陽向は、何も言わずに行ってしまった涼太の背中を眺めていた。悲しそうに俯き、両手で服を掴んでいた。
【……っ!】や【尊い……】などの、地を這うような低い吐息。スマホのシャッター音のような乾いた音がキッチンに響いた。
陽向には、そんなことはどうでもよかった。涼太の考えていることが分からずに、胸の奥が痛いからだ。
お揃いのネックレスを握り締め、必死に涙を堪えていた。唇を噛み締め、静かに涙を拭いた。
「はあ……陽向、傷ついていたよな……何やってんだよ」
一方その頃、涼太はベッドに寝転んでいた。自己嫌悪に陥り、顔を青白くさせていた。
陽向を見るのが怖い。名前を呼ぶのが怖い。これこそが悪霊の呪いか?
涼太には、どうすればいいのか分からない。このままの関係性は、絶対にダメなことは分かっていた。
この異世界で、陽向は怯えている。普段は強がっていても、本当は怖がりだ。
一人になんて、絶対にできない。それなのに、自分だけが苦しんでいると思っている。
この状況はマズイと思い、涼太は起き上がった。するとそこに、気まずそうに陽向が入ってきた。
「陽向は、男同士ってどう思う?」
「別に? お互いがいいんなら、他人がどうこう言えねぇーだろ」
「ふぅ〜ん。じゃあ、お互いがいいなら付き合うんだ」
「まぁ……多分な」
「そっか、な〜んだ! 悩んで損したっ」
「……んだよ……全く、チョーシ狂うぜ」
陽向は後頭部を掻きながら、涼太に近づいた。目元が赤くなっていることに、涼太は気がついた。
胸の奥がチクリと痛み、唇を噛み締めた。いつもの笑顔になって、ヘラヘラと陽向に質問した。
いつもと変わらない様子だが、少しだけ声が上擦っていた。陽向に見えないように、手を握り締めた。
――何か隠してやがる。何年一緒にいると思ってんだ。お前の癖ぐらい、分かってる。
涼太が何か隠していることは、丸分かりだった。しかし自分にも言えないことがあるため、深掘りするのは辞めた。
陽向の思いとは別に、涼太は清々しい笑みを浮かべた。涼太の優しい笑顔を見て、呼吸が止まったような感覚に陥る。
悪態をつきながらも、頬を染めていた。涼太は陽向の横顔を見つめ、嬉しそうに微笑んでいた。
「またミッションかよ」
「……マジか」
「おい黙ってねーで、何か言えよ。見せろ! はあ? あー、なるほどな」
「……お前、経験あるのか」
「あるわけないだろっ!」
「にしては、落ち着いてんな」
「何イラついてんだよ」
「……別に」
涼太が起き上がると、机の上にミッションの紙を見つけた。内容を読んでいると、いつの間にか後ろに陽向が立っていた。
めんどくさそうに、欠伸をしていた。涼太が固まっていたため、陽向は痺れを切らし内容を読んだ。
そこには、【愛の言葉を囁きながら、ディープキス】と書いてあった。
涼太は顔を真っ赤にし、右手で口元を隠していた。陽向はミッションのため、深く考えずに発言をした。
涼太はその様子を見つめ、眉間に皺を寄せた。左手の拳を握り締めながら、真顔で陽向に質問する。
彼は顔を真っ赤にし、憤慨した。涼太は完全に嫌味で返し、陽向は首を傾げていた。
涼太がボソッと呟いたが、見たこともないぐらいに怒っていた。陽向はバツが悪そうに、後頭部を掻いていた。
「ふう……す……すき焼きって、美味いよな」
「だな〜さっき食べたばっかなのに、もう腹減ってんのか。つーか、今関係ないだろ」
「……す……炭火焼きのハンバーグが食べたいな」
「はあ? この世界で調達できんのか? って、今はそれどころじゃないだろ」
涼太は機嫌悪そうに、ベッドに座り足を組んだ。陽向は何も言わずに、隣に座った。
――こいつ、どうして……何も言わねーんだ。俺、何かしたのか。
陽向は頻りに涼太の顔色を伺い、声をかけようとした。しかし涼太が何に怒っているのか、皆目見当がつかない。
そのため両手の指を合わせて、落ち着かない様子だった。涼太は視界の端でそれを見つめ、顔を真っ赤にしている。
陽向に怒っているというよりかは、恥ずかしいのである。キスの経験どころか、告白もしたことがない。
深呼吸をし、意を決して口を開いた。しかし好きということが言えずに、はぐらかしてしまう。
陽向はすき焼きと聞いて、涎を垂らしていた。直ぐに我に返り、本題に戻そうとした。
