君だけがパーフェクト


「あーーっ、思わず亮太の手にキスしちゃった(恥)
どうかしてるよな」

あの時の亮太の寝顔も可愛いかったなぁ。まつ毛が長くて、見てたらたまらなくなって…。

なんなんだろう、この気持ち?
僕は亮太の事が好きなのか?

人を好きになることには抵抗がある。
何でも要領よく出来る事が当たり前の世界で生きてきた。
それが当然だと思っていた。
でも人を好きになるのはそれとは違う。
大切になればなるほど、失う事が怖く感じる。
少しずつ、少しずつ積み重ねてきた好きが愛に変わったとき『その人を失ってしまったら』と考えるとどうしても踏み込めない。

別に女性に興味がないと言うわけではない。

僕は、小さい頃から綺麗なものや美しい物を見るのが大好きだった。
例えば雨上がりの虹とか、渋いところで言うと碁石の石とか(笑
碁石に関しては置く時にパチンっていう音にも美しさを感じてしまう。

亮太の絵を見たとき、それに近い美しさを感じた。

でも、それはただの入り口に過ぎなかった。
亮太自身の美しさに、僕は息を飲んだ。
ふわふわのなびく髪、優しい茶色い瞳。
そしてきれいな手。
あの手に触れてみたい。
亮太自身の輝きに僕は心を奪われてしまった。


でも距離が近くなればなるほど、その思いにブレーキをかけてしまう。


それはきっと僕の子供の頃のトラウマに関係しているんだ。

きれいな亮太に恋をして、もしも彼を失くしてしまったら・・・。
でも、見ずにはいられない。
亮太はキラキラ輝いていて美しいんだ。
もう少しだけ亮太の事が知りたい。


ー 次の日 ー


「おーい、亮太、お客さんだそ」
「お客さん?」
「4組の中村君」
「あぁ、響の事?」
「そこで待ってるよ」
目をやると、後ろの扉のところに響が立っていた。
「よっ、響、どうした?6組に来るなんて珍しいじゃん」
「さっきの数学の授業の時に本を渡し損ねたから。とりあえず僕のお勧めの本を2冊持ってきたんだけど、よかったらこれ読んでみてよ」
「うわぁ、いいの?わざわざありがとう」
「今日は僕のオススメを持ってきたけど、亮太がこんな感じの本が読みたいっていうのがあったら教えてよ。次はそれを持ってくるから」
「あっ!じゃあ連絡先教えて。アドレス交換しようよ」
「そっか、まだ交換してなかったね」

ピコン

「よし、これで登録出来た〜」
「今日は美術室行くの?」
「あぁ、多分今日で描き上がると思うから行くつもり〜。
そー言えば響、俺の絵が見たいって言ってたよね?良かったら今日来る」
「うん、いいの?見られてると気が散らない?」
「もうほぼほぼ終わってるから大丈夫だよ。じゃあ放課後な」
「あぁ、また後で」

平静を装ってはみたけど、内心ドキドキした。
俺、よそよそしくなかったよね?
女の子に告白されるのは正直慣れてるんだけどなあ。
なんで響だとダメなんだ?

とりあえず放課後2人で話す時間が出来た〜。


ガラガラ

「亮太?」
「あっ、響、、もう描き上がるよ」
「うわぁ、本当に綺麗だね」
「そーか?」
「これ描くのにすごく時間かかったんじゃないの?
僕は絵の事はよく分からないけど、違う色が重なって一つの物になってるって言うか、積み上げてたどり着いたって感じがするよ」
「なんかコメントも優等生だな」
「なんだよ、真剣に思ったこと言ってんだから」
「悪い、悪い。ありがと。」
「そういえばさ〜この前の昼休み、体育館でバスケしてたでしょう。たまたま見かけたんだけど、女の子が沢山応援してた」
「えっ、見られてた?」
「うん、なんで今は絵なの?もうバスケはやってないの?」
「あーーっ、バスケね。
俺さぁ、小学校から中学までの5年間ずっとバスケやってたんだよね。
今でもバスケは大好きだよ。
でも、高校では1人で活動する部活に入ろうって決めてたんだ。
絵を描くのももともと好きだったし」
「そうなんだ」
「なに?誰かから何か聞いたの?」
「いや、そう言うわけじゃ無いんだけど」
「ふっ、その言い方からすると何か聞いたんだろう。
いいよ、響になら本当の事を教えても。
響には知っておいて貰いたいかも」

