凛を取り囲む女子の背後から匠海がこちらを真っ直ぐ見下ろしていた。
四角くがっしりとした顔の輪郭にぎょろりとしたどんぐり眼。真一文字に結んだ唇は頑固そうに見える。
彼の声がした途端、女子数人がぎょっとしたように匠海を見ると、なぜか左右にささっと道を開けるように退いた。
「ああ匠海か、おはよう。包帯は清潔なものと取り替えたし、傷の痛みはもうない。心配は要らない」
「そうか。ま、お前なら大丈夫だとは思っていたけどな」
匠海の厳つい表情がわずかに和らいたのが凛にはわかった。いつもは引き結ばれた口が弧を描いたように見える。だが次の瞬間、
「ほら、女子たちは散れ散れ! もう少しで授業が始まるし、凛は怪我してんだ。見せ物じゃねえぞ!」
匠海の顔が普段の厳しく真面目な頑固人間の顔つきに戻っていた。太く低い声をわずかに張り上げ、右腕を大きく振る。
女子の間でざわめきが起こり、やがて彼女たちはしぶしぶ凛の席を離れていった。あとに匠海だけが残ると、凛は誰にも気づかれないほど小さな息を吐き出した。
その時、ちょうどチャイムが教室内に鳴り響いた。
「それじゃ、また後でな凛」
匠海はそう言うと、自分の席に着こうと歩き出そうとする。
「あ、待て匠海。さっきは助かった」
凛はなぜか胸の奥で安堵が広がるのを感じながら、匠海を見上げた。彼は横を向いていた身体を戻して、凛に向き直る。小さな黒い瞳が凛を見つめる。その視線に偽りや濁った感情はない、と凛は思った。見慣れているはずの匠海の顔や視線、言葉が今の凛の心を穏やかにしている。
「なにを今更改まっているんだ。お前が困っていたら助けるのは当たり前のことだろう」
匠海は白い歯を見せて珍しく目を細めて笑う。夏に生まれた彼らしいスカッと晴れた青空のような男らしく爽やかな笑みだった。そんな表情も、凛は隣でずっと見てきたはずだった。
だけど今は匠海の笑みが、言葉が、存在が凛の心を軽くし、救ってくれているように思えた。
四角くがっしりとした顔の輪郭にぎょろりとしたどんぐり眼。真一文字に結んだ唇は頑固そうに見える。
彼の声がした途端、女子数人がぎょっとしたように匠海を見ると、なぜか左右にささっと道を開けるように退いた。
「ああ匠海か、おはよう。包帯は清潔なものと取り替えたし、傷の痛みはもうない。心配は要らない」
「そうか。ま、お前なら大丈夫だとは思っていたけどな」
匠海の厳つい表情がわずかに和らいたのが凛にはわかった。いつもは引き結ばれた口が弧を描いたように見える。だが次の瞬間、
「ほら、女子たちは散れ散れ! もう少しで授業が始まるし、凛は怪我してんだ。見せ物じゃねえぞ!」
匠海の顔が普段の厳しく真面目な頑固人間の顔つきに戻っていた。太く低い声をわずかに張り上げ、右腕を大きく振る。
女子の間でざわめきが起こり、やがて彼女たちはしぶしぶ凛の席を離れていった。あとに匠海だけが残ると、凛は誰にも気づかれないほど小さな息を吐き出した。
その時、ちょうどチャイムが教室内に鳴り響いた。
「それじゃ、また後でな凛」
匠海はそう言うと、自分の席に着こうと歩き出そうとする。
「あ、待て匠海。さっきは助かった」
凛はなぜか胸の奥で安堵が広がるのを感じながら、匠海を見上げた。彼は横を向いていた身体を戻して、凛に向き直る。小さな黒い瞳が凛を見つめる。その視線に偽りや濁った感情はない、と凛は思った。見慣れているはずの匠海の顔や視線、言葉が今の凛の心を穏やかにしている。
「なにを今更改まっているんだ。お前が困っていたら助けるのは当たり前のことだろう」
匠海は白い歯を見せて珍しく目を細めて笑う。夏に生まれた彼らしいスカッと晴れた青空のような男らしく爽やかな笑みだった。そんな表情も、凛は隣でずっと見てきたはずだった。
だけど今は匠海の笑みが、言葉が、存在が凛の心を軽くし、救ってくれているように思えた。


