あからさまに動揺すれば、聡い彼の事だから隠し事があると悟られてしまう。
だから平静を装ってとっさに微笑んだが、その笑顔も今の言葉にはそぐわない表情だと思い直し、キュッと唇を引き結んだ。
結果的に紫乃は明らかに動揺してしまい、隼人に何と言われるか、緊張して待っていた。
隼人はしばらく紫乃を見つめ、彼女はその沈黙に耐えきれずドキドキと胸を高鳴らせる。
頑ななまでにまっすぐ前を向いていたが、隼人が髪を撫でて耳に掛けてきたので、ビクッと肩を跳ねさせて彼を見てしまった。
「っ……」
その途端、飴色と言っていいほど色素の薄い美しい目と視線がかち合い、紫乃は真っ赤になる。
昨晩に何度か視線が合った時も『変わった色の目をしている』と思っていたが、明るい中で見ると余計にその美しさが際立っているように思えた。
「汀菖蒲という女性は、伯爵家である汀家の長女で、その華やかな美しさも相まって周囲から褒めそやされて生きてきた。異能によって呼んだ雨は、取り憑かれた者を浄化する力があり、裏伊勢の巫女となる存在と言われている。……これが、私の知っている汀菖蒲の情報だ」
隼人が静かな声音で言った言葉を聞き、紫乃はまた前を向いて冷や汗を掻く。
「求婚するにあたり、写真の交換はしていない。私はどうしても〝汀菖蒲〟さんと結婚したいと思ったから、容姿は問題ないと思ったからだ」
隼人がそこまで菖蒲を想っていたと知り、紫乃はこの上ない罪悪感を抱いて押し黙る。
「昨晩、菖蒲さんの顔を見た私は、『探していたのは君だ』と確信した。……だが、この情報との相違、違和感はどうだろうね? 〝君〟が持っている異能は動物や物の記憶や意識を辿る事のできる能力。……下手をすれば、人の心を読む事も可能な力だ」
そう言われ、紫乃はハッと目を見開き隼人を見た。
彼は悠然とした態度を崩さず、真偽を見定めるように紫乃を見つめている。
「……わ、私、そんな事……」
他人の心を読むなど怖ろしい事はしたくない。
知らなくてもいい事を知り、傷付き絶望するのが関の山だ。
動揺した紫乃は、無意識に手首にある腕輪を弄りながら首を左右に振るが、隼人は真意の分からない表情で彼女を見て微笑んでいる。
「どちらにせよ、私は〝君〟と結婚すると決めている。菖蒲さんをここから追い出すなんて考えていないし、……むしろ、逃がさないよ?」
最後にそう言って、隼人はスルリと紫乃の髪を手に取り、うやうやしく毛先に口づけた。
「な……っ」
異性にそんな事をされた事のない紫乃は、真っ赤になって身を引く。
「……白虎」
隼人が呼んだ瞬間、昨晩見た小さな白虎がフワッと現れた。
「わぁ……」
虎は猛獣だと分かっているが、仔犬ほどの大きさの白虎を見ると「可愛い」という感情が先立つ。
ハクトは大きな青い目で紫乃をジッと見つめたかと思うと、頬に顔をすり寄せてきた。
「わ……っ、きゃあっ、あははっ」
そしてザラザラとした舌で顔を舐めてくるので、紫乃は想わず声上げて笑ってしまった。
隼人はそんな紫乃の姿を見て微笑んでいる。
「ハクトは三千風家の当主が使役する、力ある使役獣だ。だから当然気位が高いし、主人と認めた者以外には懐かない」
「えっ?」
だから平静を装ってとっさに微笑んだが、その笑顔も今の言葉にはそぐわない表情だと思い直し、キュッと唇を引き結んだ。
結果的に紫乃は明らかに動揺してしまい、隼人に何と言われるか、緊張して待っていた。
隼人はしばらく紫乃を見つめ、彼女はその沈黙に耐えきれずドキドキと胸を高鳴らせる。
頑ななまでにまっすぐ前を向いていたが、隼人が髪を撫でて耳に掛けてきたので、ビクッと肩を跳ねさせて彼を見てしまった。
「っ……」
その途端、飴色と言っていいほど色素の薄い美しい目と視線がかち合い、紫乃は真っ赤になる。
昨晩に何度か視線が合った時も『変わった色の目をしている』と思っていたが、明るい中で見ると余計にその美しさが際立っているように思えた。
「汀菖蒲という女性は、伯爵家である汀家の長女で、その華やかな美しさも相まって周囲から褒めそやされて生きてきた。異能によって呼んだ雨は、取り憑かれた者を浄化する力があり、裏伊勢の巫女となる存在と言われている。……これが、私の知っている汀菖蒲の情報だ」
隼人が静かな声音で言った言葉を聞き、紫乃はまた前を向いて冷や汗を掻く。
「求婚するにあたり、写真の交換はしていない。私はどうしても〝汀菖蒲〟さんと結婚したいと思ったから、容姿は問題ないと思ったからだ」
隼人がそこまで菖蒲を想っていたと知り、紫乃はこの上ない罪悪感を抱いて押し黙る。
「昨晩、菖蒲さんの顔を見た私は、『探していたのは君だ』と確信した。……だが、この情報との相違、違和感はどうだろうね? 〝君〟が持っている異能は動物や物の記憶や意識を辿る事のできる能力。……下手をすれば、人の心を読む事も可能な力だ」
そう言われ、紫乃はハッと目を見開き隼人を見た。
彼は悠然とした態度を崩さず、真偽を見定めるように紫乃を見つめている。
「……わ、私、そんな事……」
他人の心を読むなど怖ろしい事はしたくない。
知らなくてもいい事を知り、傷付き絶望するのが関の山だ。
動揺した紫乃は、無意識に手首にある腕輪を弄りながら首を左右に振るが、隼人は真意の分からない表情で彼女を見て微笑んでいる。
「どちらにせよ、私は〝君〟と結婚すると決めている。菖蒲さんをここから追い出すなんて考えていないし、……むしろ、逃がさないよ?」
最後にそう言って、隼人はスルリと紫乃の髪を手に取り、うやうやしく毛先に口づけた。
「な……っ」
異性にそんな事をされた事のない紫乃は、真っ赤になって身を引く。
「……白虎」
隼人が呼んだ瞬間、昨晩見た小さな白虎がフワッと現れた。
「わぁ……」
虎は猛獣だと分かっているが、仔犬ほどの大きさの白虎を見ると「可愛い」という感情が先立つ。
ハクトは大きな青い目で紫乃をジッと見つめたかと思うと、頬に顔をすり寄せてきた。
「わ……っ、きゃあっ、あははっ」
そしてザラザラとした舌で顔を舐めてくるので、紫乃は想わず声上げて笑ってしまった。
隼人はそんな紫乃の姿を見て微笑んでいる。
「ハクトは三千風家の当主が使役する、力ある使役獣だ。だから当然気位が高いし、主人と認めた者以外には懐かない」
「えっ?」
