「で? すき焼きがどうとか、なんだったんだ」
「す……愛の言葉の囁き方の正解が、分からなくて」
「……お前って、頭いいのに……ポンコツだよな」
「解釈違いを、読めないやつに言われたくない」
「うっせ……ぷっ」
「あはは!」
二人は少し距離を取ったが、陽向は涼太の服の裾を無意識に掴んでいる。陽向は涼太に、気になったことを聞いてみる。
彼は顔を真っ赤にしながら、真実を口にした。それでも、好きという言葉は告げられない。
陽向はその言葉に、目を点にした。直ぐに顔を真っ赤に染めて、悪態をついた。
涼太はその発言を聞き、ニヤニヤしている。陽向の肩に手を回し、揶揄い始めた。
陽向は怒って、頬を膨らました。しかし直ぐに爆笑をすると、釣られて涼太も大声で笑ってしまった。
壁には、【おめでとう】や【ついにゴールインか!】と書かれていた。しかし二人は、お互いのことしか興味がないため気がつかない。
「ゴホンッ……俺はお前が、す」
「待て、お前! 俺には、陽向っていう婆ちゃんがつけてくれた名前があんだよ! 名前で呼べ!」
「……婆ちゃん、面白い人だったよな」
「話を逸らすな! それに、今も元気だ! この前も! ダンスクラブで、はしゃいでいたし!」
「お前の婆ちゃん、俺がピアス開けた時も『あら涼太ちゃん、イケメンに磨きがかかったわねぇ!』って笑ってたよな」
二人は気を取り直し、何故か正座になった。涼太は深呼吸をし、咳払いをした。
今度こそ陽向の顔を見つめ、好きと告げようとした。しかし思いもよらぬ形で、止められてしまった。
涼太のなけなしの勇気は、完全に無くなってしまう。泣きそうになる気持ちをぐっと抑えて、遠い目をした。
陽向は元気よくツッコんでくれたおかげで、重たい空気にならなかった。
涼太は陽向の婆ちゃんを思い出し、モノマネを披露。似ていないのか、陽向は冷めた眼差しを向けている。
「……じゃなくて、話を逸らすな!」
「……分かったよ……ひ……陽向」
「……変なやつ」
陽向は涼太の顔を見つめ、頬を膨らましている。その様子を見つめ、顔を真っ赤に染めていた。
陽向の憤慨する気持ちも分からないではない。しかし名前を呼んで告白なんて、今の涼太には出来なかった。
今まで何百回も呼んできた名前なのに、全身が熱くて口にできない。お前と呼んで距離を置かなければ、衝動を抑え込めそうにない。
陽向の名前をゆっくりと呼ぶと、涼太は顔を真っ赤にして俯いた。その様子を見つめ、怪訝そうに悪態をついていた。
だけどその顔は、前にも増して嬉しそうだった。口元が綻び、今にも踊り出しそうな雰囲気だった。
「てか、陽向も俺の事お前って呼ぶこと多いぞ」
「確かに」
「お前だって、お前って呼ぶのに……俺に言うのは、おかしいだろ」
「……お前は、お前。俺は、俺だ」
「字面だと分かりづらいな」
「はあ? 何言ってんだ」
「メタ発言は、現実だと……痛いな……」
妙な空気が部屋中に、流れてしまう。そんな中、静寂を切り裂いたのは涼太だった。
その発言に、陽向は妙に納得してしまった。涼太は後頭部を掻きながら、陽向に正論をぶつける。
陽向は間違ってはいないが、分かりづらいことを言い始める。そのため涼太は、ボソッと呟く。
陽向は眉間に皺を寄せ、涼太を睨む。目が悪いのもあるが、それ以上に理解できなかった。
するとどこからともなく、佐伯が現れた。無機質な表情を浮かべ、当たり前のように会話に加わった。
二人は固まってしまい、顔を見合わせた。その発言以上に、そこにいる恐怖の方が勝ってしまった。
当たり前のように、近くの椅子に座った。メガネの奥には、不気味な笑みが隠れていた。
「陽向……っ」
「……な、なんだよ」
二人はお互いの鼓動が聞こえる距離で、涼太は陽向の名前を呼んだ。顔から火が出そうなぐらいになっており、落ち着きがない。
陽向はその様子に釣られ、顔を真っ赤にして視線を泳がしている。しかし空気は甘く重たく、完全に二人だけの世界。
涼太は何かを告げようとし口を開くが、何も言わずに黙ってしまう。陽向は涼太の服を掴み、手には大量の汗を握っている。
陽向は涼太の顔を見つめては、顔を真っ赤にしている。このやりとりを始めてから既に、一時間は経過した。
――なんで、俺は告白も……キ、キスも簡単にできると思ってんだよ! そんなの簡単にできるなら、とっくにやってるわ!
