結局匠海は、誰かに対して特別な意識を持ったり、情熱的な愛情を抱いたりしたことは一度もなかった。それ故、凛に向ける感情が自分でも分からず、胸に靄が掛かったような感覚がした。
それから二人はこれといって深い接点がないまま、月日は流れ一週間が経過した。
放課後の廊下をオレンジ色の西日が照らしている。夏が近いためか凛が怪我をした時よりも、だいぶ日が長くなっている。あと一週間もすれば制服が夏仕様に移り変わる時期だ。
そんなことを思いながら匠海が部活に向かう途中、長く続く廊下の向こうから優作と勇が歩いてきた。
優作は匠海に気がつくと、
「やあ匠海。今から部活かい?」
優作は片手を上げて匠海を見上げる。アーモンド型をした目に焦げ茶色の虹彩が匠海を見つめる。それがなんだか子犬のような雰囲気があるとは感じるが、凛に対して抱くような感覚はない。
一体あれは、なんなんだ。そう思いながら優作を見ると、
「どうしたんだい匠海、急に眉間にしわ寄せたりして。お腹でも痛いのかい?」
「あ、いや。何でもねえ」
心配そうな声色になる優作に、匠海はハッとして首を横に振った。
「放っておけよ優作。匠海が今まで機嫌よく笑ったことがあったか? こいつの眉間にしわが無かったら、こいつじゃないだろ」
「んだとぉ!? 勇、お前、喧嘩売ってんのか」
「ああ? 本当のことだろ」
細長い眉を片方だけ上げて小馬鹿にしたような表情をする勇を、匠海は噛み付くように睨む。二人は部活で“剣道部の犬と猿”と言われるほどの犬猿の仲で、こういう口喧嘩のようなものは日常茶飯事だった。
「ちょっと二人とも! ケンカはやめてよ」
優作が穏やかで柔らかい声を少しだけ張り上げる。
それから二人はこれといって深い接点がないまま、月日は流れ一週間が経過した。
放課後の廊下をオレンジ色の西日が照らしている。夏が近いためか凛が怪我をした時よりも、だいぶ日が長くなっている。あと一週間もすれば制服が夏仕様に移り変わる時期だ。
そんなことを思いながら匠海が部活に向かう途中、長く続く廊下の向こうから優作と勇が歩いてきた。
優作は匠海に気がつくと、
「やあ匠海。今から部活かい?」
優作は片手を上げて匠海を見上げる。アーモンド型をした目に焦げ茶色の虹彩が匠海を見つめる。それがなんだか子犬のような雰囲気があるとは感じるが、凛に対して抱くような感覚はない。
一体あれは、なんなんだ。そう思いながら優作を見ると、
「どうしたんだい匠海、急に眉間にしわ寄せたりして。お腹でも痛いのかい?」
「あ、いや。何でもねえ」
心配そうな声色になる優作に、匠海はハッとして首を横に振った。
「放っておけよ優作。匠海が今まで機嫌よく笑ったことがあったか? こいつの眉間にしわが無かったら、こいつじゃないだろ」
「んだとぉ!? 勇、お前、喧嘩売ってんのか」
「ああ? 本当のことだろ」
細長い眉を片方だけ上げて小馬鹿にしたような表情をする勇を、匠海は噛み付くように睨む。二人は部活で“剣道部の犬と猿”と言われるほどの犬猿の仲で、こういう口喧嘩のようなものは日常茶飯事だった。
「ちょっと二人とも! ケンカはやめてよ」
優作が穏やかで柔らかい声を少しだけ張り上げる。


