生活魔法しか使えないから諦めてたのに……あれ?私、最強だった 〜5歳の転生幼女、自由気ままに異世界を生き抜く〜

 暑さも和らぎ、冷たい風を感じるようになった今日この頃。
 王都から戻ってきて、随分と月日も経った。
 身長が少し伸びた気がするけど、カレンさんには「あんま変わらないな」と笑われた。
 そして……。

「キレイになったなあ……」

 ぽつりと呟く。
 現在、私が立っている場所はゴミ区だ。
 いや……{元}ゴミ区と言った方が正しいか。
 今ではゴミ区もキレイに整備され、街並みと溶け込んでいる。
 ゴミ区にいた人たちも仕事場を紹介され働いているので、かつてのゾンビが徘徊しているような光景はなかった。

『ガリ兄、{私との約束}……覚えていますよね? 忘れてたら、タダじゃおかないんですから』

 ガリ兄と別れる際、私は彼にそう言った。
 ガリ兄との約束……それは、エルフィノラのゴミ区を撤廃することであった。
 ゴミ区の人にはゴミ区の人なりの暮らしがあるのかもしれないけど、やっぱりみんなにも前を向いて生きてほしい。
 生きることを諦めなければ、きっと楽しいことが待ち受けているんだから。
 ゆえにガリ兄に頼んでゴミ区の人たちに仕事や住居を用意し、元々ゴミ区があった場所もキレイに整えてもらったが……上手くいったようでなにより。
 ゴミ区にいる人たちも、今の生活が楽しいと言ってくれている。
 みんな、『ユイのおかげだ』とも。
 私のおかげかどうかはともかく……ゴミ区にいる人たちも前を向いて歩けるようになったのは、嬉しい。
「今まで、色んなことがあったなあ」
 異世界に転生し、ゴミ区で目覚め。
 冒険者になったり、王都でお城暮らしをすることもあった。
 だけど、なんだかんだで全部いい思い出だ。
「──なにひとりで黄昏てんだ、ユイ」
 その場に立ち尽くしていると、いつの間にかカレンさんがいて、後ろから声をかけてきた。
「いえいえ、幸せを噛み締めていまして」
「……? そうか? まあいい」
 首を傾げながら、カレンさんは言う。
「ユイに伝えることがある」
「なんですか?」
「今すぐ冒険者ギルドに来て欲しい、ってフィリスからの要請だ。なんでも、女王陛下とその側近の王子がエルフィノラに視察に来ているから、案内をしてやってほしいだとか……」
 女王陛下とその側近の王子……エルフィノラに視察……。
 一瞬それがどういうことを意味するのか分からなかったが、すぐに理解が追いついてくる。
「それって、クレア女王とガリ兄ってことですか!? どうして、今まで言ってくれなかったんですか!?」
「ユイには当日まで内緒にするようにとお達しだ。なんでも、あの第一王子が『ユイをビックリさせたいから』ってことらしくてな」
「もーうっ! ガリ兄も悪戯好きなんですから!」
 ぷんぷんと頬を膨らませる。
 ……だけど、久しぶりにふたりに会えると思うとワクワクする。
「すぐに行きましょう! カレンさんも!」
「はいはい」
 柔らかい表情で頷き、カレンさんが私の後に続いた。

 ──生活魔法。

 それは、みんなの生活をちょっぴりだけお手伝いする魔法。
 私はこれからも思う存分、異世界生活を満喫してやろうと心に誓うのであった。