「ほらよ」
「あ〜ん」
「なんの真似だ」
「食べさせて」
「食べないのなら、下げるぞ」
「すみません、食べます。美味いな〜最高だ〜」
数日間は、特に何もなかった。学校だが授業はなかったので、陽向は快適だった。
外で遊ぶことも、体育館を使うことも自由だ。現実は口煩い教師も、何も言ってこない。
男同士で絡むようになったのは、苦痛だったが。しかしそれ以外は、特に困ったことはなかった。
涼太はご飯を作ることはできないため、全てを陽向に任せていた。今もチャーハンを作っている陽向を横目で見つつ、机に突っ伏していた。
目の前にお皿が置かれたため、涼太は口を大きく開けた。陽向は舌打ちをし、お皿を持とうとした。
涼太は慌てて起き上がり、スプーンで食べ始めた。陽向は呆れたようにため息をついていたが、嬉しそうにしていた。
「お前は、最高の嫁さんになるな〜」
「黙って食べろっ!」
「へーい、美味っ」
「おい、ピーマンを寄せるな。せっかく小さく切ったのに」
「俺、苦いの無理」
「カタコトで言ってもダメだ。食べなさい」
「お母さんかよ」
「てめーみたいな息子はいらん。ほんと、昔から好き嫌いが多いよな」
涼太は、陽向の顔を満面の笑みで見つめた。陽向は一瞬時が止まったようだが、直ぐに耳まで真っ赤に染まった。
涼太は、チャーハンを次々口に運んでいく。しかし陽向は見逃さなかった。
お皿の端に、細切れのピーマンが残されていることに。好き嫌いが多いため、日々試行錯誤を凝らしている。
涼太は犬並みに鼻がいいため、綺麗に取り分けていた。陽向は文句を言いつつも、完食してくれたことが嬉しかった。
満面の笑みを浮かべ、偉そうに腕組みしている。涼太は、デザートのあんみつに手をつけていた。
視界の端に、【ニチャア……】と笑う悪霊の影。壁一面には、【今の絡み、神回】と書かれていた。
陽向は最初こそ、怖がって涼太にしがみついていた。しかしいまは慣れたようで、無視してチャーハンを食べていた。
「また、ミッションかよ」
「まあ、でも今回は楽しそうだぞ」
「てめーは、本当にお気楽だなっ! 夏祭りっ!」
「だろ、楽しそうだな〜美味いものが多いだろうな〜」
「それしかないのか」
「ここにいても、勉強もできないからな……男同士の資料とかは、豊富だが」
「それについては、知らん」
二人がのんびりしていると、急にミッションの紙がどこからともなく現れた。
その内容は、【浴衣を着て、夏祭りで最高の思い出を作ること】だった。
涼太の言葉を聞いて、陽向は怒っていた。しかしミッションの紙を見つめ、大はしゃぎしていた。
涼太はこの異世界に来てから、食べることが生きがいになっていた。勉強しようにも、通常の参考書は置いていない。
誰に聞いても、男同士の本しかなかった。他の生徒たちや先生たちは、口を揃えてそれが参考書だと言っていた。
因数分解の代わりに、受けと攻めの相性について解説が入っている。生々しい表現がされており、静かに本を閉じた。
もう諦めることにして、陽向の手料理を楽しみにしていた。陽向もまた、デザートなどを手作りしていた。
二人はここに来て、確実に数キロは太っていた。それでも、お互いの存在が何よりも心強かった。
「これ、どう結ぶんだ」
「俺がやるよ」
「すげーな」
「まあ、母さんは着付けの先生だからな」
「器用だよな。息子は似てないけど」
「そういうこと言うんだ〜じゃあ、自分でやって」
「さーせんした。よろしく頼んます」
「……人に頼む態度じゃないが、まあいいや」
「アザース」
二人が部屋に戻ると、ベッドの上に浴衣が置かれていた。浴衣の上には、【これを着て、射的で景品を取れ】と書かれてあった。
【花火の最後の大玉が上がる前に、本気を見せる。さもなくば、この祭りの生贄として永遠に閉じ込められる】と追記してあった。
二人は顔を見合わせ、静かに頷いた。涼太は真剣な眼差しで、今後のことを思案していた。
陽向をこんな得体の知れない奴らの生贄なんかにさせない、という強い意思を感じさせた。
