恋愛って難しい。
自分にとって大切な存在になればなるほど、失ったときの喪失感が大きい。
だからそうならないように、自分自身で心にブレーキをかけてきた。
大切なものほど代わりがきかないんだ。
でも、亮太が僕の心のブレーキを外してくれた。なのに、今また僕は心にブレーキをかけようとしている。
と言うより、僕以上に亮太の事を好きな人が現れたかもしれない恐怖と言った方が近いかもしれない。
大切なものはできるだけ作らないように、無駄を省いて要領よく生きるのが『僕』だと思っていた。
今まではそれが正解だと思っていたけど、亮太のおかげで人を好きになってもいいんだって自信がついた。
でもシュウ君が現れてから、あのひたむきさに不安になる日々が続いている。
もしかしてまた、僕の大切なものを一瞬で奪い去ってしまうんじゃないかって。
1人で不安になって、落ち込んで亮太に気持ちを打ち明ける事も出来ない。
僕が一番亮太の事を好きだって、亮太の側にいるのは僕なんだって、そんな自信があったけどシュウ君のあのひたむきな態度や気持ちを目の当たりにしたら、やっぱり不安になってしまう。
亮太のシュウ君への気持ちと、僕への気持ちは、全く別物…亮太の言葉を信じたいのに疑ってしまう僕は弱虫だと思う。
「ねえ、亮太にとってシュウ君ってどんな存在なの?」
「シュウ?うーん、可愛い弟かな。それ以上でもそれ以下でもないけど…なんで?」
「いや、何となく…」
「アイツになんか言われたたの?」
「えっ?別に」
「あんまり深く考えなくてもいいよ。シュウは俺の事になるとムキになるけど、それは俺の事をアニキみたいに思ってるだけだから。子供の頃にお父さんを亡くして、お母さんと2人で生活してたから、中学でずっと一緒にいた俺の事を家族みたいに思ってるんじゃないかなぁ」
「そうか…な」
「俺にとって響は特別だから。一緒にいると落ち着くし、響が他の人を見るのもなんか嫌って言うか…。
俺の事だけを見てて欲しいなって思う。そう思うのは響にだけなんだ。だから心配なんてしなくていいよ」
「うん、ありがとう」
いつも真剣に自分の気持ちを話してくれる亮太。
このままの僕じゃダメだと思った。
******
「響君、話って何ですか?」
「シュウ君、呼び出してごめん。僕の話を真剣に聞いて欲しいんだけど…あの……。
本当の事を言うと僕はシュウ君に焼きもちを焼いてた…んだ」
「焼きもち?」
「うん、亮太とシュウ君が中学生の頃の・・僕の知らない間の話をしていると何だかつまらなかったり、僕にだけだと思ってた優しさがシュウ君にも向けられてるんだなぁって思って落ち込んだりとか」
「そう…なのかな?」
「亮太を好きな自信はあるのに2人の関係の重さには勝てない気がしてた。僕があそこに入るのは無理だって。僕が知らない時間が沢山あるんだろうなって」
「響君…?」
「ここからは僕の本心を話すよ。本に書いてある様なかっこいい言い方とかその,心に届くとか…?恋愛経験も無いからなんて説明したらいいのか分からないし、言えない…けど、僕の思いを僕の言葉で話したいと思ってる。
僕は絶対に亮太の事を諦める気はない!
僕は亮太が好きなんだ。亮太の隣は僕がいい。これからもずっとその気持ちは変わらない。ちょっとの不安や疑いで諦めれるほど簡単なもんじゃないって気がついたんだ。嫌になるくらいしんどいのに、好きが止まらないんだ。亮太じゃなきゃ、僕の心は埋まらない。
だから、その、シュウ君には負けられない」
「そうかぁ〜、やっと響君の本心が聞けたんだ〜。でも遅すぎるよ。もっと早く聞かせてくれたらよかったのに。
響君が本当の事を言ってくれなかったら、僕は安心して引っ越せなかったよ」
「引っ越し?何のこと?」
「僕、今度仙台に引っ越すんだ。
お母さんと2人でずっとこっちで暮らしてきたけど、おじいちゃんの体の調子が良くなくて。お母さんの実家で暮らすことになったんだ。
お母さんは自分だけおじいちゃんの世話をしに行くから、僕にはこっちにいてもいいって言ってくれたけど、やっぱりお母さんの事も心配だし。
亮太君の事を本当に好きでいてくれて、見守ってくれるのが響さんだったら安心してお母さんと仙台に行けるのかなって思ってたけど、響君って全然自分の気持ちを言わないから。
やっぱり、僕が認めた人じゃなき嫌だなあって思ってた。
もし簡単に亮太君の事を諦めてしまう位の好きなら、僕はこっちに残ろうかな〜とも思ってたんだ」
「シュウ君」
「でも、これだけは忘れないで欲しいな。
僕は亮太君の事を諦めた訳じゃないから。
また、大学生になったらこっちに戻ってくるつもり、その時までの僕の代わりだから(笑
「シュウ君はいつ引っ越しするの?
