夕方、もう一度目覚めたら、グループチャットに顧問からの『弓道部活動停止』の書き込みがあった。
書かれたのが午後二時過ぎ。その二分後には、顧問を抜いた部員だけの別なグループチャットが出来上がっていた。ボクが気が付いたのは午後4時半とかで、チャットはその二時間余りで膨大な書き込みとなっていた。
新しいチャットから手繰っている間にこれはどうやら、ショーゲン先輩がやらかしたらしいと言う事がわかった。
「昨日の夕方から学校外の友人達と、制服でカラオケに行って、飲酒動画がSNSに上がったらしいよ」
え〜マジとか、ヒーって驚いたスタンプ多種。
「え? 自分であげてんの?」
「高校中退してる元同級生が上げたらしい」
「あ〜、特定。これだ。まだ消されてない」
リンクにはコークハイをグビグビ飲む様子が流れていた。
だめじゃんとか、やっちゃってんねってスタンプ。
「でもこれ、自分で注文できないでしょ。制服じゃ」
「前後の動画から見ると、中学時代の友人達とカラオケに行って、偶然、隣の部屋にいた友人の大学生の先輩が酔ってグラス持って雪崩れ込んできて、その酒飲んじゃったらしい」
「なんで飲んじゃったかなぁ……」
ほんそれとか、それなってスタンプ。
「好きな子に告白して、当たって砕けたって言ってる、動画では」
「なんか、一年生?」
「一年の女子って、誰よ? 今いる弓道部の一年女子七名の中?」
……いるはずの無い相手探し。
「加賀美先輩、インターハイ全国大会、出られないんじゃない?」
マジ?、驚き、かわいそーってスタンプ。
「加賀美先輩はどうしてますか?」
チャットに参加する。
「優生くん、具合どう? 大変なことになっちゃったよ」
「大分いいです。まだ、少し熱があります……。加賀美先輩、あんなに頑張ったのに、インターハイ出場自粛なんですか?」
「うん、なんか職員室に呼ばれてた」
「今日、部活中に顧問が教頭に呼び出されて、そのままになって解散になった」
「一ヶ月活動停止とかだと、全国大会被っちゃうもんねぇ……」
「顧問が教頭に呼ばれてからオレたちはすぐ学校から追い出されたけど、ショーゲン先輩と親御さんは呼び出されてたみたいだし、加賀美先輩も職員室に行った」
「そうですか……大変なことになりましたね」
困っちゃうとか、ねーってスタンプ。
ボクのせいだ。小太郎先輩、あんなに頑張って県大会優勝したのに、全国大会出られないなんて。
昨日から、やり直す事が出来たらいいのに。なんかもう少し断りようがあったんじゃないかな。なんでボクはいつも迷惑かけちゃうんだろ?
ごめんなさい。小太郎先輩の邪魔をして。ごめんなさい。応援してるはずだったのに。なんでうまくいかないんだろ?ボクのせいだ。ボクのせいだ。ボクが悪い。
居ても立っても居られずに学校まで行ってみることにした。支度していると、クーが散歩の約束なんだが?って顔をしたので、連れて行く。
黒豆柴を連れた、体の芯にまだ熱の残った赤い顔で、熱で潤んだ目の謎の高校生男子が爆誕した。
「ゆうちゃん、クーの散歩? 風邪大丈夫?」
「うん。行ってきます」
店の方から母が声をかけてきた。
学校までの三十分近くの間も、頭の中がぐるぐるしていた。
ショーゲン先輩が悪いのはわかる。あれ、でもきっとタイミングでそんなことになったけど、なんかの間違いなんだろう。間が悪かったとか、そんな感じで。
カラオケ屋の隣の部屋にいた友人の先輩が酔っ払ってなかったら?
そもそも、動画とかSNSにあげる友人がいなかったら?
昨日、フラれるとか、ショックな事がなかったら?
ほんの少しのタイミングで日常って崩れてしまうんだな。いつも、悪い事が起こる時ってそんな感じだ。
ボクが、なんかもっと違った風に答えていたら?
ボクが小太郎先輩を好きじゃなかったら?
ボクが小太郎先輩を追いかけて、嶺南高校に来なかったら?
ボクが……いなかったら?