対して陽向は、それよりも祭りの方が楽しみのようだった。はしゃいでいる陽向を見つめ、涼太は優しい笑みを浮かべていた。
陽向は着方が分からないため、涼太が着せた。涼太は器用に、光の速さで帯を締めていた。
陽向は朱色の炎の模様がついた浴衣で、白と黒の帯だった。涼太は水色のチェックの浴衣で、帯は白色だった。
料理や家事は陽向の担当で、細かいことや頭を使うことは涼太の担当である。
陽向は浴衣姿の涼太に見惚れ、頬を着物よりも赤く染めていた。涼太も頬を染め、陽向の左耳のホクロを凝視していた。
扉の隙間から、佐伯がその様子を凝視している。不敵な笑みを浮かべ、食い入るように見つめていた。
「手繋ぐぞ」
「いや、いい」
「お前は人混みだと、絶対に逸れるだろ。心配なんだよ」
「……まあ、お前がどうしてもって言うなら……繋いであげないこともない」
「あーはいはい」
「その一回、文句言うの必要ないでしょ。スパッと繋ぐっ!」
二人が寮を出ると、校庭がお祭り会場になっていた。焼きそばやたい焼き、金魚すくいや射的の屋台が見えた。
カップルたちが、各々好きなように行動している。しかし誰一人として笑顔ではなく、無機質な表情を浮かべていた。
黒い靄がかかっていた夜空は、満点の星空になっていた。数多の星が流れ、幻想的な雰囲気になっていた。
陽向がはしゃいでるため、涼太は手を差し出した。保護者的な意味だったのが、陽向には不満のようだった。
涼太は本気で心配しており、眉毛を八の字に曲げていた。その様子を見つめ、陽向は頬を染めて了承していた。
そこに佐伯がやってきて、無理矢理に手を繋がれた。陽向は複雑な表情を浮かべ、涼太は頬を掻いて少しだけ恥ずかしそうにしていた。
「昔はよく、繋いだよな〜お前、手が小さくなったんじゃないか。あっ、俺が大きくなったのか」
「ああ? なんだよ、急に」
「お前って本当に、手のかかる弟みたいだよな」
二人は手を繋ぎ、祭りの喧騒の中に入った。そこで涼太は、小さい頃に行った夏祭りを思い出した。
「あ〜ん」
「なんの真似だ」
「食べさせて」
「食べないのなら、下げるぞ」
「すみません、食べます。美味いな〜最高だ〜」
数日間は、特に何もなかった。学校だが授業はなかったので、陽向は快適だった。
外で遊ぶことも、体育館を使うことも自由だ。現実は口煩い教師も、何も言ってこない。
男同士で絡むようになったのは、苦痛だったが。しかしそれ以外は、特に困ったことはなかった。
涼太はご飯を作ることはできないため、全てを陽向に任せていた。今もチャーハンを作っている陽向を横目で見つつ、机に突っ伏していた。
目の前にお皿が置かれたため、涼太は口を大きく開けた。陽向は舌打ちをし、お皿を持とうとした。
涼太は慌てて起き上がり、スプーンで食べ始めた。陽向は呆れたようにため息をついていたが、嬉しそうにしていた。
「お前は、最高の嫁さんになるな〜」
「黙って食べろっ!」
「へーい、美味っ」
「おい、ピーマンを寄せるな。せっかく小さく切ったのに」
「俺、苦いの無理」
「カタコトで言ってもダメだ。食べなさい」
「お母さんかよ」
「てめーみたいな息子はいらん。ほんと、昔から好き嫌いが多いよな」
涼太は、陽向の顔を満面の笑みで見つめた。陽向は一瞬時が止まったようだが、直ぐに耳まで真っ赤に染まった。
涼太は、チャーハンを次々口に運んでいく。しかし陽向は見逃さなかった。
お皿の端に、細切れのピーマンが残されていることに。好き嫌いが多いため、日々試行錯誤を凝らしている。
涼太は犬並みに鼻がいいため、綺麗に取り分けていた。陽向は文句を言いつつも、完食してくれたことが嬉しかった。
満面の笑みを浮かべ、偉そうに腕組みしている。涼太は、デザートのあんみつに手をつけていた。
視界の端に、【ニチャア……】と笑う悪霊の影。壁一面には、【今の絡み、神回】と書かれていた。
陽向は最初こそ、怖がって涼太にしがみついていた。しかしいまは慣れたようで、無視してチャーハンを食べていた。
「また、ミッションかよ」
