2026-04-27
『誰を救えば良かったの』
「おやすみ」と言って別れたとしても
夢の中でデートすれば楽しい、きっと。
そんなことを言う彼女だった。
「楽しすぎて起きたくないかも」
僕は冗談を言って、目を瞑った。
夢の中。
見覚えのある場所で意識が戻り
可笑しくて少し笑ってしまった。
元カノと別れる1週間前に見に行った海
月がそれをただ照らしているだけの場所。
手には浮き輪を持っていて
海で女性が2人溺れている。
どちらかに浮き輪を投げて救えば
どちらかがそのまま沈んでしまう。
「助けて」と女性が声を上げて待っている。
どちらも救わなければどうなるのだろうか。
僕は溺れている2人の女性を見ないふりして
最寄りの駅まで歩いて向かっていこうと思う。
駄目だった。
駅の改札を通ってしまえばまた海に戻り
女性が2人、僕に助けを求めているから。
浮き輪を投げて、1人の女性を救った。
もう1人は段々と沈んで行ってしまう。
「ありがとう」と僕を見て言う女性は
紛れもなく隣で眠っている彼女だった。
「あっ、」と話しかける前に消えていって
そのまま暗闇に包まれて僕は目を覚ました。
深夜3時半を回っていて、お手洗いに向かう。
玄関に置いているフレグランスの香りがする。
お手洗いの電気をつけて扉を開き
「ふ~」と言いながら用を足した。
まだ眠くて寝室へと戻り
隣で寝ている彼女を見て
「おやすみ」と言う前に
僕は眠ってしまっていた。
また、あの海だった。
「またかよ」とボソッと呟いてから見ると
女性が1人溺れていて、助けを求めている。
浮き輪を持ってなかった。
きっと最寄りの駅へ戻って改札を通ろうと
またこの海に戻されそうで僕は海に入った。
冷たいはずなのに、冷たさを感じなくて
女性の溺れているところまで泳ぐのだが。
上手く泳ぐことができないまま
力尽きて、そのまま沈んでいく。
海の底に、僕が見捨てた女性が佇んでいて
でも、僕のことを恨んでいるわけではなく
ただ微笑んで僕のことを見つめているだけ。
「ごめんなさい」と言おうと思った。
ゴボゴボと音が出てくるだけなのに。
微かに声が聞こえた。
「起きて、起きてよ、ねぇ起きて」
彼女が僕を揺すって起こしていた。
目が覚めた僕は「どうした」と訊ねる。
「電気がついているの」と怯えた様子。
お手洗いのほうの電気がついていて
「誰かいるんじゃない?」と言った。
いるわけがない。僕が消し忘れただけ。
「さっき僕がつけたんだった」と言って
「消してくるよ」とお手洗いへと向かう。
妙だ、玄関の鍵が開いている。
ドアが開いた。
数年前に別れた元カノがこちらを覗いてきて
僕と目が合うや否や「いた」と微笑んでいる。
夢の中で見捨てた女性の微笑みと似ている。
--
『誰を救えば良かったの』
「おやすみ」と言って別れたとしても
夢の中でデートすれば楽しい、きっと。
そんなことを言う彼女だった。
「楽しすぎて起きたくないかも」
僕は冗談を言って、目を瞑った。
夢の中。
見覚えのある場所で意識が戻り
可笑しくて少し笑ってしまった。
元カノと別れる1週間前に見に行った海
月がそれをただ照らしているだけの場所。
手には浮き輪を持っていて
海で女性が2人溺れている。
どちらかに浮き輪を投げて救えば
どちらかがそのまま沈んでしまう。
「助けて」と女性が声を上げて待っている。
どちらも救わなければどうなるのだろうか。
僕は溺れている2人の女性を見ないふりして
最寄りの駅まで歩いて向かっていこうと思う。
駄目だった。
駅の改札を通ってしまえばまた海に戻り
女性が2人、僕に助けを求めているから。
浮き輪を投げて、1人の女性を救った。
もう1人は段々と沈んで行ってしまう。
「ありがとう」と僕を見て言う女性は
紛れもなく隣で眠っている彼女だった。
「あっ、」と話しかける前に消えていって
そのまま暗闇に包まれて僕は目を覚ました。
深夜3時半を回っていて、お手洗いに向かう。
玄関に置いているフレグランスの香りがする。
お手洗いの電気をつけて扉を開き
「ふ~」と言いながら用を足した。
まだ眠くて寝室へと戻り
隣で寝ている彼女を見て
「おやすみ」と言う前に
僕は眠ってしまっていた。
また、あの海だった。
「またかよ」とボソッと呟いてから見ると
女性が1人溺れていて、助けを求めている。
浮き輪を持ってなかった。
きっと最寄りの駅へ戻って改札を通ろうと
またこの海に戻されそうで僕は海に入った。
冷たいはずなのに、冷たさを感じなくて
女性の溺れているところまで泳ぐのだが。
上手く泳ぐことができないまま
力尽きて、そのまま沈んでいく。
海の底に、僕が見捨てた女性が佇んでいて
でも、僕のことを恨んでいるわけではなく
ただ微笑んで僕のことを見つめているだけ。
「ごめんなさい」と言おうと思った。
ゴボゴボと音が出てくるだけなのに。
微かに声が聞こえた。
「起きて、起きてよ、ねぇ起きて」
彼女が僕を揺すって起こしていた。
目が覚めた僕は「どうした」と訊ねる。
「電気がついているの」と怯えた様子。
お手洗いのほうの電気がついていて
「誰かいるんじゃない?」と言った。
いるわけがない。僕が消し忘れただけ。
「さっき僕がつけたんだった」と言って
「消してくるよ」とお手洗いへと向かう。
妙だ、玄関の鍵が開いている。
ドアが開いた。
数年前に別れた元カノがこちらを覗いてきて
僕と目が合うや否や「いた」と微笑んでいる。
夢の中で見捨てた女性の微笑みと似ている。
--



