華と番犬。

雨宮凛と鈴木匠海は小学生の頃から友人だ。性格は少し異なる二人だが、気がつけばお互い隣に居るのが当たり前になっていた。何かに悩めば真っ先に相談することも一度や二度ではない。
成長するにつれ、凛は美麗な容姿から女子からちやほやされて次第に「学校一のプリンス」と言われて有名になりーー凛からすれば迷惑なことだったがーー男子には嫉妬の感情から辛く当たられることが多くなった。
然し匠海は周囲の態度や評価を気にすることなく、いつも変わらぬ態度で凛に接してくれた。
だけど幼馴染や親友と呼ぶ間柄だと特別意識したことはない。

そんな匠海に対する感情に、凛が思いを巡らせている間にもあっという間に時間が過ぎ、気がつけば放課後になっていた。
人がまばらになった教室の窓から静かに日差しが差し込む。凛の席は窓際の後方にあった。机の中の教科書を全て通学鞄に入れ、小さく息を吐きながら一度窓の外を見た。
そうだ。今日は部活に行かなくていい日だから図書室へ行こう。図書室で本を黙々と読んでいる瞬間は、嫌なことは忘れられると経験で知っていた。
匠海のことを考えてため息をついたことは今まで一度もなかったから不思議な気持ちだが、凛は深呼吸して気持ちを切り替えると、鞄を肩から下げて教室を出た、その時。