ー 土曜日のAM10時 ー
「あっ、響、おはよう」
「おはよう、待った?」
「ううん、そんなに待ってない」
本当はうそ、響は時間にしっかりしてそうだからちょい早目に家を出たら、思った以上に早くついてしまって。10分くらいは待ってたかも(笑
私服姿・・始めて見たな…。
響は制服姿もカッコイイ。背が高いのもあるけど、背筋が伸びていて歩き方が落ち着いてる。
ネクタイを少し緩めに結ぶのもなんか着こなしてるって感じがする。
今日の私服は
Tシャツの上に軽めのカーディガンを羽織って足元はスニーカー。俺もカーディガンにして良かったかも。
「あれ?響、メガネは?今日メガネして無くない?」
「うん、コンタクトしてみた。メガネは疲れるんだよね
「メガネもメガネ無しもどっちもカッコイイけどな」
「そうかな…?」
「そうだ、カフェで何飲む?」
「じゃあ、ホットのカフェラテで」
「俺も同じの考えてた」
「すいまさん、takeoutでカフェラテ2つホットでお願いします」
俺達はカップをもって近くの公園まで移動して来た。
外で勉強するのってなんか新鮮だなぁ。
家だとダラダラしがち
しかも響が先生してくれるんだからしっかりやらないと。
「ヒビキ」
「ヒビキ、ねぇ、聞いてる?」
「あっ、うん?」
「やっぱり、響って教えるの上手いよな。色々質問して申し訳ないけど良く分かるよ」
「そうかな…亮太っていつも一生懸命だよな。
僕も見習わないと」
亮太が机の上で考えながら髪をかきあげてる『手』についつい見とれてしまった。
なんでも出来て当たり前、努力なんて無縁だと思っていたけど、今、目の前で真剣に悩んで頑張っている亮太を見ているとその姿さえ美しいと感じてしまう。
「なんかさぁ、俺こうやって外で誰かと勉強したのって初めてかも」
「えっ、僕も初めてだよ」
「本当に?響の初めてに俺がなったって事?なんか嬉しいなぁ」
「そう…なの?あっ、ドリンク、ご馳走様」
「ううん、ここのカフェラテ美味しいね、また来ようよ」
「うん」
次があるって思うとなんでこんなに嬉しく感じるんだろう。
「もうそろそろお昼だね」
「もうそんな時間?時間が経つのはや!」
「あっ、そうだ、良かったら次にこの本読んでみる?
今度は短編集にしてみたよ。これなら勉強の合間に読めると思う」
「うわぁ、マジで?ありがとう。借りるね」
本を渡そうとした時、僕の指先に亮太の指が触れた。
「あっ、あぁ,あの、これっていつ返せばいい?」
何故か亮太が慌てている。
「いつでもいいよ。もう読んじゃったし」
「う、うん」
「なんか人、増えてきたなー」
「そうだね、場所移動しようか。どっかでご飯食べて、その後ちょっと図書館に寄らない?」
「そうしようか、あっ、その前にゴミ捨てに行こうよ。さっきのカフェの前にゴミ箱あったよな」
「そうだね」
僕と亮太はカフェに向かって歩き出した。
その時、せり出した木が気になってなんとなくそっちに顔をむけた。
あれ?こんな所に川なんて流れてたっけ?
そうかここって橋になってたんだ。
「下に川が流れてるよ。水面が光に反射してキレイだね」
「おい、おい、いきなり方向転換とかって〜。でもここって橋になってたんだ。今迄知らなかったかも」
「ごめん、ごめん、キレイだなあって思ってさ」
「へぇーこう言うの好きなんだ」
「うん、いつまでも見てられるよ」
「また響の意外な一面を知れたかも」
「そう?」
その時向い風が吹いて、僕達の間を通り抜けた。
「うわっ、寒ーーっつ」
亮太が横でかじかんだ様に顔をしかめた。
「寒いの?」
「えっ?」
「ほら、こっち」
亮太の肩を抱いてこっちに引き寄せた。
理由なんてない、ただそうしたかっただけ。
「お前っ、なんでそんなに俺のことドキドキさせんだよ」
「ドキドキしてんの?男の僕で悪かったかな?」
「いや、お前だからドキドキしてるんだろ」
「僕だから?」
「いや、なんて言うか〜自然と目で追っちゃうのは響しかいないって事だよ」
「そうなんだ」
「じゃあ、こんな事したらもっとドキドキしたりして」
「えっ?」
キスするかのように見せかけて、頬と頬を重ねてみた。
「お前ーーーっ!!」
あはははは
亮太の顔が熱くほてっているのが分かる。
本当の事を言うとキスしそうになった。
いや、キスしたかった。
でもギリギリでなんとか避けれた。
もしキスなんてしたら、亮太への想いが溢れてしまう。
これ以上亮太が僕にとって大切な存在にならないように気持ちに蓋をしなければいけない。
「好きにならないようにしているのに、逆に無理ってなんなんだろうね?」
「なにって?」
「なんでも無い!これで体あたたまったよね」
「まぁ、あったまったけど、変な汗かいたわ」
「はは、そうかぁ〜じゃあそろそろ行こうか」
思わず手から落としたカップを拾い上げた。
ゴミを捨てに行かないとなぁ〜。
「図書館に寄ったら結構良い時間になっちゃたな」
「なんかあっという間だったかもね」
「またメールするよ」
「うん、僕もするよ」
図書館を出たらすでに夕方だった。響とはここで別れて家に帰った。
夕飯を食べてからお風に入って濡れた髪を乾かしながら鏡を見たら〜急に恥ずかしくなってきた。
俺と響のほっぺた…合わさったんだよな。
そんな状況、今までにあったか?
