ラブ・ミッション・デッドライン〜祠を壊した俺たちが、男同士で愛を誓うまで〜

 地元の夏祭りに、毎年必ず参加していた。涼太はその時のことを思い出し、優しい瞳をしていた。
 しかし陽向は涼太の発言に、唇を噛み締め泣きそうになっていた。涼太は屋台が楽しみで、気がつくことができなかった。

「やっぱ屋台の焼きそばって、格別だよな。このたい焼きもうめー」
「……食べ過ぎだろ」
「そうか? ゴクゴク……お前が少食なんだよ。焼き鳥は塩だよな」
「焼き鳥はタレだろ」
「戦争だな」
「帰ってからしような。いいから、食うなら食え」
「美味っ! ラムネ最高っ!」

 陽向は食べ物の屋台を制覇する勢いで、食べ続けた。この世界の利点は、お金を払わなくてもいいところだ。
 そのため散財せずに済むが、涼太は付き合わされていた。陽向は既に、30分は経過していた。

 涼太が焼き鳥一本と、たこ焼き一人前を食べていた。焼き鳥の塩とタレは、大事な問題である。
 しかし今は、それ以上に大切なことがある。食べ盛りの陽向には、馬の耳に念仏だった。

「うわっ! なんだよっ! てめーら」
「俺が守るから」
「くそっ! 俺だって、やれる!」
「お前が怪我したら、困るんだよ。俺が」
「涼太……」
「は? なんだこれっ!」
「金魚すくいか! やるっ! 貸せっ!」

 二人は不気味な屋台に、迷い込んだ。お面屋のひょっとこが、二人の顔をじっと見つめてくる、
 陽向は平気なふりをして、涼太の浴衣を掴んでいる。涼太は陽向を守るように、前に立った。

 陽向が見えないところで、涼太は拳を震わせていた。しかし怯える二人に、ひょっとこたちは金魚すくいに使うポイを渡してきた。

 促されるままに、涼太が受け取った。陽向は涙目になっていたが、瞳をキラキラ輝かせていた。
 強引に涼太から奪い取り、小走りでビニールプールに近づいた。涼太はため息をつきながらも、優しく微笑んでいた。

「これ懐かしいな」
「昔流行ったゲーム! お前がクソ弱かったやつ」
「……これって、運動会の写真じゃねーか」
「これな〜お前、転んだよな。一位になれずに、一日中泣いてた」
「……映画、見に行ったよな〜」
「好きなキャラが怪我して、本気で心配して泣いてたやつ」
「なんなんだよっ! さっきから!」
「はあ? 事実だろ」
「くそっ……」

 金魚が泳いでいるはずのビニールプールの中には、水が入っていない。代わりに、二人の思い出の品が置かれていた。
 二人はしゃがみこみ、一つ一つを見ていた。昔二人で分けたアイスの棒や、一緒に遊んで壊したおもちゃ。

 数々の思い出の品が置かれており、二人は子供のように瞳を輝かせていた。その様子をひょっとこたちが、直立不動で見下ろしていた。
 涼太は場を和ませるように、思い出話をしようとした。しかし陽向は、純粋無垢な瞳で恥ずかしい話をしてきた。

 涼太は負けじと、高いテンションで話しかけた。しかし陽向は、お構いなしに傷口を抉っていた。

 ついに耐えきれなくなって、涼太は憤慨した。陽向が冷静に返すと、涼太は不貞腐れていた。
 涼太の耳が真っ赤になっており、陽向は嬉しそうにしている。

「射的か」
「お前、出来たっけ?」
「なんでも完璧だが、ゲームは無理なんだよな」
「敢えて、ツッコまないぞ。お前、ゲームクソ下手だもんな」
「まあ、ここは上手い奴がやるべきだな。適材適所だ! 陽向は天才的だもんな! よっ! 男前っ!」
「よせやいっ、煽てても何も出ないぞ〜仕方ないから〜やってやるか〜」
「脳筋でよかった」

 次に二人がやって来たのは、射的だった。目的地のはずだが、完全に忘れていた。
 陽向に聞かれ、涼太はドヤ顔で答えた。陽向に毒を吐かれたが、涼太は気にしないことにした。

 ここは得意な陽向に任せたほうが、効率がいい。そのため涼太は、これ以上ないぐらいに褒めまくった。

 陽向は有頂天になり、鼻歌混じりで準備し始めた。射的用の銃を手に取り、何を打つか品定めしていた。
 その光景を見つめ、涼太はボソッと呟いた。上機嫌の陽向の耳には、届いていない。

「で? どれを狙うんだ」
「……あっ、あれじゃないか」
「【現実世界に戻るための鍵】って、ネーミングセンスないな」
「お前だったら、なんてつける」
「英語一択だな。かっこいいだろ」
「そういうのは、赤点取らなくなってから言えよな」
「この世界じゃ、ベンキョーできねーし。無理だろっ」
「まあ、そういうことにしておこう。頑張れ! 陽向は世界一のガンマンだっ!」
「おうっ! よく見てろよ!」
「マジで、脳筋だな」

 陽向は真面目な顔をして、銃を構えている。レバーを引いてから、コルクをしっかりと奥まで詰めた。
 空気量が増え、威力が上がる。肘を台に置き、脇を締めるとブレにくくなる。

 距離が近いと、威力が増す。そのため前のめりになったところで、涼太に質問した。
 少しだけ呆れながらも、指を差した。分かりやすいため、それを狙うことになった。

 長方形の白い箱に入っており、綺麗にラッピングされている。陽向は冷徹な一言を告げるが、涼太が質問をした。
 すると、子供みたいな返答が返って来た。涼太は、呆れたような眼差しを向ける。

 陽向のやる気を削ぐと後々めんどくさいため、持ち上げることにした。満更でもないようで、やる気に満ち溢れていた。
 涼太のボソッと呟いた言葉は、陽向には届かない。今度こそ、箱を撃ち落とすことに成功した。

 顔を真っ赤にして、見惚れていた。普段の子供のような姿ではなく、一人の男として惚れ惚れする姿だった。

「……お前、右耳だけは頑なに触らせてくれないよな」
「昔泣いたからって、バカにすんな!」

 涼太は、陽向が他の生徒たちに見られていることに気がついた。無機質な様子だったが、気に食わない。
 そのため陽向の肩に腕を回し、右の耳を触った。ホクロを食い入るように見つめ、頬を染めていた。

 陽向は涼太の気持ちが分からないため、本気で怒っていた。不貞腐れたようで、頬を膨らましている。
 そこで涼太の視線は、とある場所に集中していた。陽向は夢中になってしまい、浴衣がはだけていた。

 胸元が露わになっており、涼太は生唾を飲み込んだ。無言で浴衣を直したが、陽向には理解できなかった。
 不思議そうに首を傾げ、涼太を見ていた。眉毛を八の字に曲げ、心配そうにしていた。

 ――顔赤くして、どうしたんだ。具合でも悪いのか? 注意深く、見ておこう。

「さてと〜さっきの箱は〜」
「お前、もう少し慎重に開けろよ」
「お前に託した」