「優生くん!」
高校近くの川の土手まで来て、小太郎先輩がボクを見つけた。バス停ではないところで、バスを停めて降りてきた。
「木村さん、僕、今日電車で帰ります。ありがとう。帰ったら、伝えといて」
バスの運転手さんに声をかけていた。
「風邪は? もういいの?」
ばくの顔を覗き込んで、
「え? まだ熱があるんじゃない?」
いかにも具合の悪そうな顔なんだろうか? ボクは。
小太郎先輩が近づいた分、ボクは後ろに数歩下がった。
「優生くん、どうした? 大丈夫?」
土手を散歩させている他の大きな犬にクーが近づこうとした。先輩は少しその犬の方を向いた。
「先輩、ボクを……殺してください」
やっと絞り出したボクの声は、みっともなく震えていた。
「え?」
振り向いた先輩はいつもの冷静な顔を崩して、驚いていた。
「折角、インターハイの県代表になったのに、出られなくなったじゃないですか……。ボクが、ショーゲン先輩になんかもっと気の利いたことを言ってたら……」
「え? 布留川先輩の告白相手って優生くんだったの?」
「せっかく小太郎先輩が頑張ったのに、ボクが台無しに……」
もう、声が詰まってダメだった。もう、涙が止まらなかった。
「ボクのせいで……小太郎先輩が……ボクの……」
「ちょ……、優生くん」
「ボクのせいで、いろんな物がダメになっていっちゃう、ボクが……キモいから」
「優生くん!」
小太郎先輩はボクの額を触った。
「熱あるじゃん! 歩ける?」
ボクは小太郎先輩に負ぶわれて帰った。小太郎先輩はボクを負ぶって、弓道着の入ったバッグを持って、肩に弓袋をかけて、クーのリードを持って、歩いている間言った。
「優生くんのせいじゃないよ。そんなこと、重荷に思う必要ないよ。インターハイは残念だけど、僕の人生のマイナスではないから大丈夫。ちゃんとまたチャンスは来るから」
ボクだって痩せてはいるけど子供じゃないからそこそこ重いはずなんだけど、小太郎先輩は楽々と負ぶったまま、ボクの家まで送ってくれた。
更に迷惑になってしまった。
書かれたのが午後二時過ぎ。その二分後には、顧問を抜いた部員だけの別なグループチャットが出来上がっていた。ボクが気が付いたのは午後4時半とかで、チャットはその二時間余りで膨大な書き込みとなっていた。
新しいチャットから手繰っている間にこれはどうやら、ショーゲン先輩がやらかしたらしいと言う事がわかった。
「昨日の夕方から学校外の友人達と、制服でカラオケに行って、飲酒動画がSNSに上がったらしいよ」
え〜マジとか、ヒーって驚いたスタンプ多種。
「え? 自分であげてんの?」
「高校中退してる元同級生が上げたらしい」
「あ〜、特定。これだ。まだ消されてない」
リンクにはコークハイをグビグビ飲む様子が流れていた。
だめじゃんとか、やっちゃってんねってスタンプ。
「でもこれ、自分で注文できないでしょ。制服じゃ」
「前後の動画から見ると、中学時代の友人達とカラオケに行って、偶然、隣の部屋にいた友人の大学生の先輩が酔ってグラス持って雪崩れ込んできて、その酒飲んじゃったらしい」
「なんで飲んじゃったかなぁ……」
ほんそれとか、それなってスタンプ。
「好きな子に告白して、当たって砕けたって言ってる、動画では」
「なんか、一年生?」
「一年の女子って、誰よ? 今いる弓道部の一年女子七名の中?」
……いるはずの無い相手探し。
「加賀美先輩、インターハイ全国大会、出られないんじゃない?」
マジ?、驚き、かわいそーってスタンプ。
「加賀美先輩はどうしてますか?」
チャットに参加する。
「優生くん、具合どう? 大変なことになっちゃったよ」
「大分いいです。まだ、少し熱があります……。加賀美先輩、あんなに頑張ったのに、インターハイ出場自粛なんですか?」
「うん、なんか職員室に呼ばれてた」
「今日、部活中に顧問が教頭に呼び出されて、そのままになって解散になった」
「一ヶ月活動停止とかだと、全国大会被っちゃうもんねぇ……」
「顧問が教頭に呼ばれてからオレたちはすぐ学校から追い出されたけど、ショーゲン先輩と親御さんは呼び出されてたみたいだし、加賀美先輩も職員室に行った」
「そうですか……大変なことになりましたね」
困っちゃうとか、ねーってスタンプ。
ボクのせいだ。小太郎先輩、あんなに頑張って県大会優勝したのに、全国大会出られないなんて。
昨日から、やり直す事が出来たらいいのに。なんかもう少し断りようがあったんじゃないかな。なんでボクはいつも迷惑かけちゃうんだろ?
