愛って呼んでいい?

 それから。
 おれは本当に、二年生のフロアへ行くのをやめた。

 自分の教室で、平野たちに混ざってお弁当を食べる。
 「早川が教室いるとか珍しいな!」なんて騒がれたけど、適当に笑ってごまかした。

 普通の昼休み。……のはずなのに。
 おれの頭の中は一秒も休んでくれない。

 愛先輩、今日はお昼ちゃんと食べたかな。
 誰といるんだろう。
 「やっと静かになった」って、今ごろホッとしてるのかな。

 愛先輩は、おれの「好き」は勘違いだって、最初の委員会のときに言った。
 優しくされたから、ちょっと舞い上がってるだけだって。

 ……本当に、そうなのかな。

 だとしたら。
 なんで会えないだけで、こんなに世界から色が消えちゃうんだろう。

 弁当の味が、よくわからない。
 授業の内容も、右から左に抜けていく。

 その代わりに浮かぶのは、
 大きい手の温度とか、困ったように笑う顔とか、少しだけ赤くなった耳とか。

 そういう、どうでもよくない記憶ばっかりだった。

 こんなに、愛先輩のことばっかり。
 頭のてっぺんから足の先まで「明宮愛」で埋め尽くされてる。

 これのどこが、勘違いなんだよ。

 昼休み、会いに行かなかったのに。
 昨日よりも、一昨日よりも。
 おれの脳みそは、愛先輩のことでパンパンに膨れ上がってた。