君だけがパーフェクト



「響〜、最近駅前に新しくできた本屋行った?」
「本屋?」
俺と響は数学の時間だけ同じクラスになれる。

「文房具とか雑貨とかも置いてあって、結構楽しかったんだよなぁ。んで、カフェも隣に併設されててさぁ。今度行ってみない?響って今日は家庭教師?」
「うん、まあ…。それって…誰かと一緒に行ったの?」
「あぁ、シュウと行ったんだよ。俺の中学ん時の後輩。覚えてる?」
「流石に覚えてるでしょう。インパクト強かったし」
「だよなー。でもその後だれにも聞かれなかったんだよね。ちょっと安心した(笑)」
「僕は安心してないけどね」
「何って?」
「いや、なんでもない。シュウ君って中学が一緒だっただけ?」
「部活が一緒だったんだよ。あれで中学ん時は人見知りで人と喋るのも苦手でさぁ。変わるもんだよなぁ」
「そう…」

キンコンカンコン〜キンコン

「やばっ、次の授業始まっちゃう!
じゃあ俺行くね。またメールするよ」



******

ー 秋の郊外学習ー


毎年恒例、秋の郊外学習は学年ごとにテーマが決められている。

今年は伝統文化体験ーー陶芸か和菓子のどちらかを選択する。

俺と湊とサクは陶芸を選んだ。
響にも一緒に陶芸をしようよと誘っておいたから、陶芸を選んでいるはず。

和菓子も捨てがたかったけど自分で作った和菓子は勿体無くて食べれないってサクが言うからやめておいた(笑

バスに揺られて1時間半やっと目的地に辿り着く着いた。
「はい、皆んな集合!!よく聞いてー。
和菓子を選んだ生徒は右の扉から中に入って下さい。陶芸を選んだ生徒はこのまま先生の後に続いて下さい。分かりましたか〜?もう一度繰り返します。和菓子を選んだ生徒は〜〜」

俺とサクと湊はそのまま先生の後に続いた。
陶芸といっても箸置き、アクセサリートレイ、湯のみなど数種類の中から選ぶことができる。

「どれにする?思った以上に楽しそうじゃない?」
湊が真剣に悩んでいる。
「あっ、ヒビキ〜〜っ、やっと見つけた!こっちこっち」
さっきから探してたのになかなか見つけられずにいた。
「ごめん、トイレ寄ってた。僕まで仲間に入れて貰って良かったのかな?湊君、サク君、今日は宜しくデス。なんか種類多いんだね。どれにするか迷うなぁ」
「中村君ってクラスの友達はよかったの?一緒に連れてこれば良かったのに」
サクって誰とでも仲良くなれて社交的なんだよな。
「僕の友達はみんな和菓子を選んじゃって。女の子に誘われたみたいなんだよね。だから逆に良かったかも」

「ねえねえ、青井君達は何にするの?」
隣にいた女子たちが話しかけてきた。
「そっちは決まったの?」
逆に聞いてみた。あの顔は聞いて欲しい顔だ。
「私たちは箸置きにするつもり。箸置きだったら2個作れるんだって〜。かわいい犬と猫を作ろうかなぁ」
ほらね!
俺達は彫刻のミニ動物作りに決めた。
手のひらサイズの置物。小さな角材をもらって、彫刻刀で少しずつ削っていくやつ。

置物作りを選んだ生徒は外に連れて行かれた。

「ここに置いてある角材から好きなものを選んでそこのテーブルで作り始めて下さい。カンナや彫刻刀はテーブルに置いてあるのを自由に使っていいですが、怪我をしないように気をつけてくださいね〜。色を塗りたい生徒はまた申し出てください」

近くのテーブルにカバンをおいて角材を取りに行った。
「どの角材がいいんだろう?色塗るなら関係ないか?」
「あんまり大きいと削るの大変じゃない?」
さすが響!俺は響のアイデアを尊重して、片手にすっぽり収まる程度の角材を選んだ。響も同じ位のを選んでいたと思う。
湊は割と小さめ、サクは結構大きいのを選んでいたけど時間内に出来るのかな?まっ、お手並み拝見としよう(笑

