2026-05-11
『失いたくないこと』
つい先日、「失いたくないこと」と題して
幾つかの意見を視聴者から募集したところ。
「一緒に過ごした事実」とか
「あの頃、愛した記憶」とか
「結婚する予定の相手」とか
様々な人生が言葉として送られてきていて
それぞれが違う温度を持っていると思った。
ふと、指が止まる。
「死んでほしかった人が死んでしまって」
「けど、悲しいという感情を抱いたこと」
他の意見には温かみがあるように感じたが
この意見だけには冷たさがあるように感じ。
書かれていたIDからアカウントを調べ
どんな人なのだろうと少し興味が湧く。
なんか宗教みたいなアイコンをしていて
プロフィールにはよく分からない言葉が
ずらずらと長く書かれているものだった。
触れるべき人ではないと思って
開いたアカウントを静かに閉じ
再び幾つかの意見に目を通した。
「あなたを失いたくないです、あなたをです」
告白じみた言葉も書かれていて、少し嬉しい。
通知が届いた。
「私、失いたくないって言葉にしてしまうと」
「何もかもを失う気がして言葉にできません」
「それが怖いんです、その場合どうしますか」
女の子から連絡が来ていて、それを承認して
「失うのは必要がないからだよ」と一言だけ
少し厳しめなことを年下のその子に送信した。
次々と意見が増えてきて、見るだけでも
その人らの人生を想像して疲れてしまう。
「彼を失いたくない、もう別れたけど」とか
「愛した記憶は無くならないですよね」とか
「やっぱり空気じゃないですかね笑笑」とか
冗談を交えた意見もチラホラ目に入り
その人にDMで「必要やね」と送った。
間髪入れず、「生きるためには必須です」と
中学生っぽいアイコンのその子が返信をする。
それにリアクションだけ残して
その子との会話は一瞬で終わり。
「必要がなくても失いたくないですよ」
「まさをさんは失ってもいいんですか」
さっき返信をした女の子から連絡が来ていて
「失ってもいい、今の自分に必要ないし」と
どこか他人事のように文字を紡いで返信した。
「まさをさんってそんな人だったんですね」
その言葉だけ残して、フォローを外された。
また新たに幾つかの意見が送られてきていて
どれどれ、と食い入るようにスクロールする。
「元気?」
見覚えのあるアイコンから送られてきていて
誰だったか思い出したくても、思い出せない。
「元気ならいいの、見たら連絡して」
続けるようにそう送られてきていた。
少し思い出した。
もう必要がない元カノとの記憶が
どんどんと鮮明に蘇っていくけど
元カノのことはもう思い出せない。
「元気だよ、なんかあった」
女性にそれだけ連絡をする。
「うん、なんかあった。会いたい」
あの頃の記憶と全く同じ繰り返し。
「会えない、てか会いたくない、ごめん」
「分かんないよね、偶然会おう、またね」
僕は意味も分からない文字を紡ぎ
女性へ一方的にそれを送り付けた。
また新たな意見が幾つか届いているみたい。
「ところで、宗教に興味はありませんか?」
触れるべきではない人が、勧誘をしてきた。
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『失いたくないこと』
つい先日、「失いたくないこと」と題して
幾つかの意見を視聴者から募集したところ。
「一緒に過ごした事実」とか
「あの頃、愛した記憶」とか
「結婚する予定の相手」とか
様々な人生が言葉として送られてきていて
それぞれが違う温度を持っていると思った。
ふと、指が止まる。
「死んでほしかった人が死んでしまって」
「けど、悲しいという感情を抱いたこと」
他の意見には温かみがあるように感じたが
この意見だけには冷たさがあるように感じ。
書かれていたIDからアカウントを調べ
どんな人なのだろうと少し興味が湧く。
なんか宗教みたいなアイコンをしていて
プロフィールにはよく分からない言葉が
ずらずらと長く書かれているものだった。
触れるべき人ではないと思って
開いたアカウントを静かに閉じ
再び幾つかの意見に目を通した。
「あなたを失いたくないです、あなたをです」
告白じみた言葉も書かれていて、少し嬉しい。
通知が届いた。
「私、失いたくないって言葉にしてしまうと」
「何もかもを失う気がして言葉にできません」
「それが怖いんです、その場合どうしますか」
女の子から連絡が来ていて、それを承認して
「失うのは必要がないからだよ」と一言だけ
少し厳しめなことを年下のその子に送信した。
次々と意見が増えてきて、見るだけでも
その人らの人生を想像して疲れてしまう。
「彼を失いたくない、もう別れたけど」とか
「愛した記憶は無くならないですよね」とか
「やっぱり空気じゃないですかね笑笑」とか
冗談を交えた意見もチラホラ目に入り
その人にDMで「必要やね」と送った。
間髪入れず、「生きるためには必須です」と
中学生っぽいアイコンのその子が返信をする。
それにリアクションだけ残して
その子との会話は一瞬で終わり。
「必要がなくても失いたくないですよ」
「まさをさんは失ってもいいんですか」
さっき返信をした女の子から連絡が来ていて
「失ってもいい、今の自分に必要ないし」と
どこか他人事のように文字を紡いで返信した。
「まさをさんってそんな人だったんですね」
その言葉だけ残して、フォローを外された。
また新たに幾つかの意見が送られてきていて
どれどれ、と食い入るようにスクロールする。
「元気?」
見覚えのあるアイコンから送られてきていて
誰だったか思い出したくても、思い出せない。
「元気ならいいの、見たら連絡して」
続けるようにそう送られてきていた。
少し思い出した。
もう必要がない元カノとの記憶が
どんどんと鮮明に蘇っていくけど
元カノのことはもう思い出せない。
「元気だよ、なんかあった」
女性にそれだけ連絡をする。
「うん、なんかあった。会いたい」
あの頃の記憶と全く同じ繰り返し。
「会えない、てか会いたくない、ごめん」
「分かんないよね、偶然会おう、またね」
僕は意味も分からない文字を紡ぎ
女性へ一方的にそれを送り付けた。
また新たな意見が幾つか届いているみたい。
「ところで、宗教に興味はありませんか?」
触れるべきではない人が、勧誘をしてきた。
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