2026-05-09
『猫は眠った』
異性としての魅力がないって言われたら
どうしようもないと思うんだよね、私は。
そう話してくれる女性に対して
「対策とかしてるの」と訊ねた。
猫が女性の膝に乗って来るや否や
撫でてほしそうに腹を見せている。
慣れた手つきで腹を撫でてやりながら
「対策なのかは分からないけどね」と
愛おしそうに猫を見ながら話し始めた。
「彼氏と同棲をしているわけではないけど」
「同棲みたいな感じなのね、今の彼氏とは」
「数日間、住み着いてしまうみたいな感じ」
僕は「分かるよ、友達にもそういう人いる」と
女性の話に共感しながら、首を延々と縦に振る。
「やっぱり同じ部屋に住んでいたらさ」
「着替えないといけないときもあって」
「でも、着替えるところは見せないの」
「脱衣所とか行って、見えないように」
女性の膝に乗っていた猫は飽きたのだろうか
女性から降り、別の客の元へ行ってしまった。
「あ、猫ちゃん。この話はつまらないね」
女性は悲しそうな表情でボソッと呟いた。
「その話、一理あると思うんだよね」
「着替える瞬間ってなんか特別だし」
「見てしまうと、異性な気がしない」
このカフェのボスみたいな黒猫がトボトボと
僕のもとへ歩み寄るようにして近付いてくる。
ふてぶてしい表情をしているというのに
可愛げがあり、抱きかかえて膝に乗せた。
「なんかこの子、君みたいだ」
女性が僕のことを指してくる。
「は?」と少し苛立った返事をしてから
膝に乗せた猫に視線を移すのだけれども
ただ目が合って、その色は真っ黒だった。
「さっきの話、そうなの。着替える瞬間はね」
「見せたところで良い結果になる気がしない」
「だからまだ、彼氏と付き合えてる気もする」
紙コップに入った珈琲を一口だけ啜り
女性はそこまで言い切って立ち上がり。
猫がたくさんいるところへと行ってしまった。
僕も紙コップを持ち、遠くにいる女性を見る。
友達の彼女と猫カフェに来ることは
果たして良いことなのだろうか、と
疑問に思って、友達に連絡を入れた。
「ああ、話は聞いてるから大丈夫だよ」
「お前だから何もないって信頼してる」
「とりあえず、彼女のことよろしくな」
すぐに返信が来て、僕はリアクションを残し
スマホから女性のほうへとまた視線を戻した。
たくさんの猫に囲まれていて、例えるならば
アイドルがファンに囲まれているような感じ。
「異性としての魅力とか悩んだりするの?」
膝に乗っている猫に対し、少し話しかけた。
ふてぶてしくて、きっと伝わっていない。
「にゃー」と鳴き、そのまま猫は眠った。
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『猫は眠った』
異性としての魅力がないって言われたら
どうしようもないと思うんだよね、私は。
そう話してくれる女性に対して
「対策とかしてるの」と訊ねた。
猫が女性の膝に乗って来るや否や
撫でてほしそうに腹を見せている。
慣れた手つきで腹を撫でてやりながら
「対策なのかは分からないけどね」と
愛おしそうに猫を見ながら話し始めた。
「彼氏と同棲をしているわけではないけど」
「同棲みたいな感じなのね、今の彼氏とは」
「数日間、住み着いてしまうみたいな感じ」
僕は「分かるよ、友達にもそういう人いる」と
女性の話に共感しながら、首を延々と縦に振る。
「やっぱり同じ部屋に住んでいたらさ」
「着替えないといけないときもあって」
「でも、着替えるところは見せないの」
「脱衣所とか行って、見えないように」
女性の膝に乗っていた猫は飽きたのだろうか
女性から降り、別の客の元へ行ってしまった。
「あ、猫ちゃん。この話はつまらないね」
女性は悲しそうな表情でボソッと呟いた。
「その話、一理あると思うんだよね」
「着替える瞬間ってなんか特別だし」
「見てしまうと、異性な気がしない」
このカフェのボスみたいな黒猫がトボトボと
僕のもとへ歩み寄るようにして近付いてくる。
ふてぶてしい表情をしているというのに
可愛げがあり、抱きかかえて膝に乗せた。
「なんかこの子、君みたいだ」
女性が僕のことを指してくる。
「は?」と少し苛立った返事をしてから
膝に乗せた猫に視線を移すのだけれども
ただ目が合って、その色は真っ黒だった。
「さっきの話、そうなの。着替える瞬間はね」
「見せたところで良い結果になる気がしない」
「だからまだ、彼氏と付き合えてる気もする」
紙コップに入った珈琲を一口だけ啜り
女性はそこまで言い切って立ち上がり。
猫がたくさんいるところへと行ってしまった。
僕も紙コップを持ち、遠くにいる女性を見る。
友達の彼女と猫カフェに来ることは
果たして良いことなのだろうか、と
疑問に思って、友達に連絡を入れた。
「ああ、話は聞いてるから大丈夫だよ」
「お前だから何もないって信頼してる」
「とりあえず、彼女のことよろしくな」
すぐに返信が来て、僕はリアクションを残し
スマホから女性のほうへとまた視線を戻した。
たくさんの猫に囲まれていて、例えるならば
アイドルがファンに囲まれているような感じ。
「異性としての魅力とか悩んだりするの?」
膝に乗っている猫に対し、少し話しかけた。
ふてぶてしくて、きっと伝わっていない。
「にゃー」と鳴き、そのまま猫は眠った。
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