角材に下絵を書いて・・・。
えっ、これって3Dで描くって事か!
ムズッ

「まず正面を描いて、次に側面、あと上から見たのをざっくり描けばいいんだよ。削って調節すればいいんだから」
俺もサクも湊も角材を持ったまま固まってたんだよね〜。

「何を作るつもり?」
「亮太、それは聞くな!出来上がってからのお楽しみにしようぜ」
サクはなにんに対しても一生懸命なところがいいと思う。


サクッサクッシュッシュッ


角材を削る音だけが響いている。

「出来たぁーーーーーーっ」
俺が一番だ!
「えっ?ただの丸じゃん」
「これに色を塗るんだよ!先生に絵の具を借りてこよ〜」
「響も出来そう?」
「うん、僕ももうすぐ終わる。僕も色を塗りたいな」
「オッケー。じゃあ、ちょっと行ってくるよ」
「俺、終わるかなー?ちょいスピードアップするわ」
サクは焦り出した様だけど・・

ザグッ

「しまったぁーーっ」
あーあ、湊やっちゃったかも…



「絵の具貰ってきたよ〜、んっ?湊どーした?」
「なんでも無い…」
「なんでも無いって顔でも無い気がするけど…。ほら、もう時間があんまりないよ、色を塗る人はさっさと始めよ」
湊、大丈夫かな?あれは絶対に削っちゃうダメな所を削ってしまったパターンだと思うな。
でも色で誤魔化せる時もある訳だから、何とか乗り切って欲しい(笑
こう言う作業って本当に無言でやっちゃうんだよなぁ〜。


亮太ってやっぱり絵を描いてる姿が綺麗だよな。指が長くて細くてしなやかな手はずっと見ていられる。
亮太自身がもう作品って感じがするんだよな。

「中村君、亮太の事見惚れてるでしょ?」
「えっ?」
「目がハートになってるよ」
「そ、そう…かな?」
「わかるよ〜だって亮太のあの顔って反則だろ?
俺が見てもずるいなって思うもん。亮太って女子にも人気があるんだよね〜。優しくって、喋りやすいしさ。こうやって中村君と友達になれたのも亮太のお陰だしね。あっ、これ俺と中村君との秘密ね」
湊君もそんな風に思ってたんだ。
俺だけじゃないんだな。


「うおー、やっと出来たよ!俺にとっての最高傑作!!あぁぁ愛おしすぎるぅ〜皆んなももう色を塗り終わった?終わってるなら見せ合いっこしようぜ!まずは俺のを見てよ〜」
凄い見てみてオーラ出してくるんだ。さすがだなサク。でもさ…

「えっと、サクのは…それって犬?それともクマ?」
「失礼だな、見たら分かるだろ犬だよ」
「ぷーーっ、削りすぎて耳が小さいんじゃ?」
「なんだよ、もういいよ。俺にとっては可愛いかわいいワンコ以外ないもんね〜。はい次は湊ね」

「じゃーん、俺のはこれ!なんだと思う?」
「うーーん、ウサギ?」
「そう、ウサギ!良かった〜分かってもらえて。
耳をグサって削っちゃったからどーなるかと思ったけど、何とか軌道修正できたよ」
「結構可愛いなー。湊,上出来だよ」
「ふふふ、ははは」
「なに喜んでんだよ、はい次は亮太〜」

「俺はこれ・・・」
「!!!何、なんなの、この完成度?これ絶対スズメだよな!」
「わかる?」
「お前、馬鹿にすんなよーっ、すげ〜可愛いよ。それ俺にくんない?」
「今のはすんごい褒め言葉じゃん、ありがと」
サクからお褒めの言葉を頂けた。
「俺もかわいいと思うよ、なあ中村君もそー思うよね?」
「うん、凄いよ。触ってもいい?」
「勿論」
「わぁ」
ころっとして手の中にしっくり馴染む感じがいい。しかもつぶらな瞳が可愛いな。
「響はなにを作ったの?」
「僕はコレだけど」
亮太のスズメを急いでテーブルの上に戻した。

「これってバスケットボール?えっ、まさかの?」
「流石天才は発想が違うなぁ、動物しかダメだと思い込んでたわ」
「亮太がバスケをやってるって聞いて少し検索してみたんだ。結構激しいスポーツなんだってびっくりしたけど。
バレーボールとか野球のボールは何となく描けるんだけどバスケのボールってどんなだったかなぁって思ったのもあるし」

