役立たずの身代わり令嬢と、孤独な白虎の侯爵

「息子たちは西の男らしく、女子を敬える男に育てましたさかいな。自分らに、生き別れになった妹――姉がおると知った時には、半狂乱になっておりましたけど……ようやく会わせる事ができて、わたくしも感無量です」

 ゆったりとソファに座った(あおい)が満足げに言い、その後ろで時子(ときこ)が自慢げに言った。

「私はお嬢様の成長と共に、こっそり念写を撮っては、水流迫(つるざこ)家へ送っておりました。せやからご家族は、お嬢様が日々大きゅうなられていくお姿を、ちゃんと見守っておいでやったんですよ」

 感動の再会が終わったあと、全員が席につき、新たなお茶とお茶菓子が出された。

「改めて、ご紹介させてください。あちらが夫の、水流迫白瑛(はくえい)――四十六歳。わたくしは、水流迫葵。四十四になります。兄の琉王(るおう)は二十五歳、弟の輝更(きさら)は十六歳。……兄弟そろうて、立派な妹――姉好きに育ってしもうたようです」

 葵が自慢げに言うと、隼人(はやと)が横を向いて「余計な事を……」とボソッと呟いた。

「……お、……お父様、お母様、……お兄様、……き、……輝更……くん。……紫乃です。……宜しくお願いいたします」

 紫乃(しの)が初対面の家族におずおずと挨拶をすると、葵は感無量という表情で拍手をし、兄弟は暑苦しく喜んだ。

「聞いたか!? 輝更! お兄様やぞ、お兄様……! ああ、もうあかん……抱き締めたい……っ!」

「僕なんて〝輝更くん〟ですよ!? あぁ……っ、ずるいです兄上……僕も抱き締めとうございます……っ!」

 その反応を見て、隼人は笑顔で言いのけた。

「どうやらご子息に教育する際、ある種の歪みを与えてしまったようですね」

 彼の言葉を聞き、兄弟は剣呑な目で隼人を睨んだ。

「――勘違いせんといてください。私らは、まだあなたとの婚儀を認めたわけやあらしまへん」

「そうですよ。水流迫家の総意が得られてへんいう理由で、お姉様を西へお連れしてしまう事もできるんですからね?」

「あ……っ、あの!?」

 話が思いも寄らない方向に飛んで行き、紫乃は慌てて隼人と兄弟を諫めようとする。