涼太はもう一度、今度は陽向の顔を見つめる。口元を見つめ、少しささくれた唇が目に入ってきた。
生唾を飲み込み、深呼吸をした。直前になって怖気ついてしまい、またもや違うことを告げてしまう。
意気地なしと自分を責め立て、陽向から目を逸らした。瞳に少しだけ、涙が溢れていた。
「やっぱ、何かあったのか? 具合でも悪いのか」
「来るなっ!」
「……俺のこと、やっぱ嫌いなのか」
「ちがっ」
「それとも、弟相手じゃ……無理だよな」
陽向は涼太の様子が少しおかしいため、顔を近づけた。おでことおでこをくっつけようとしたが、涼太は拒否してしまう。
顔を真っ赤にして、陽向の肩を押しのけた。俯いて体を震わせ、全身が沸騰するような感覚に陥っていた。
陽向はその様子を見つめ、落ち込んでいた。涼太に嫌われたと、涙目になっていた。
陽向はそこで、涼太がキスを拒んでいると感じた。陽向は彼の涙を見て、顔を真っ赤にして彼の顔を見られない。
陽向は大粒の涙を流して、俯いてしまう。涼太は右往左往して、慌てふためいていた。
「うわっ! なんだっ! あれっ!」
「おいおいっ……シャレになんねーぞ」
「解く……あれ、なんて読むんだ?」
「……解釈違いだろ……漢字ぐらい読もうな……ったく、高校生になってもなって! この子はっ!」
「どこから、ツッコむべきか」
陽向が顔を上げると、壁一面に血文字が書き殴られていた。【解釈違い】や【逆カプ不可】や【地雷】と書かれていた。
涼太は咄嗟に陽向を守るために、彼を抱きしめた。陽向は意味が分からないが、涼太に躊躇いもなく抱きついた。
陽向は涼太の胸に抱きつき、心臓の鼓動を聞いた。速くて、妙な気分になってしまう。
――くそっ……こいつは俺と、キスしたくないのに……涼太の唇、綺麗だな。
陽向は首を横に降り、壁の血文字を読んだ。しかし読み方が分からずに、涼太にバカにされてしまう。
涼太も面白くなったのか、妙なノリを始めてしまう。陽向は呆れながらも、涼太が笑っているため嬉しくなった。
二人の様子はいつも通りになり、微笑み合っていた。血文字の文字が、【解釈一致】や【涼陽《りょうよう》最高】や【尊い】に変わっていた。
【……っ!】や【尊い……】などの、地を這うような低い吐息。スマホのシャッター音のような乾いた音がキッチンに響いた。
陽向には、そんなことはどうでもよかった。涼太の考えていることが分からずに、胸の奥が痛いからだ。
お揃いのネックレスを握り締め、必死に涙を堪えていた。唇を噛み締め、静かに涙を拭いた。
「はあ……陽向、傷ついていたよな……何やってんだよ」
一方その頃、涼太はベッドに寝転んでいた。自己嫌悪に陥り、顔を青白くさせていた。
陽向を見るのが怖い。名前を呼ぶのが怖い。これこそが悪霊の呪いか?
涼太には、どうすればいいのか分からない。このままの関係性は、絶対にダメなことは分かっていた。
この異世界で、陽向は怯えている。普段は強がっていても、本当は怖がりだ。
一人になんて、絶対にできない。それなのに、自分だけが苦しんでいると思っている。
この状況はマズイと思い、涼太は起き上がった。するとそこに、気まずそうに陽向が入ってきた。
「陽向は、男同士ってどう思う?」
「別に? お互いがいいんなら、他人がどうこう言えねぇーだろ」
「ふぅ〜ん。じゃあ、お互いがいいなら付き合うんだ」
「まぁ……多分な」
「そっか、な〜んだ! 悩んで損したっ」
「……んだよ……全く、チョーシ狂うぜ」
陽向は後頭部を掻きながら、涼太に近づいた。目元が赤くなっていることに、涼太は気がついた。
胸の奥がチクリと痛み、唇を噛み締めた。いつもの笑顔になって、ヘラヘラと陽向に質問した。
いつもと変わらない様子だが、少しだけ声が上擦っていた。陽向に見えないように、手を握り締めた。
――何か隠してやがる。何年一緒にいると思ってんだ。お前の癖ぐらい、分かってる。
涼太が何か隠していることは、丸分かりだった。しかし自分にも言えないことがあるため、深掘りするのは辞めた。
陽向の思いとは別に、涼太は清々しい笑みを浮かべた。涼太の優しい笑顔を見て、呼吸が止まったような感覚に陥る。
悪態をつきながらも、頬を染めていた。涼太は陽向の横顔を見つめ、嬉しそうに微笑んでいた。