「本当にまさかのバスケットボール。案内に動物の置物って書いてあったから先入観があったかも」
「だよなー」
俺も湊もサクも同じ意見!
でも俺がやってたからって言う理由でバスケのボールを選んでくれたんだったら嬉しいかも。


「次はお昼ご飯の移動になりまーす、出来上がった作品を持って集まって下さーい。中央玄関に集合〜」

「先生が叫んでるぞ。急げー!もうそんな時間だったんだな」
サクの後を皆んなで追いかけた。

お昼は建物の中にあるお店で、好きなものを食べていいと言われたのでカフェみたいな所でカツカレーを注文した。こういう所のカレーって美味しいんだよな。


「その雀ってさっき作ったの?すごく可愛いんだけど〜、写メ撮ってもいいかな?」
横に座っていた女の子たちが話しかけてきた。
「別にいいけど」
「青井君も一緒に入ってよー」
「いや、俺は」
「お願い〜〜、ねっ」
「あぁ,うん、まあ…いいけど」
やっぱり、亮太ってモテるんだなぁ。

「中村君、一緒に写真撮ってくれませんか?」
「えっ、僕?」
「そういうの嫌いかなぁと思ってたんですけど、青井君といる時の中村くんだったら話しかけやすいかなと思って…」
「そうなんだ」
「やっぱりだめですか?」
「いいよ。そのかわりこの置き物のバスケットボールも一緒に入れてくれる?」
「はい!」
「イケメン2人に囲まれて、俺達やりづらいよなー。」
「湊ーーっ、一緒に写メとろ〜」
湯飲みや箸置きを選んだ子たちが、昼ご飯を食べにやってきたみたい。
「オッケー、ごめんね〜サク君。僕にもお呼びがかかっちゃったから行くね〜」
「なんだよーっ、俺も一緒にいれろよー」
「うわぁ、やめろよお」

「相変わらずだよなあの2人。なぁ響、俺と2人でも写メ撮ろうよ」
「いいけど、女の子達と写メ撮るとか…なんか妬けるな」
「それは俺のセリフだろう」
「人を好きになるってなんか厄介だよね。亮太は僕だけにしとけばいいのに・・」
「お前も俺だけにしとけよ」
「ははは」
「じゃあ、撮るよ〜、はいチーズ」

カシャッ

「いい写真撮れたんじゃ無い?」
「本当だ、でも顔が近いよー」
「あのさ、響、俺のスズメと響のバスケットボール交換しない?」
「えっ、いいの?あんなに可愛いスズメなのに」
「うん、俺のスズメは響に持っていてもらいたいし、響のバスケットボールは、俺が持っていたいんだよね」
「うん、ありがとう。じゃあ遠慮なく交換して貰おうかな。毎日スズメに挨拶するよ」
「なんだよ〜スズメじゃなくて、俺に挨拶してくれよ」
亮太は俺のモノトーンの世界に色を落としてくれる。これが好きって言うやつなのかな?

でも一つ気になる事があるんだよな。亮太があまりの角材で小さなヒヨコを作ってたの。
誰に渡すつもりなんだろう??
好きな人の事は何でも知りたくなってしまう。
コレってワガママなのかな?

「皆さんもう帰る時間になりますよ。全員バスの前に集まってくださ〜い」

あっ、急いで行かないと。
「サク、湊、バスに置いてかれちゃうよ。急いで行くぞー。じゃあな〜響」
「うわっ,待って〜」
こうして、俺達の郊外学習は終わりを迎えた。


帰りまでの1時間半クラスの子のほとんどが眠りこけていた。バスの運転手さんは本当に凄いと思う。
学校に着くと、和菓子チームはおいしそうな和菓子をお土産としてもらっていて、みんなから羨ましがられていた。
俺もちょっといいなと思ったんだけど、やっぱり俺の作ったスズメを響にあげられて満足している。響の作ったバスケットボールも味があってすごくいい。


こうして俺の勉強机の前には、響が作ったバスケットボールが置かれた。
なんかこれを見てると元気が出るんだよな。
響もそうだといいんだけど。