ごめんなさい。小太郎先輩の邪魔をして。ごめんなさい。応援してるはずだったのに。なんでうまくいかないんだろ?ボクのせいだ。ボクのせいだ。ボクが悪い。
居ても立っても居られずに学校まで行ってみることにした。支度していると、クーが散歩の約束なんだが?って顔をしたので、連れて行く。
黒豆柴を連れた、体の芯にまだ熱の残った赤い顔で、熱で潤んだ目の謎の高校生男子が爆誕した。
「ゆうちゃん、クーの散歩? 風邪大丈夫?」
「うん。行ってきます」
店の方から母が声をかけてきた。
学校までの三十分近くの間も、頭の中がぐるぐるしていた。
ショーゲン先輩が悪いのはわかる。あれ、でもきっとタイミングでそんなことになったけど、なんかの間違いなんだろう。間が悪かったとか、そんな感じで。
カラオケ屋の隣の部屋にいた友人の先輩が酔っ払ってなかったら?
そもそも、動画とかSNSにあげる友人がいなかったら?
昨日、フラれるとか、ショックな事がなかったら?
ほんの少しのタイミングで日常って崩れてしまうんだな。いつも、悪い事が起こる時ってそんな感じだ。
ボクが、なんかもっと違った風に答えていたら?
ボクが小太郎先輩を好きじゃなかったら?
ボクが小太郎先輩を追いかけて、嶺南高校に来なかったら?
ボクが……いなかったら?
「優生くん!」
高校近くの川の土手まで来て、小太郎先輩がボクを見つけた。バス停ではないところで、バスを停めて降りてきた。
「木村さん、僕、今日電車で帰ります。ありがとう。帰ったら、伝えといて」
バスの運転手さんに声をかけていた。
「風邪は? もういいの?」
ばくの顔を覗き込んで、
「え? まだ熱があるんじゃない?」
いかにも具合の悪そうな顔なんだろうか? ボクは。
小太郎先輩が近づいた分、ボクは後ろに数歩下がった。
「優生くん、どうした? 大丈夫?」
土手を散歩させている他の大きな犬にクーが近づこうとした。先輩は少しその犬の方を向いた。
「先輩、ボクを……殺してください」
やっと絞り出したボクの声は、みっともなく震えていた。
「え?」
振り向いた先輩はいつもの冷静な顔を崩して、驚いていた。
「折角、インターハイの県代表になったのに、出られなくなったじゃないですか……。ボクが、ショーゲン先輩になんかもっと気の利いたことを言ってたら……」
「え? 布留川先輩の告白相手って優生くんだったの?」
「せっかく小太郎先輩が頑張ったのに、ボクが台無しに……」
もう、声が詰まってダメだった。もう、涙が止まらなかった。
「ボクのせいで……小太郎先輩が……ボクの……」
「ちょ……、優生くん」
「ボクのせいで、いろんな物がダメになっていっちゃう、ボクが……キモいから」
「優生くん!」
小太郎先輩はボクの額を触った。
「熱あるじゃん! 歩ける?」
ボクは小太郎先輩に負ぶわれて帰った。小太郎先輩はボクを負ぶって、弓道着の入ったバッグを持って、肩に弓袋をかけて、クーのリードを持って、歩いている間言った。
「優生くんのせいじゃないよ。そんなこと、重荷に思う必要ないよ。インターハイは残念だけど、僕の人生のマイナスではないから大丈夫。ちゃんとまたチャンスは来るから」
ボクだって痩せてはいるけど子供じゃないからそこそこ重いはずなんだけど、小太郎先輩は楽々と負ぶったまま、ボクの家まで送ってくれた。
更に迷惑になってしまった。