「何があったの?」

「俺さ、中学の時に最後の試合でレギュラーに選ばれたんだよね。
運動神経はまぁ普通だからさぁ、俺なりに毎日練習してた訳。
河原でドリブルの練習したり、シュートの練習したり。
こういう時にセンスの良いヤツって、勘でなんでも出来ちゃうもんなんだよ。天才肌っていうの?
でも、俺にはそんなのないからさ。バスケが好きだったし、練習するのは苦じゃなかったから毎日してた。
そうするとさ、やっぱ上手くなるもんなんだよ。
練習は裏切らないっていうのかな?
で、大切な試合の前に皆んなで練習試合をしようって事になったんだけど、その練習試合中に仲間に押されて転んで、腕の骨を折ちゃってさ。
1ヵ月間ギブス生活したんだよな。
もちろん凄く悲しかったよ。最後の試合だったから出たかったし。
でも、俺に怪我させた友達がすごく謝ってきて、いつも一緒にいてくれたから『あぁ責任を感じてるんだなぁ』と思って『大丈夫だよ、気にしなくても』って言ったんだ。

でもさぁ、たまたま部室の前でそいつが他の友達と喋ってるとこを聞いちゃったんだよ。



「「お前ちょっとやり過ぎだったんじゃないの?
さすがに骨が折れるってやばいでしょう」」
「俺だってまさか骨が折れるなんて思ってもみなかったよ。
ちょっとひねる程度だと思ってて」
「「で、ずっとこのこと黙ってるつもりなの?」」
「今さら言えないよ。それに、
俺だって最後の試合に出たかったんだよ。亮太が腕をちょっと怪我してくれて、俺が代わりに試合に出れたらいいなぁって」
「「でもなんで亮太だった訳?」」
「目障りだったんだよ!一生懸命努力してますみたいな姿がさっ!
女子から人気があって、頭も良くて、その上レギュラーとかって目障りのなんでもないだろ」

俺、何も言えなくてその場からたち去ったんだけど、俺の側にずっといてくれたのって気づかれないか見張ってたのかなって思って。
それからなんか本気でバスケやるのが怖くなってさぁ、時々体育館で友達と遊ぶ位がちょうどいいのかなって。

なあー、こんな話聞いてどう思う?引いた?
俺の事、思ってたのと違うって…。」

「全然引いてない。今すぐそいつの所に行ってぶん殴ってやりたい!!」
「響が言う?そんな事を??ははは、マジで俺の心、救われたんだけど〜。
今まで誰にも言ったこと無かったけど聞いてくれてありがとな」
また、そんな顔して笑って。
僕の前では無理して笑わなくてもいいのに。
やっぱり、そんな亮太はとても美しいんだ。
どんな亮太も見逃したくない。
僕は自分の気持ちを抑える事が出来るんだろうか。
このまま一緒にいたら、もっともっと好きになってしまう。
ダメだとわかっているのに・・。
大切な物ほど僕の前から消えてしまうから。

「亮太…」
「うん?」
気がついたら、腕を引き寄せて抱きしめていた。
「えっ、えっ?」
「このまま少しだけ…こうしていてもいい」
「・あ・・うん、でも、少しだけってどれくらい?」
「僕が満足するまでかな」
「それ答えになってないけど」
一旦亮太の体を離して、顔を覗いてみた。
「やっぱりまだ足りないかも」
もう一度引き寄せて力一杯抱きしめた。
「俺、もういっぱいいっぱいなんだけど」

僕がなぜ抱きしめているのか?亮太は僕の気持ちに気づいてしまっただろうか?

いや気づいて欲しいのかも。

僕は亮太のことがもっと知りたいと思った。