ラブ・ミッション・デッドライン〜祠を壊した俺たちが、男同士で愛を誓うまで〜

 数日後、三人は祠の前にやってきた。祠を直すことを決め、道具を持ってきた。
 佐伯は文句を言っていたが、半ば強制的に連れて来た。涼太は設計図を書くことはできるが、不器用のため無理だ。

 陽向は作ることはできるが、また壊しかねない。佐伯は安全のために、拉致されたようだ。
 アニメが見たいと文句を言っていたが、当事者のため有無を言わせなかった。

 無事に修理が終わり、三人は満足そうに微笑んでいる。陽向はしゃがみこみ、悪霊に声をかける。
 涼太はその隣にしゃがみ、彼の肩を抱いた。すると何処からともなく、悪霊の声が聞こえたような気がした。

 二人は怯えているが、佐伯はメガネを上げ何度も頷いていた。あれから佐伯と悪霊は、マブダチと化しているのは二人に黙っている。
 そのほうが、何かと便利なのである。ニヤニヤしている佐伯を見て、二人はため息をついた。

「なあ、今日もお前の部屋行っていいか」
「おう、いいぞ。つーか、一々許可取る必要ないだろ」
「明日は二人っきりだろ……付き合ってんだからさ、今までとは違うだろ」
「おまっ! 何言って! まだ早いだろっ! 心の準備とかっ!」
「えー? 何が〜俺はただ〜ゲームしようって言ってんだけど〜何考えてるのかな〜陽向のエッチ」
「くそ……腹立つ」
「おい、僕の前で三次元のBLを展開するなと言ってるだろ! 目が、俺の純粋な二次元専用の目が潰れる! ……でも、まあ。……配置としては、悪くないけどな……」

 祠の修理が終わり、三人は帰っていた。そこでいつもの通りに、涼太が陽向の肩に腕を回した。
 すると陽向は首を傾げ、不思議そうにしている。両手をポケットに入れ、欠伸をしている。

 ――こいつ! 何言ってやがる! くそっ! 佐伯のやつ、完全に悪霊と同じ顔してやがる!

 涼太はそんな彼の耳元で、甘い声で囁いた。一気に全身が沸騰する感覚に陥り、大声で怒鳴りつける。
 涼太はニヤニヤしながら、ゲームの話だと伝える。陽向の顔がさらに真っ赤になり、舌打ちをしているが本気では怒れないようだ。

 佐伯はその光景を見つめ、耐えきれなくなったようだ。大声で怒鳴り散らし、喚いていた。
 その割りには、嬉しそうにメガネの奥が光っている。二人は佐伯のことは眼中にないため、イチャついていた。

「おい涼太! あの時言ったこと、忘れてねーだろうな!」
「何のこと? もう一回言ってくれないと分かんないな〜」
「あいつら、夏休みの間に何があったんだよ……」
「BLは最高だ。生きていてよかった」

 夏休みが開け、二人は一緒に登校していた。陽向は部活があるため、体育着姿である。
 涼太は手伝いのため、制服姿である。いつものように戯れあっているが、今まではとは違った。

 付き合うようになって、数週間が経過した。今まで以上に、二人はツーカーの仲になった。
 陽向の姉に、付き合っていることがバレた。二人は慌てたが、中学の時からだと思われていたらしい。

 顔を真っ赤にしたが、嬉しかった。そのこともあり、なんか妙な空気感が漂っていた。
 陽向は耳を真っ赤にしながらも、涼太に詰め寄った。涼太はニヤニヤしながら、いたずらっ子の顔をして揶揄っている。

 周囲の生徒たちからは、遠巻きに見守られていた。佐伯は委員長のため、早く登校していた。
 眠そうに欠伸をしていたが、光の早さで二人の動画を撮っている。慣れてしまったのか、完全に無視だった。

 周りからは引かれているが、そんなことは瑣末な問題である。引かれることよりも、BLを見られないほうが苦痛だからだ。
 佐伯の目には、光が宿っていない。まるで、あの悪霊に取り憑かれている時のようだった。

「……陽向。あいつの言ったことはムカつくけど、ひとつだけ正解があったな」
「あ? なんだよ」
「お前、やっぱり……可愛いわ」
「……殴るぞ!!」
「なあ、保育園の時も俺の服の裾掴んでたけど。あの異界で俺のシャツ握り締めてた時の顔、あの頃と全く一緒だったよ」
「何十年前の話持ち出してんだ!」
「俺以外の前で、あんま可愛い顔見せんな」
「……っつ! ばかやろ……」

 他の生徒もいるなか、二人の世界に浸っていた。涼太は陽向の腰を抱き寄せ、神妙な面持ちで告げる。
 陽向は何事かと、涼太の顔を見上げる。すると耳元で、甘くて熱い吐息混じりに呟いた。

 陽向の体は今まで以上に真っ赤に染まり、怒っていた。しかし覇気はなく、誰が見ても可愛い存在であった。
 さらに追い打ちをかけるように、異界での話を振ってくる。羞恥を思い出し、居た堪れなくなった。

 涼太は真顔になり、陽向の耳元で低い声で囁いた。陽向は顔を真っ赤にして怒っているが、嬉しそうに微笑んでいた。

「やめろっつってんだろ! 公共の場だぞ!」
「へぇ、じゃあ二人の場所ならいいんだ。……あの異界みたいにさ」
「全く、チョーシ狂うぜ」

 陽向は涼太の体を押し退けたが、本気ではなかった。公共の場だと告げてはいるが、この二人は他の人は眼中になかった。
 お互いの存在以外は、興味がなかった。吐き捨てた陽向の耳は、今まで見た何よりも赤かった。

 それを見下ろす涼太の口角は、今日も意地悪かった。そして深く、幸せそうに吊り上がっている。
 涼太は陽向の左耳のホクロにキスをしたが、拒否っていなかった。今までの長い片思いの分も二人だけの思い出をこれからも作っていくのだろう。

「はー、食った! 食った! 腹一杯っ」
「そりゃあ、お雑煮軽く五人前は平らげていたからな」
「いつものことだろ」
「ほんと、大飯食らいだよな」
「いやあ〜照れるな〜」
「褒めてはいねーよ」

 月日が流れ、お正月になった。涼太の誕生日のため、毎年盛大に祝われる。
 実のところは、男性陣たちのお酒の時間。女性陣たちの、お話の時間である。

 唯一の未成年である二人は、暇を持て余していた。涼太はゲームをしたり、テレビを見たりしていた。
 陽向は飽きもせずに食べては、寝そべっている。お腹が空けば、お雑煮を食べている。

 夕方になり、陽向もこれ以上は食べられないらしい。二人は二階の涼太の部屋に、やってきた。
 陽向は後頭部を掻き、照れ臭そうに頬を赤らめていた。涼太は呆れながらも、嬉しそうにツッコんでいた。

「なあ、寒い」
「ああ、そうだな〜お前は、温いな」
「みかん、食べるか」
「あ〜ん。美味っ、お前が食べさせてくれるからだな」
「バカじゃねーか……誰が食べさせたって、同じだろうが」
「うふふっ」
「きもっ……ったく」

 通年ならば、二人でゲームをしたり漫画を読んだりする。しかし今年は、二人の関係性が変わった。
 当たり前のように、くっついて過ごすようになった。コタツに入るのも前までは、対角線上だった。
 しかし今は、陽向は寒がりのため涼太が後ろから抱きしめる形になった。