2026-04-28
『どうか、お幸せで』
「どこから浮気だと思う?」と訊ねたとき
「ギリギリを攻めるべきではないよね」と
答えとも言えない返しをしてくる友達の話。
つい先日、結婚をした。
僕は友人代表スピーチを徹夜して考えた挙句
真っ白な紙を手に持ったまま式場へ向かった。
友達は奥さんのウェディングドレス姿を見て
「可愛いよ」と褒めながら写真を撮っている。
扉近くでその光景を眺めていた僕は
それだけで幸せを分けてもらえそう。
僕に気付いた。
「お!今日はスピーチ頼むな。楽しみだわ」
そう言いながら、扉のほうへ近付いてくる。
「でさ、これ見てほしいんだけど」と言い
スマホの画面を僕にも見せてくれたのだが。
写っているのはウェディングドレス姿の奥さんで
「凄く似合っていますね」と奥さんのほうを見て
友達のスマホからは視線を外して、目を合わせた。
「ありがとうございます」と奥さんは礼をするが
横からは「こいつ照れ屋だからな」と友達が言う。
「うるさいな~」と友達の脇腹を突っついて
「思い出作れよ」と言い残してその場を出た。
今のご時世、結婚式を挙げる人が少なかろうに
結婚式を挙げる友達のことが少しだけ羨ましい。
友達の母親と目が合った。
小学生の頃から面倒を見てくれていたから
なんだか懐かしくて、過去がふと頭を過る。
僕も会場にいる人々と同じように席に座り
式が始まるのを今か今かと待ち望んでいた。
大きな扉が開いて、友達が1人で入ってくる。
緊張した表情をしていて、入学式を思い出す。
それから奥さんが父親と入ってきて
友達の待つ場所へ静かに進んでいく。
白い会場に白いドレスが流れるようにして
少しずつ前へ進んでいく光景が綺麗だった。
友達と奥さんが手を組む。
そこからは一連の流れがこなされていって
友達がベールを上げて奥さんとキスをした。
ゴクッと唾を飲む音がする。
この瞬間は人生に訪れる機会の中でも
幸福度に満ちた途轍もない愛だと思う。
僕がスピーチをする順番が近付く。
この空気を壊すこともできなかろうに
右手で握っていた白紙に汗が染みつく。
僕の隣に座っていたもう1人の友達が
「お前、大丈夫か」と声をかけてくる。
「おう。緊張してきた」と足の震えを見せ
友達は静かに笑ってから「頑張れ」と一言。
「ここで友人代表スピーチを~」と聞こえた。
僕の順番が回ってきた。
マイクが置かれている壇上に1歩ずつ近付く。
会場にいた人々と友達と奥さんが、僕を見る。
マイクを1回だけ人差し指で突っつき
音が入るかを確認してから紙を広げる。
何も書かれていない。
「まずは、ご結婚おめでとうございます」
ありきたりな言葉で結婚を祝福してから。
「僕も、奥さんのことが好きでした」
言いかけた言葉を、唾と飲み込んだ。
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『どうか、お幸せで』
「どこから浮気だと思う?」と訊ねたとき
「ギリギリを攻めるべきではないよね」と
答えとも言えない返しをしてくる友達の話。
つい先日、結婚をした。
僕は友人代表スピーチを徹夜して考えた挙句
真っ白な紙を手に持ったまま式場へ向かった。
友達は奥さんのウェディングドレス姿を見て
「可愛いよ」と褒めながら写真を撮っている。
扉近くでその光景を眺めていた僕は
それだけで幸せを分けてもらえそう。
僕に気付いた。
「お!今日はスピーチ頼むな。楽しみだわ」
そう言いながら、扉のほうへ近付いてくる。
「でさ、これ見てほしいんだけど」と言い
スマホの画面を僕にも見せてくれたのだが。
写っているのはウェディングドレス姿の奥さんで
「凄く似合っていますね」と奥さんのほうを見て
友達のスマホからは視線を外して、目を合わせた。
「ありがとうございます」と奥さんは礼をするが
横からは「こいつ照れ屋だからな」と友達が言う。
「うるさいな~」と友達の脇腹を突っついて
「思い出作れよ」と言い残してその場を出た。
今のご時世、結婚式を挙げる人が少なかろうに
結婚式を挙げる友達のことが少しだけ羨ましい。
友達の母親と目が合った。
小学生の頃から面倒を見てくれていたから
なんだか懐かしくて、過去がふと頭を過る。
僕も会場にいる人々と同じように席に座り
式が始まるのを今か今かと待ち望んでいた。
大きな扉が開いて、友達が1人で入ってくる。
緊張した表情をしていて、入学式を思い出す。
それから奥さんが父親と入ってきて
友達の待つ場所へ静かに進んでいく。
白い会場に白いドレスが流れるようにして
少しずつ前へ進んでいく光景が綺麗だった。
友達と奥さんが手を組む。
そこからは一連の流れがこなされていって
友達がベールを上げて奥さんとキスをした。
ゴクッと唾を飲む音がする。
この瞬間は人生に訪れる機会の中でも
幸福度に満ちた途轍もない愛だと思う。
僕がスピーチをする順番が近付く。
この空気を壊すこともできなかろうに
右手で握っていた白紙に汗が染みつく。
僕の隣に座っていたもう1人の友達が
「お前、大丈夫か」と声をかけてくる。
「おう。緊張してきた」と足の震えを見せ
友達は静かに笑ってから「頑張れ」と一言。
「ここで友人代表スピーチを~」と聞こえた。
僕の順番が回ってきた。
マイクが置かれている壇上に1歩ずつ近付く。
会場にいた人々と友達と奥さんが、僕を見る。
マイクを1回だけ人差し指で突っつき
音が入るかを確認してから紙を広げる。
何も書かれていない。
「まずは、ご結婚おめでとうございます」
ありきたりな言葉で結婚を祝福してから。
「僕も、奥さんのことが好きでした」
言いかけた言葉を、唾と飲み込んだ。
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