愛って呼んでいい?

 鍵と日誌を職員室に返して、校門を出る。
 繋いだ手から伝わってくる熱が、さっきよりずっと濃い。

 パーティー会場は、いつもの公園のベンチ。
 おれがコンビニを三軒はしごして買い集めた、愛への「献上品」を広げる。

 「これ、ほんとにありがとな」

 「愛の好きなもの、いっぱい集めたから」

 愛の嬉しそうな顔が見たくて。
 おれも、愛と同じになりたくて。
 大人ぶって手に取ったのは、ビターチョコ。

 「にが……。これ砂場の味する」

 あまりの苦さに顔が歪む。

 「砂場食ったことあんのかよ」

 大爆笑する愛。ひどい。そんなに笑わなくてもいいのに。

 「大人の味、お前にはまだ早かったな」

 「ちょっと待ってろ」って愛が笑って、自販機まで走っていく。

 戻ってきたその手には、おれの大好きな、鮮やかな緑色のメロンソーダ。

 「はい。お口直し」

 プシュッ。
 愛が蓋を開けてくれて、プルタブが開く、小気味いい音がする。

 「ありがと」

 冷たい炭酸が、砂場の味を洗い流してくれる。

 「りゅうくんは無理して俺に合わせなくていいよ。俺がお前に合わせるから。な?」

 「でも、おれも愛と同じがいいから……」

 意地を張ってみる。
 隣で、愛がふっと笑った。

 「同じなのは味覚じゃなくて、気持ちだけにして」

 さらっと流し読みできないくらいかっこいいことを言うのは、この人の悪い癖だ。
 おれの顔は、一瞬で真っ赤になった。
 背伸びも意地も、一瞬で台無し。

 「……やっぱりずるい。愛はおれを甘やかしすぎ」

 「りゅうくんにだけだよ。自覚しろ」

 そう言って、愛がおれの頭を撫でる。
 少し乱暴。なのに、壊れ物を扱うみたいに優しい、大好きな愛の触り方。

 「あ、愛、髪ぐちゃぐちゃになる……」

 「いいんだよ、俺が直してやるから」

 どこまでも過保護。
 おれを溶かすことしか考えてない。
 
 やっぱりおれ、愛には一生勝てそうにないや。