役立たずの身代わり令嬢と、孤独な白虎の侯爵

「どうしてですかっ!?」

 逆にガバッと顔を上げた四人に尋ねられ、紫乃(しの)は逃げ場がない状態でたじろぐ。

「今回の事件は、完全にこちらの落ち度でした」

(かずら)さんにはしかるべきヤキを入れますので」

「ちょっと和鼓(わこ)、言葉が乱れているわ」

 彼女たちは口々に言い、一旦落ち着いたあと、「仕事をしましょう」と紫乃が着ている着物を脱がせ始める。

「鬼たちと戦っていても、他の様子を見る余裕はあったのです。特に屋敷に侵入されないように目を光らせていたら、菖蒲(あやめ)様が葛さんと一緒に出てこられたのを確認しました。それを見て、音更(おとふけ)さんは何らかの事情で失敗したのだな、と理解しました」

 花鈴(かりん)は帯を解きながら言い、三琴(みこと)が紫乃の髪を解きつつ続ける。

「最低でも誰かは菖蒲様のお側にいるべきなのは分かっていましたが、てっきり燕谷(つばたに)さんがその役目を負うものと思っていたのです。……だって、葛さんって鬼を見たら戦闘狂みたいになって、嬉々として戦うんですもの」

 彼女たちが葛の過去を知っているかは分からないが、彼が鬼を天敵としているのは周知の事実らしい。

「私たちは戦いながら燕谷さんに確認しましたが、どうやら葛さんが『お屋敷と菖蒲様の事は自分に任せてほしい』と言ったそうで、違和感を抱きながらも任せたそうです。……そのあとは……、燕谷さんも、いざとなったら血湧き肉躍る人ですからねぇ……」

 和鼓が言い、小笛(こふえ)が続ける。

「だから何となく、全体的におかしいと思っていたのです。そして菖蒲様と葛さんが表に出て来たでしょう? そうしたら葛さんの様子が変だし、菖蒲様が動揺されていて、『お助けしないと!』と思った時に旦那様がお戻りになられて……」

 かしましく話している間もメイドたちは手を動かし、紫乃はあっという間に肌襦袢一枚の姿になる。

「旦那様がお戻りになられて安心したものの、菖蒲様と葛さんは折り重なって気絶したまま。旦那様は一切触れるなとご命令し……。……とにかく、二人ともお目覚めになって良かったです」

 花鈴は溜め息をつき、大切そうに紫乃の紙を柘植の櫛で梳いていく。

 その優しい手の感触をありがたく思いながら、紫乃は心優しいメイドたちに感謝しつつ、胸の内を晒した。

「……私、本当は皆さんに嫌われ、疑われているのではと思っていたのです」

「そんな……っ」

 和鼓が何か言いかけたが、三琴が「最後まで聞きましょう」と彼女を制す。