陽向は完全にパニックになっており、頭から湯気が出そうになっている。
「……ねえ、早くしなよ。放送枠が決まってんだから。これ以上尺を伸ばすと、エンディングまで入り切らなくなるよ」
「……は? 放送、枠……?」
「……シャクってなんだよ。おい、佐伯、お前……本当に大丈夫か?」
「悪霊は、君たちの無言の葛藤より、具体的な接触を求めてるんだ。ほら、残り30秒。巻いていこう」
二人の妙な空気を察してか、佐伯が口を開いた。二人はお互いのことしか眼中になく、彼のことを完全に忘れていた。
この一時間ずっと、二人のことを凝視していた。無機質な笑みを浮かべ、真顔で見つめている。
黙っていたが、ついに耐えきれなくなったらしい。当たり前のように、言い放った。
涼太の鋭い切れ長の瞳も、陽向のくりっとした猫目も、丸く見開かれて点になる。
二人の頭上に、物理的に? が浮いて見えそうなほどの沈黙。何故まだいるのかという疑問さえも、めんどくさくなった。
涼太は内心、パニックに陥っていた。佐伯が何かに取り憑かれている。自分たちの悩みは、番組か何かなのか。
陽向は顔を真っ赤にして、涼太を見つめている。涼太もその視線に気がつき、二人は黙ってお互いの顔を見つめた。
「自分たちは誰かに、観測されているのか?」
「何言ってんだ」
「……よく分かんねーけど、やるしかないのか」
「はあ……とっととやれよ」
「……す、好きだっ!」
「……っつ!」
涼太は真面目な顔をして、真に迫った発言をした。しかし陽向は鼻で笑い、しかめ面をした。
涼太は陽向の言葉を無視して、独り言を呟いている。陽向はその様子を見つめ、めんどくさそうに告げる。
涼太は深呼吸をし、決意の表情になった。陽向が息を飲むと、涼太は少し吃ったが口にすることができた。
――ミッションだもんな……。本気じゃない、胸が痛い。
陽向は顔だけでなく、全身を真っ赤に染めた。しかしいつもとは違う涼太の様子には、気がつかない。
甘い視線や、震える声や手。陽向だけを見つめ、他は何も目に入らない。
「す……愛の言葉の囁き方の正解が、分からなくて」
「……お前って、頭いいのに……ポンコツだよな」
「解釈違いを、読めないやつに言われたくない」
「うっせ……ぷっ」
「あはは!」
二人は少し距離を取ったが、陽向は涼太の服の裾を無意識に掴んでいる。陽向は涼太に、気になったことを聞いてみる。
彼は顔を真っ赤にしながら、真実を口にした。それでも、好きという言葉は告げられない。
陽向はその言葉に、目を点にした。直ぐに顔を真っ赤に染めて、悪態をついた。
涼太はその発言を聞き、ニヤニヤしている。陽向の肩に手を回し、揶揄い始めた。
陽向は怒って、頬を膨らました。しかし直ぐに爆笑をすると、釣られて涼太も大声で笑ってしまった。
壁には、【おめでとう】や【ついにゴールインか!】と書かれていた。しかし二人は、お互いのことしか興味がないため気がつかない。
「ゴホンッ……俺はお前が、す」
「待て、お前! 俺には、陽向っていう婆ちゃんがつけてくれた名前があんだよ! 名前で呼べ!」
「……婆ちゃん、面白い人だったよな」
「話を逸らすな! それに、今も元気だ! この前も! ダンスクラブで、はしゃいでいたし!」
「お前の婆ちゃん、俺がピアス開けた時も『あら涼太ちゃん、イケメンに磨きがかかったわねぇ!』って笑ってたよな」
二人は気を取り直し、何故か正座になった。涼太は深呼吸をし、咳払いをした。
今度こそ陽向の顔を見つめ、好きと告げようとした。しかし思いもよらぬ形で、止められてしまった。
涼太のなけなしの勇気は、完全に無くなってしまう。泣きそうになる気持ちをぐっと抑えて、遠い目をした。
陽向は元気よくツッコんでくれたおかげで、重たい空気にならなかった。
涼太は陽向の婆ちゃんを思い出し、モノマネを披露。似ていないのか、陽向は冷めた眼差しを向けている。
「……じゃなくて、話を逸らすな!」
「……分かったよ……ひ……陽向」
「……変なやつ」
陽向は涼太の顔を見つめ、頬を膨らましている。その様子を見つめ、顔を真っ赤に染めていた。
陽向の憤慨する気持ちも分からないではない。しかし名前を呼んで告白なんて、今の涼太には出来なかった。