「またミッションかよ」
「……マジか」
「おい黙ってねーで、何か言えよ。見せろ! はあ? あー、なるほどな」
「……お前、経験あるのか」
「あるわけないだろっ!」
「にしては、落ち着いてんな」
「何イラついてんだよ」
「……別に」
涼太が起き上がると、机の上にミッションの紙を見つけた。内容を読んでいると、いつの間にか後ろに陽向が立っていた。
めんどくさそうに、欠伸をしていた。涼太が固まっていたため、陽向は痺れを切らし内容を読んだ。
そこには、【愛の言葉を囁きながら、ディープキス】と書いてあった。
涼太は顔を真っ赤にし、右手で口元を隠していた。陽向はミッションのため、深く考えずに発言をした。
涼太はその様子を見つめ、眉間に皺を寄せた。左手の拳を握り締めながら、真顔で陽向に質問する。
彼は顔を真っ赤にし、憤慨した。涼太は完全に嫌味で返し、陽向は首を傾げていた。
涼太がボソッと呟いたが、見たこともないぐらいに怒っていた。陽向はバツが悪そうに、後頭部を掻いていた。
「ふう……す……すき焼きって、美味いよな」
「だな〜さっき食べたばっかなのに、もう腹減ってんのか。つーか、今関係ないだろ」
「……す……炭火焼きのハンバーグが食べたいな」
「はあ? この世界で調達できんのか? って、今はそれどころじゃないだろ」
涼太は機嫌悪そうに、ベッドに座り足を組んだ。陽向は何も言わずに、隣に座った。
――こいつ、どうして……何も言わねーんだ。俺、何かしたのか。
陽向は頻りに涼太の顔色を伺い、声をかけようとした。しかし涼太が何に怒っているのか、皆目見当がつかない。
そのため両手の指を合わせて、落ち着かない様子だった。涼太は視界の端でそれを見つめ、顔を真っ赤にしている。
陽向に怒っているというよりかは、恥ずかしいのである。キスの経験どころか、告白もしたことがない。
深呼吸をし、意を決して口を開いた。しかし好きということが言えずに、はぐらかしてしまう。
陽向はすき焼きと聞いて、涎を垂らしていた。直ぐに我に返り、本題に戻そうとした。
涼太はもう一度、今度は陽向の顔を見つめる。口元を見つめ、少しささくれた唇が目に入ってきた。
生唾を飲み込み、深呼吸をした。直前になって怖気ついてしまい、またもや違うことを告げてしまう。
意気地なしと自分を責め立て、陽向から目を逸らした。瞳に少しだけ、涙が溢れていた。
「やっぱ、何かあったのか? 具合でも悪いのか」
「来るなっ!」
「……俺のこと、やっぱ嫌いなのか」
「ちがっ」
「それとも、弟相手じゃ……無理だよな」
陽向は涼太の様子が少しおかしいため、顔を近づけた。おでことおでこをくっつけようとしたが、涼太は拒否してしまう。
顔を真っ赤にして、陽向の肩を押しのけた。俯いて体を震わせ、全身が沸騰するような感覚に陥っていた。
陽向はその様子を見つめ、落ち込んでいた。涼太に嫌われたと、涙目になっていた。
陽向はそこで、涼太がキスを拒んでいると感じた。陽向は彼の涙を見て、顔を真っ赤にして彼の顔を見られない。
陽向は大粒の涙を流して、俯いてしまう。涼太は右往左往して、慌てふためいていた。
「うわっ! なんだっ! あれっ!」
「おいおいっ……シャレになんねーぞ」
「解く……あれ、なんて読むんだ?」
「……解釈違いだろ……漢字ぐらい読もうな……ったく、高校生になってもなって! この子はっ!」
「どこから、ツッコむべきか」
陽向が顔を上げると、壁一面に血文字が書き殴られていた。【解釈違い】や【逆カプ不可】や【地雷】と書かれていた。
涼太は咄嗟に陽向を守るために、彼を抱きしめた。陽向は意味が分からないが、涼太に躊躇いもなく抱きついた。
陽向は涼太の胸に抱きつき、心臓の鼓動を聞いた。速くて、妙な気分になってしまう。
――くそっ……こいつは俺と、キスしたくないのに……涼太の唇、綺麗だな。
陽向は首を横に降り、壁の血文字を読んだ。しかし読み方が分からずに、涼太にバカにされてしまう。
涼太も面白くなったのか、妙なノリを始めてしまう。陽向は呆れながらも、涼太が笑っているため嬉しくなった。
二人の様子はいつも通りになり、微笑み合っていた。血文字の文字が、【解釈一致】や【涼陽《りょうよう》最高】や【尊い】に変わっていた。

