真っ直ぐに続く長い廊下を、向こうから歩いてくる人物が見えた。
見覚えのある背格好だった。遠巻きでもわかる横幅のある肩、四角く角ばった頑丈そうな顔の輪郭にどんぐり眼。
その人物に近づくにつれ、顔のパーツがだんだんはっきりとしてきた。
白目の多い眼に鼻は低い方だが強情そうなキリっとした眉、濃紺色の髪を角切りにした男子生徒の足取りは力強い。いかにもスポーツマンといった感じだ。
彼の姿を視認した瞬間、凛は矢張りこいつかと内心で小さく息を吐いた。
それと同時になぜか胸の奥で、気が少し緩むのを感じる。
「なんだ凛じゃないか。お前、こんな所で一人でどうした。たしか今の時間は部活で美術室のはずだが」
低く重みのある彼の声は高校生にしては老けて聞こえる。昨日も道を尋ねてきた子供が最後に、「ありがとね。おじちゃん」と彼の顔を見て言ったのだった。
だけど凛は昔から彼の顔も声も、見慣れていたし聞き慣れていたから今更気にならない。
凛は目の前に立つ男子生徒を少しだけ見上げた。
「部活の最中に怪我をしてしまってな。保健室に行っても誰もいなかったから仕方なく自分で手当てをした。それだけだ」
凛は右手の手の平を彼の前に数秒晒した。目の前の彼ーー鈴木匠海の目に白い包帯から覗くガーゼがあてられた凛の手の平が映る。白く透き通るような肌、男性の割に細く長い指、匠海よりも小さな手。
「今から部活に戻るのか?」
「いや。美術室に荷物だけ取りに戻るだけで、今日はもう帰ろうかと考えていた。お前こそなぜ此処に居る?」
「俺は顧問の先生に部室の合鍵を取りに行くよう言われてな。それを持って部活に戻るところなんだが」
匠海はそこで一度言葉を切ると、凛の手元にちらりと視線を落とした。そして再び彼を正面から見据える。
見覚えのある背格好だった。遠巻きでもわかる横幅のある肩、四角く角ばった頑丈そうな顔の輪郭にどんぐり眼。
その人物に近づくにつれ、顔のパーツがだんだんはっきりとしてきた。
白目の多い眼に鼻は低い方だが強情そうなキリっとした眉、濃紺色の髪を角切りにした男子生徒の足取りは力強い。いかにもスポーツマンといった感じだ。
彼の姿を視認した瞬間、凛は矢張りこいつかと内心で小さく息を吐いた。
それと同時になぜか胸の奥で、気が少し緩むのを感じる。
「なんだ凛じゃないか。お前、こんな所で一人でどうした。たしか今の時間は部活で美術室のはずだが」
低く重みのある彼の声は高校生にしては老けて聞こえる。昨日も道を尋ねてきた子供が最後に、「ありがとね。おじちゃん」と彼の顔を見て言ったのだった。
だけど凛は昔から彼の顔も声も、見慣れていたし聞き慣れていたから今更気にならない。
凛は目の前に立つ男子生徒を少しだけ見上げた。
「部活の最中に怪我をしてしまってな。保健室に行っても誰もいなかったから仕方なく自分で手当てをした。それだけだ」
凛は右手の手の平を彼の前に数秒晒した。目の前の彼ーー鈴木匠海の目に白い包帯から覗くガーゼがあてられた凛の手の平が映る。白く透き通るような肌、男性の割に細く長い指、匠海よりも小さな手。
「今から部活に戻るのか?」
「いや。美術室に荷物だけ取りに戻るだけで、今日はもう帰ろうかと考えていた。お前こそなぜ此処に居る?」
「俺は顧問の先生に部室の合鍵を取りに行くよう言われてな。それを持って部活に戻るところなんだが」
匠海はそこで一度言葉を切ると、凛の手元にちらりと視線を落とした。そして再び彼を正面から見据える。


