「どうした?」
隼人が尋ねてくるが、落ち着いた様子の彼には、悲鳴が聞こえていないようだ。
「……じょ、……女性の悲鳴が聞こえませんでしたか?」
「いいや」
「では……」
自分は石の声を聞く事ができたのだろうか?
混乱した紫乃はテーブルの上にあるブローチを見るが、それは先ほどと変わらぬ輝きを放っているだけだ。
「菖蒲さんには女性の悲鳴が聞こえた?」
隼人に尋ねられ、紫乃は頷く。
「では、私の見立ては正しかったみたいだね。もっと石の声を探れるかい?」
その時の紫乃は、慣れない事をして幾分顔を青ざめさせていた。
しかし隼人は微笑したまま、さらに彼女に石の声を聞かせようとしている。
(……この方、見たままのお優しい人ではないのかもしれない。中佐殿だから、相応に冷酷な面も、任務のためなら手段を問わないところもあるのかも)
彼が大金を払って自分を救ったのは、妻になる女性を助けるためだと思っていた。
しかし蓋を開けてみれば、それ以上の目的があるのかもしれない。
(それでも、私の利用価値を示さなければ)
グッと目の奥に力を込めた紫乃は、「やります」と返事をして再度ルビーのブローチに触れた。
目を閉じてルビーに意識を集中させると、強い恐怖と動揺が伝わってきた。
紫乃は表情を強張らせ、唇を引き結ぶとさらに意識を落とし込む。
【何者なの!? どうしてあたくしを狙うの!?】
先ほどの悲鳴の主である女性の声が聞こえる。
――見せて。
ルビーに向かって念じると、目を閉じたままだというのに、グワッと視界が開けたような感覚になった。
ブローチは女性の胸元にあり、手袋に包まれた彼女の手が見える。
女性は馬車に乗っている途中で襲撃に遭ったらしく、両手で必死にドアを閉じようとしているが、外側から面を被った男たちが押し入ろうとして力負けしている。
「……男たちが女性を襲っています」
「その男たちの顔は分かるかい?」
紫乃は目を閉じてここにはない映像を見たまま、伝わってくる情報を隼人に伝える。
「面を被っています。……烏天狗?」
馬車に乗っている女性を襲っている男たちは、皆口元がつんと尖った面を被っている。
「黒装束で闇夜に紛れ、……他はあまりよく分かりません」
【こっちへ来い!】
男の一人が怒鳴り、女性を馬車から引きずり出す。
女性の恐怖心がそのまま伝わり、紫乃はガクガクと震えながらも歯を食いしばり、ルビーから指を離すまいとする。
――と、フワッといい香りがしたかと思うと、隼人に肩を抱かれていた。
ハッと目を開けると、見とれるほどの美貌が迫っている。
隼人が尋ねてくるが、落ち着いた様子の彼には、悲鳴が聞こえていないようだ。
「……じょ、……女性の悲鳴が聞こえませんでしたか?」
「いいや」
「では……」
自分は石の声を聞く事ができたのだろうか?
混乱した紫乃はテーブルの上にあるブローチを見るが、それは先ほどと変わらぬ輝きを放っているだけだ。
「菖蒲さんには女性の悲鳴が聞こえた?」
隼人に尋ねられ、紫乃は頷く。
「では、私の見立ては正しかったみたいだね。もっと石の声を探れるかい?」
その時の紫乃は、慣れない事をして幾分顔を青ざめさせていた。
しかし隼人は微笑したまま、さらに彼女に石の声を聞かせようとしている。
(……この方、見たままのお優しい人ではないのかもしれない。中佐殿だから、相応に冷酷な面も、任務のためなら手段を問わないところもあるのかも)
彼が大金を払って自分を救ったのは、妻になる女性を助けるためだと思っていた。
しかし蓋を開けてみれば、それ以上の目的があるのかもしれない。
(それでも、私の利用価値を示さなければ)
グッと目の奥に力を込めた紫乃は、「やります」と返事をして再度ルビーのブローチに触れた。
目を閉じてルビーに意識を集中させると、強い恐怖と動揺が伝わってきた。
紫乃は表情を強張らせ、唇を引き結ぶとさらに意識を落とし込む。
【何者なの!? どうしてあたくしを狙うの!?】
先ほどの悲鳴の主である女性の声が聞こえる。
――見せて。
ルビーに向かって念じると、目を閉じたままだというのに、グワッと視界が開けたような感覚になった。
ブローチは女性の胸元にあり、手袋に包まれた彼女の手が見える。
女性は馬車に乗っている途中で襲撃に遭ったらしく、両手で必死にドアを閉じようとしているが、外側から面を被った男たちが押し入ろうとして力負けしている。
「……男たちが女性を襲っています」
「その男たちの顔は分かるかい?」
紫乃は目を閉じてここにはない映像を見たまま、伝わってくる情報を隼人に伝える。
「面を被っています。……烏天狗?」
馬車に乗っている女性を襲っている男たちは、皆口元がつんと尖った面を被っている。
「黒装束で闇夜に紛れ、……他はあまりよく分かりません」
【こっちへ来い!】
男の一人が怒鳴り、女性を馬車から引きずり出す。
女性の恐怖心がそのまま伝わり、紫乃はガクガクと震えながらも歯を食いしばり、ルビーから指を離すまいとする。
――と、フワッといい香りがしたかと思うと、隼人に肩を抱かれていた。
ハッと目を開けると、見とれるほどの美貌が迫っている。