今まで何百回も呼んできた名前なのに、全身が熱くて口にできない。お前と呼んで距離を置かなければ、衝動を抑え込めそうにない。
陽向の名前をゆっくりと呼ぶと、涼太は顔を真っ赤にして俯いた。その様子を見つめ、怪訝そうに悪態をついていた。
だけどその顔は、前にも増して嬉しそうだった。口元が綻び、今にも踊り出しそうな雰囲気だった。
「てか、陽向も俺の事お前って呼ぶこと多いぞ」
「確かに」
「お前だって、お前って呼ぶのに……俺に言うのは、おかしいだろ」
「……お前は、お前。俺は、俺だ」
「字面だと分かりづらいな」
「はあ? 何言ってんだ」
「メタ発言は、現実だと……痛いな……」
妙な空気が部屋中に、流れてしまう。そんな中、静寂を切り裂いたのは涼太だった。
その発言に、陽向は妙に納得してしまった。涼太は後頭部を掻きながら、陽向に正論をぶつける。
陽向は間違ってはいないが、分かりづらいことを言い始める。そのため涼太は、ボソッと呟く。
陽向は眉間に皺を寄せ、涼太を睨む。目が悪いのもあるが、それ以上に理解できなかった。
するとどこからともなく、佐伯が現れた。無機質な表情を浮かべ、当たり前のように会話に加わった。
二人は固まってしまい、顔を見合わせた。その発言以上に、そこにいる恐怖の方が勝ってしまった。
当たり前のように、近くの椅子に座った。メガネの奥には、不気味な笑みが隠れていた。
「陽向……っ」
「……な、なんだよ」
二人はお互いの鼓動が聞こえる距離で、涼太は陽向の名前を呼んだ。顔から火が出そうなぐらいになっており、落ち着きがない。
陽向はその様子に釣られ、顔を真っ赤にして視線を泳がしている。しかし空気は甘く重たく、完全に二人だけの世界。
涼太は何かを告げようとし口を開くが、何も言わずに黙ってしまう。陽向は涼太の服を掴み、手には大量の汗を握っている。
陽向は涼太の顔を見つめては、顔を真っ赤にしている。このやりとりを始めてから既に、一時間は経過した。
――なんで、俺は告白も……キ、キスも簡単にできると思ってんだよ! そんなの簡単にできるなら、とっくにやってるわ!
陽向は完全にパニックになっており、頭から湯気が出そうになっている。
「……ねえ、早くしなよ。放送枠が決まってんだから。これ以上尺を伸ばすと、エンディングまで入り切らなくなるよ」
「……は? 放送、枠……?」
「……シャクってなんだよ。おい、佐伯、お前……本当に大丈夫か?」
「悪霊は、君たちの無言の葛藤より、具体的な接触を求めてるんだ。ほら、残り30秒。巻いていこう」
二人の妙な空気を察してか、佐伯が口を開いた。二人はお互いのことしか眼中になく、彼のことを完全に忘れていた。
この一時間ずっと、二人のことを凝視していた。無機質な笑みを浮かべ、真顔で見つめている。
黙っていたが、ついに耐えきれなくなったらしい。当たり前のように、言い放った。
涼太の鋭い切れ長の瞳も、陽向のくりっとした猫目も、丸く見開かれて点になる。
二人の頭上に、物理的に? が浮いて見えそうなほどの沈黙。何故まだいるのかという疑問さえも、めんどくさくなった。
涼太は内心、パニックに陥っていた。佐伯が何かに取り憑かれている。自分たちの悩みは、番組か何かなのか。
陽向は顔を真っ赤にして、涼太を見つめている。涼太もその視線に気がつき、二人は黙ってお互いの顔を見つめた。
「自分たちは誰かに、観測されているのか?」
「何言ってんだ」
「……よく分かんねーけど、やるしかないのか」
「はあ……とっととやれよ」
「……す、好きだっ!」
「……っつ!」
涼太は真面目な顔をして、真に迫った発言をした。しかし陽向は鼻で笑い、しかめ面をした。
涼太は陽向の言葉を無視して、独り言を呟いている。陽向はその様子を見つめ、めんどくさそうに告げる。
涼太は深呼吸をし、決意の表情になった。陽向が息を飲むと、涼太は少し吃ったが口にすることができた。
――ミッションだもんな……。本気じゃない、胸が痛い。
陽向は顔だけでなく、全身を真っ赤に染めた。しかしいつもとは違う涼太の様子には、気がつかない。
甘い視線や、震える声や手。陽向だけを見つめ、他は何も目に入らない。