「2週間後・・かな」
「亮太はその事知ってるの?」
「ううん、まだ話してないよ。だって響君の気持ちがその程度なら安心して引越しなんて出来ないって思ってたから。
でもちゃんと亮太君には話すから心配しないで」
「そっか」
「お見送りには来なくていいよ〜。どうせまたすぐに会えるんだから(笑」
「シュウ君は強いね」
「そうかなぁ。亮太君の事を好きって言う気持ちだけだよ。
亮太君が僕の事を弟以上には思ってくれなかったっていうのはあるけどね。
やっぱり人を好きになるって思い通りにはいかないもんだよね。僕がどんなに好きでも、亮太君は響君の事しか見てないんだから。
本当に響君って目障りだよなぁ〜。
だけど、今は響君で良かったって思ってるし響君以外の人じゃ嫌だなぁっとも思ってる。
僕が言いたいのは、これだけ」
2週間後、シュウ君とお母さんは仙台に引っ越して行った。
亮太は駅まで見送りに行ったみたい。
大学生になったら戻ってくるからその時はまた会おうって言われたみたいだけど。
シュウ君が戻ってきたとしても亮太の隣にいるのは僕だけどね。
僕はまた1つ経験と言う苦い薬を飲んだ気がした。
「今日はなんだか寒いからくっついてたいなぁ」
「うーん、これから暖かいものでも飲みに行く?安心したら急に寒さが…」
「あーっ、抹茶ラテとか飲みたいかも」
「いいねー」
ワイワイ、ガヤガヤ
「なぁ、聞いた?亮太の絵、佳作だったって」
「あーっ、聞いたよぉ。すげーよな、全国だろ?」
「今度表彰されるんじゃない?」
「あいつ、何にも言わないからさあ」
「そう言えば中村君、今回のテストで学年トップだったらしいよ」
「知ってるーっ、俺の親友が2人も有名人なんてもう自慢でしかないよなぁ」
「お前いつ中村君と親友になったんだよ。サクはそーいう所あるよなぁ」
「何がだよーっ、亮太の友達は俺の友達でもある訳だし」
「それをいうなら俺の親友でもある訳だ」
「湊はダメだよ」
「なんでだよー」
「でもあの2人、本当に仲がいいよなぁ」
「そーだね。あそこだけ華があるよね」
「花?バラとかの?」
「違うよーっ,華やかのハナだよ。あそこだけ切り取ったみたいに目に飛び込んでくるんだよ」
「なんて言うか〜お似合い?」
「まぁ、そんなところかな、3年生で同じクラスになれたら良かったのになぁ。中村君だけ隣のクラスって」
「ゆうても、休み時間のたびに一緒にいるじゃん、あの2人。今も一緒にいるしさぁ」
「でもあんだけ一緒にいてよく話が尽きないよなあ」
「そうだよー、俺なんて会話がもたないよ」
「なんて言うか、ただ一緒に居るだけでいいみたいな感じなのかな?」
「俺と湊みたいな?」
「気持ちわるっ!!」
「なんだよ、それ失礼だろ。俺だってモテるんだよ」
「はいはい、なぁ、そろそろあいつらの邪魔しにかない?明日からお祭りだろ?りんご飴とかフランクフルトとか食べたいかも。誘ってみようよ」
「あっ、そうだな、明日からお祭りかぁ。夜は山車とかも出るしな。行けるか聞いてみようぜ」
「亮太〜〜、中村くーーん、明日4人で祭り行かない?」
「祭り?いいよ。いま丁度ヒビキとその話をしてたんだ。
なぁ、響」
「そうだね、亮太」
「俺、焼きそば食おうかな…その前に可愛い子に声かけられたりしたどうしよう〜」
「サクはまたそんな事ばっかり言って〜相手にされないからやめとけよ」
「なんだよ湊だって本当はされたいくせにー」
「まあまあ、2人とも落ち着いて…。でもさ、お祭りにビー玉とかって売ってるのかなぁ?」
「ビー玉??うーん、どうたろ?ラムネならあるんじゃない?」
「ラムネの中のビー玉??」
「はははは 取り出せないだろー」
「後で2人だけでもこっそり行こうよ」
亮太に耳打ちしてみた。
「そーだね」
ほら、またそんな笑顔で僕を見て。
あれ?亮太の瞳ってビー玉みたい。違う…?か。
今度は場所を変えてそこにある。
なんてキレイ・・・。
やっぱり君は美しい
僕にとって、君だけが特別なんだ。いや、パーフェクトなのかも。
形を変えて、僕たちのスタイルにしていこう。
ー 完 ー


