2026-06-02
『憐れんだ眼』
喫茶店の窓側の席で、30代くらいの女性2人が
「最近彼氏がね」と話している声が聞こえてくる。
愚痴話に花を咲かせている2人は
紅茶を啜りながら笑い合っていた。
カラン、と扉についていた鈴が鳴って
また別のお客が喫茶店へと入ってくる。
カウンター席に座った20代の女性2人は
もう決めていたのか店員にすぐ注文をした。
「でさ、彼氏が最近ね」とこちらも話し出す。
話している内容は殆どが同じで
どちらも愚痴話に花を咲かせて
女性2人がクスクスと笑い合う。
20代から聞く「彼氏」はまだ初々しくて
30代から聞く「彼氏」は少し重く感じる。
「30代にもなって彼氏とかウケるわ」
そんな声が喫茶店のどこかから聞こえ。
僕はさりげなく辺りを見渡してみたが
30代の女性2人、20代の女性2人
店員がキッチンでグラスを拭いていて
その他に、喫茶店にお客はいなかった。
幻聴か、と自分の耳を疑いながら
グラスを持って紅茶を啜って飲む。
もう冷えているそれに味を感じなくて
僕は角砂糖を2つ、放り込んで混ぜた。
冷えているのだから溶けきれないそれを
スプーンで押し潰すようにして溶かした。
「お待たせしました」と声が聞こえてきて
振り返ると20代の女性らに料理が届いた。
「わぁ、美味しそう」「そうだね、美味しそう」
「写真撮って」「可愛く写るように撮ってよね」
20代の女性2人はキャピキャピと楽しそうで
届いた料理にスマホを向けてシャッターを切る。
「チッ」と舌打ちの音が聞こえた。
今度は僕だけが聞こえたわけではなくて
20代の女性2人も聞こえている様子で
小声で「舌打ち聞こえた」と話している。
さっきまであんなに楽しそうだったのに
大人しくなってしまった2人が可哀そう。
僕はまた喫茶店内をさりげなく見渡して
誰が舌打ちをしたのか知りたかったけど。
持っていたスプーンを机に落としてしまった。
見てはいけないものを見てしまった気がして。
キッチンには店員がもう1人いて
その人が舌打ちを何回もしていた。
スプーンを落とした音が聞こえたのか
その人が「お取替えをします」と来て
新しいスプーンと交換してくれたけど。
どうも使う気にはなれなかった。
30代の女性2人は愚痴を言い終えたのか
レジへ行きお会計を済ませようとしている。
「すみません」と女性が店員を呼ぶ。
さっきの店員がレジへ近付いていく。
「お待たせしました」と女性に話しかけ
レジに立つ店員は憐れんだ眼をしていた。
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『憐れんだ眼』
喫茶店の窓側の席で、30代くらいの女性2人が
「最近彼氏がね」と話している声が聞こえてくる。
愚痴話に花を咲かせている2人は
紅茶を啜りながら笑い合っていた。
カラン、と扉についていた鈴が鳴って
また別のお客が喫茶店へと入ってくる。
カウンター席に座った20代の女性2人は
もう決めていたのか店員にすぐ注文をした。
「でさ、彼氏が最近ね」とこちらも話し出す。
話している内容は殆どが同じで
どちらも愚痴話に花を咲かせて
女性2人がクスクスと笑い合う。
20代から聞く「彼氏」はまだ初々しくて
30代から聞く「彼氏」は少し重く感じる。
「30代にもなって彼氏とかウケるわ」
そんな声が喫茶店のどこかから聞こえ。
僕はさりげなく辺りを見渡してみたが
30代の女性2人、20代の女性2人
店員がキッチンでグラスを拭いていて
その他に、喫茶店にお客はいなかった。
幻聴か、と自分の耳を疑いながら
グラスを持って紅茶を啜って飲む。
もう冷えているそれに味を感じなくて
僕は角砂糖を2つ、放り込んで混ぜた。
冷えているのだから溶けきれないそれを
スプーンで押し潰すようにして溶かした。
「お待たせしました」と声が聞こえてきて
振り返ると20代の女性らに料理が届いた。
「わぁ、美味しそう」「そうだね、美味しそう」
「写真撮って」「可愛く写るように撮ってよね」
20代の女性2人はキャピキャピと楽しそうで
届いた料理にスマホを向けてシャッターを切る。
「チッ」と舌打ちの音が聞こえた。
今度は僕だけが聞こえたわけではなくて
20代の女性2人も聞こえている様子で
小声で「舌打ち聞こえた」と話している。
さっきまであんなに楽しそうだったのに
大人しくなってしまった2人が可哀そう。
僕はまた喫茶店内をさりげなく見渡して
誰が舌打ちをしたのか知りたかったけど。
持っていたスプーンを机に落としてしまった。
見てはいけないものを見てしまった気がして。
キッチンには店員がもう1人いて
その人が舌打ちを何回もしていた。
スプーンを落とした音が聞こえたのか
その人が「お取替えをします」と来て
新しいスプーンと交換してくれたけど。
どうも使う気にはなれなかった。
30代の女性2人は愚痴を言い終えたのか
レジへ行きお会計を済ませようとしている。
「すみません」と女性が店員を呼ぶ。
さっきの店員がレジへ近付いていく。
「お待たせしました」と女性に話しかけ
レジに立つ店員は憐れんだ眼をしていた。
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