言の葉の涯

2026-05-08
『少し会いたかっただけ』

「少し会いたかっただけ、そんなつもりなかった」
或る女性が、SNSに本音を投稿していたのに対し。

「俺も会いたいな、どこにいるの?」
アニメキャラのアイコンが返信する。

怖いと思ったのか、女性は本音をすぐに消した。

アニメキャラの人がどんな人物なのかを知りたくて
アイコンをタップして投稿を遡るように見ていくと。

地下アイドルの追っかけみたいなのをしている
ごくありふれた一般人のような投稿をしていた。

ただ、1人の女性に執着をするようにして
「会いたい」「好き」「夢に出てきた」と
コメントをしているのも見ることができて。

届かない愛を、届かない場所で、届かないなりに
表現をするその人のことが少し気になってしまう。

返信の欄を見てみると、色々な人と会話をしていて
微笑ましい会話もあれば、罵詈雑言の会話もあって
人間ってどこまでも愚かなんだな、と勝手に思った。

あ、殺害予告をしている。

スクロールしていた手を止めて
その会話をより詳しく見てみる。

どうやら、この人が推しているメンバーのことを
馬鹿にしているアカウントに対しての返信だった。

「殺す」

たった一文がSNS上には残り続けていて
日付を見るともう、2年前のものだった。

きっと書いた本人は覚えてすらいないけど
書いた言葉はずっと残り続けているのだと。

またスクロールして、その人の過去を遡り
何か突っかかりはないか見ていくのだけど。

アカウントを作成した4年前まで見たのだけど
突っかかりはあの殺害予告だけに過ぎなかった。

一旦ホームに戻り、またその人のアイコンを押して
新たに書き込んでいることはないか確かめてみると。

「監視をするな、俺は知ってる」
1分前、こんな投稿をしていた。

あ、自分が眺めていたのがバレてしまったのか
少し不安になり、SNSを閉じてスマホを置いた。

ピンポーン

チャイムが鳴って、不安だった僕は飛び跳ねてしまう。
覗き穴から配達員だと知り、「はーい」と言って出た。

数日前、ネットショッピングしたものが
今日、届く予定だったことを忘れていた。

配達員から受け取った荷物を一旦置いて
また、スマホを開いてSNSを見てしまう。

通知が一件、届いている。

「これ以上、監視するならお前も殺す」
通知オンにしていたせいで、目に入る。

その投稿を開くと返信が1つだけ来ていて
「なら、まずお前が死ね」と書かれていた。

あの女性だ。

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