだ。
「……機密事項で、この場にいる者を信頼しての発言とする」
隼人は前置きしたあと、誘拐事件について分かっている事を話し始めた。
「深山伯爵令嬢は憔悴していたものの、無傷と言っていい。怖ろしい目に遭って混乱していたが、一週間経ってかなり落ち着いてきている。菖蒲さんがブローチの記憶を読んだ時に、一味が言っていたように、奴らの目的は五百木侯爵だった」
一旦息を吐き、隼人は続ける。
「五百木侯爵は青龍を使役する四大侯爵だ。……そして襲撃を受けた我が三千風家も、白虎を使役する四大侯爵家だ」
彼がそこまで言ったあと、燕谷は嘆息混じりに言う。
「……〝神無月の鴉〟の目的は、四聖獣を使役する侯爵の力を削ぐ事?」
それは、いわば国家転覆に繋がる。
大日本帝国は東と西の拠点にある大きな結界を拠点に、神話の時代に暴れたという拾の鬼や、その腹心である二体の玖の鬼を封じているという。
先の大戦で暴れた捌の鬼よりも、もっと大きな災害だ。
神話の時代、神の使いである古い天子は、黄龍の力と配下である四聖獣の力でもって大きな災いを鎮めた。
それ以来、東では皇居、西では京都御所が封印の拠点として守られ、それを各地の四大侯爵が守っている。
現在、京都御所には天子の妹君が住まい、西の封印を守っている。
「……白虎の封印を狙っているなら、思っているより厄介な事になりそうだな」
隼人が溜め息をつき、眉間に深い皺を寄せて言う。
「私の両親は捌の鬼が出現する前に殺された。……四聖獣の封印は特殊な宝物と、四聖獣を使役する術者の命と連動している。……当時、父の他にも玄武の当主が暗殺された。それで封印が緩み、捌の鬼が出現したと読んでいる」
とんでもない話を聞き、紫乃は顔を青くしていた。
葛もまた、家族を喪った原因である捌の鬼が〝神無月の鴉〟によって意図的に出現させられた可能性があると知り、拳を固く握っている。
隼人は昂ぶった気持ちを落ち着かせるようにもう一度息を吐き、紫乃を見た。
「そして、なぜ菖蒲さんを狙ったか……、だな」
話題が自分に移り、紫乃は決まり悪く視線を落とす。
「……引き続き、〝神無月の鴉〟への調査を進める。今考えても結論の出ない事を、ここで悩んでも仕方がない。燕谷と葛は通常業務に戻り、同時に情報屋や屋敷に出入りしている商人からも、関連情報を得られないか確かめてくれ」
「かしこまりました」
「菖蒲さんも気になる事が多いだろうが、今は結婚式を挙げる事を第一に考えてくれ。そのあとは私の妻として社交界に出るなど、忙しくなる」
「はい」
いまだ自分は隼人に〝菖蒲〟と呼ばれていて、そのたびに胸が痛むのだが、ここまできて「実は嘘をついていたんです」と志摩に逃げ帰る訳にいかない。
実家が援助を受けている以上、自分は菖蒲として三千風家でうまくやっていかなければならないのだ。