「まあ、でも今回は楽しそうだぞ」
「てめーは、本当にお気楽だなっ! 夏祭りっ!」
「だろ、楽しそうだな〜美味いものが多いだろうな〜」
「それしかないのか」
「ここにいても、勉強もできないからな……男同士の資料とかは、豊富だが」
「それについては、知らん」
二人がのんびりしていると、急にミッションの紙がどこからともなく現れた。
その内容は、【浴衣を着て、夏祭りで最高の思い出を作ること】だった。
涼太の言葉を聞いて、陽向は怒っていた。しかしミッションの紙を見つめ、大はしゃぎしていた。
涼太はこの異世界に来てから、食べることが生きがいになっていた。勉強しようにも、通常の参考書は置いていない。
誰に聞いても、男同士の本しかなかった。他の生徒たちや先生たちは、口を揃えてそれが参考書だと言っていた。
因数分解の代わりに、受けと攻めの相性について解説が入っている。生々しい表現がされており、静かに本を閉じた。
もう諦めることにして、陽向の手料理を楽しみにしていた。陽向もまた、デザートなどを手作りしていた。
二人はここに来て、確実に数キロは太っていた。それでも、お互いの存在が何よりも心強かった。
「これ、どう結ぶんだ」
「俺がやるよ」
「すげーな」
「まあ、母さんは着付けの先生だからな」
「器用だよな。息子は似てないけど」
「そういうこと言うんだ〜じゃあ、自分でやって」
「さーせんした。よろしく頼んます」
「……人に頼む態度じゃないが、まあいいや」
「アザース」
二人が部屋に戻ると、ベッドの上に浴衣が置かれていた。浴衣の上には、【これを着て、射的で景品を取れ】と書かれてあった。
【花火の最後の大玉が上がる前に、本気を見せる。さもなくば、この祭りの生贄として永遠に閉じ込められる】と追記してあった。
二人は顔を見合わせ、静かに頷いた。涼太は真剣な眼差しで、今後のことを思案していた。
陽向をこんな得体の知れない奴らの生贄なんかにさせない、という強い意思を感じさせた。
対して陽向は、それよりも祭りの方が楽しみのようだった。はしゃいでいる陽向を見つめ、涼太は優しい笑みを浮かべていた。
陽向は着方が分からないため、涼太が着せた。涼太は器用に、光の速さで帯を締めていた。
陽向は朱色の炎の模様がついた浴衣で、白と黒の帯だった。涼太は水色のチェックの浴衣で、帯は白色だった。
料理や家事は陽向の担当で、細かいことや頭を使うことは涼太の担当である。
陽向は浴衣姿の涼太に見惚れ、頬を着物よりも赤く染めていた。涼太も頬を染め、陽向の左耳のホクロを凝視していた。
扉の隙間から、佐伯がその様子を凝視している。不敵な笑みを浮かべ、食い入るように見つめていた。
「手繋ぐぞ」
「いや、いい」
「お前は人混みだと、絶対に逸れるだろ。心配なんだよ」
「……まあ、お前がどうしてもって言うなら……繋いであげないこともない」
「あーはいはい」
「その一回、文句言うの必要ないでしょ。スパッと繋ぐっ!」
二人が寮を出ると、校庭がお祭り会場になっていた。焼きそばやたい焼き、金魚すくいや射的の屋台が見えた。
カップルたちが、各々好きなように行動している。しかし誰一人として笑顔ではなく、無機質な表情を浮かべていた。
黒い靄がかかっていた夜空は、満点の星空になっていた。数多の星が流れ、幻想的な雰囲気になっていた。
陽向がはしゃいでるため、涼太は手を差し出した。保護者的な意味だったのが、陽向には不満のようだった。
涼太は本気で心配しており、眉毛を八の字に曲げていた。その様子を見つめ、陽向は頬を染めて了承していた。
そこに佐伯がやってきて、無理矢理に手を繋がれた。陽向は複雑な表情を浮かべ、涼太は頬を掻いて少しだけ恥ずかしそうにしていた。
「昔はよく、繋いだよな〜お前、手が小さくなったんじゃないか。あっ、俺が大きくなったのか」
「ああ? なんだよ、急に」
「お前って本当に、手のかかる弟みたいだよな」
二人は手を繋ぎ、祭りの喧騒の中に入った。そこで涼太は、小さい頃に行った夏祭りを思い出した。