思い出す限り、そんなシチュエーションに遭遇した事は1度たりともない。
ヒビキは俺の事どう思ってるんだろう?
あんな事するんだから嫌いではないよな?
「ああぁぁぁ〜〜〜恥ずかしい!」
風呂前の脱衣所で大声で叫んでしまった。
ドライヤーの音でかき消されたと思ってたのに
「うるさーーーーーい!!」
リビングの方からヤジが飛んできた。
「えっ、聞こえてた?」
俺は慌てて自分の部屋に駆け込んだ。
「もうーーーっ、調子狂うわ」
やっぱり響のことが好きになってしまったんだと思う。
なんとなく椅子に座って机の方に振り向いた。
「あっ、シュウ」
勉強机の上に置かれたメモ帳を見て思い出した。
やっぱり連絡しないとダメだよな。
せっかく声かけてくれたんだし。
ポチポチポチ
【シュウ、俺、亮太。久しぶり】
なんだか妙に緊張するな。もうこれでいいや、
送ってしまえ!
俺の緊張とは裏腹に返信がすぐに来た。
【良かった!連絡来なかったらどうしようかと思ってたんです。】
俺達が出会ったのは中学生の時だったから、スマホなんて持ってなかったしな。
会わなくなったらそれで終わりだったんだよなぁ。
【亮太さん、この前会った時に着てたあの制服、あれって頭が良くて有名な月見ヶ丘高校の制服ですよね?亮太さんってそこに通ってるんですか?】
【あぁ、俺はそこまで頭良くないけどな(笑】
【さすが僕の憧れの先輩だなって。
あのー電話してもいいですか?よければ電話番号教えて下さい】
【そうだな。番号は070・・・・】
プルルルル プルルルル
「わっ、びっくりした」
すぐに電話がかかってきた。
「もしもし」
「亮太さんですか?すいません、電話しちゃいました。色々話したい事があって」
「シュウ、亮太さんなんて言わなくていいぞ。前みたいに亮太君でさ」
「あーっ、じゃあ、遠慮なく…亮太君、あのぉ、ずっと亮太くんと話がしたかったって言うか、元気そうでよかったです」
「あぁ,俺も久しぶりに会えて嬉しかったよ。
シュウは何処の高校に行ってるの?俺、制服とか疎いからさぁ。見てもよく分かんないんだよなぁ。」
「あーっ,そこらへんの普通の高校…です。亮太君の高校の足元にも及ばないから」
「謙遜すんなよ」
「亮太君、あのぉーー、もうバスケってやってないって本当ですか?」
「本当だよ。たまに遊ぶ程度ではやるんだけどさぁ」
「そうですか…」
「シュウ、ちゃんと聞かなきゃって思ってたんだけどお前、喧嘩してバスケやめたって言うのあれ本当か?俺のためにやったのか?」
「噂話って早いですよね〜。もし亮太君の耳に入ってるんなら、僕の口から本当のことを言いたかったから」
「本当の事?」
「亮太君にわざと怪我させた奴のコト。僕、偶然話を聞いてしまってどうしても我慢ができなかった。お前はバスケを続けてるのになんで亮太君が辞めなきゃならないんだって。気がついたら殴りかかってた」
「シュウ、気づいてやれなくてごめん。
でもお前って俺の事になるとすぐムキになるんだよな。
前からそうだっただろう。わざと俺に体当たりしてきた相手チームに抗議しに行ったりさぁ」
「それは亮太君の事を尊敬してるからで〜。
亮太君、今度会えないかなあ」
「ダメだ」
「えっ!?なんで」
「さっき言っただろ、お前は俺の事になるとすぐムキになるんだから。お前に迷惑はかけたく無いんだよ。だから暫くは会わない。
こうして電話したりメールしてたらいいだろう」
「なんでだよ〜。僕は亮太君に会いたい!」
「お前に好きな人でも出来て俺の事なんて見向きもしなくなったら会ってもいいよ」
「はあー?何それ?」
「あっ、自惚れてた?ははは」
「はははじゃないよー」
「お前風呂は入ったのか?」
「まだだけど」
「早く入って寝ろよ。明日の朝つらくなるぞ、じゃあな」
「亮太君、まって…」
プーーーッ、プーーーッ、プーーーッ
あーあ、切れちゃった。もっと亮太君と話してたかったなぁ。
でも久しぶりにこんなに話せた。
亮太君は僕の憧れの人なんだ。亮太君にまた会いたいな。
もし会ってくれないんなら・・・。
最悪あの手を使うしかないのかなぁ?


