「君と見る夕焼けと海は、あと何回だろう」

高校二年の夏だった。

放課後、なんとなく足が向いた先は、海の見えるあの場所だった。
夕焼けが、やけにきれいで、少しだけ現実感がなかった。

その景色の中に、ひとりだけ、先に座っている人がいた。

女の子だった。

声をかける理由なんてなかった。
ただ、帰るのもなんとなく嫌で、少し離れた場所に座る。

波の音と、風の音だけが続く。
隣に人がいるのに、やけに静かだった。

何度か、横目で見る。
同じように夕焼けを見ているだけなのに、どうしてか気になった。

——帰ろうか。

そう思って立ち上がりかけて、やめた。

「……あの」

気づけば、声をかけていた。

自分でも、なんで話しかけたのか分からなかった。

彼女は少しだけ驚いた顔をして、こっちを見る。

「ここ、よく来るの?」

当たり障りのない言葉しか出てこなかった。

少しの間のあと、彼女はふっと笑って、

「ううん。……でも、好きなんだ。この時間」

夕焼けの方を見ながら、そう言った。

その横顔が、やけに印象に残った。

「そっか」

それ以上、うまく言葉が続かない。

沈黙が落ちる。
でも、不思議と居心地は悪くなかった。

しばらくして、彼女が小さく息を吐いてから、

「ねえ」

と、少しだけこっちを見た。

「君は?」

その問いに、少しだけ考えてから答える。

「……今日が初めて」

そう言うと、彼女は少しだけ嬉しそうに笑って、

「じゃあ——初めまして、だね」