ソファに座り、
天井を見上げボーっとしていると聞き覚えのない電子音が、
ピロッ、ピロッ、と2回鳴った。
テーブルの上に置いた端末に視線を落とすと、
画面に『調停のお知らせ』と記載されたメッセージ。
「ついに、日程が決まったみたいだね。」
((──うん。そうみたいだね。))
端末を手元に引き寄せ、
指でタップしメッセージを開く。
「えっと、なるほど~......3日後かぁ......」
((──うん。当日、最後の調停だから、
メインイベントって位置づけみたいだね。))
「サバイバル・レジスタンスね、あっはは」
((──うん。))
「管理官も気合入ってるのかな?」
((──調停を盛り上げたいって言ってたから、
今までとは異なる演出を考えている可能性が高いね。))
「入場の音楽とか?照明が派手になったり?」
((──うん。一般的な調停とは一線を画すと予測できるよ。))
「確かに、『あり得ないコトガ起きるト、面白いト思いマセンカ。』
って管理官も言ってたしね、ふふっ」
((──......))
「あれっ、似てなかった?ふふ」
((──うん。似てなかった。))
「えっ~、特徴は捉えてると思うけどな~、あはは」
((──......))
「ごめん、似てないね。ふふっ」
((──うん。))
「容赦ないなゼニスのダメ出し。」
((──似てないけれど、
遥がリラックスしている事が伝わってくるから、
とても良い傾向なのは間違いないよ。))
「うん、プレッシャーはないかな。」
端末の画面を指でなぞり、
メッセージの内容を確認していく。
「えっと......相手の情報は......」
ソファに深く座り直し、
再度、画面に視線を落とす。
「ねぇ、これって......」
((──うん。ボクシング経験者だね。))
「しかも、男性なのね......」
((──うん。暴行が理由の調停だから、
相手は犯罪区分という事になるね。))
「初戦からハードじゃん......」
((──そうだね。))
「腕力とか違い過ぎない?」
((──身長161cm、体重55㎏、ここから推測するとリーチは約168cm。
細身の男で、アマチュアと仮定すれば階級はバンタム級。
どの程度の経験者か不明だけれど、スピードには気をつける必要があるね。))
「ボクシングの階級とかわかんないけど......
経験者ならスピードには気をつけろってことだね。」
((──うん。パンチのリーチで考えると75~85cm。
対して遥のキックリーチは140~155cm。
距離さえ見誤らなければ、十分に対応可能な相手だよ。))
「わたしの間合いを守りさえすればってことだね。」
((──うん。そうなるね。))
「まさか、経験者で男性とは思わなかったね。」
((──うん。でも、執行担当よりは勝率は高いはず。))
「それはそうだけどさ......管理官もひどいね。ふふっ」
端末をテーブルに戻し、
立ち上がり冷蔵庫の前に行く。
冷蔵庫を開けケーキの箱を手に取り、
ソファに再び腰を下ろす。
ケーキの箱を開け、
ザッハトルテを一口頬張った。
「ゼニスの選んだケーキ美味しいね。」
((──うん。非常に良いものだね。))
「サバイバル・レジスタンス勝ち抜かないとね。」
((──うん。))
翌日からの生活は一変。
朝起きて、コーヒーを飲み、
すぐに1階のトレーニングルームへ向かう。
以前のような軽いウォーミングアップでは終わらない。
一日の大半をトレーニングルームで過ごすようになった。
ゼニスの声と計算だけを頼りに、孤独な特訓を繰り返す。
((──遥。相手の腕がこの位置にあると想定して。
そこから踏み込み、外側にステップ。キックの軌道は、ここだ。))
キューブ形態のゼニスは、
視界の隅から消え空間にポイントを指し示す。
ゼニスが示すポイントを目がけて、
何度も、何度も、右足を振り抜いた。
「ハァ......ハァ......。この、あたり?」
((──うん。今の角度なら、相手のガードをすり抜ける。完璧だよ。))
目に見えない相手を想像し、空を切る蹴り。
USA-DE-PPONのパーカーの袖は、
額の汗をぬぐうたびに湿り、重くなっていく。
食事、睡眠、そして一点を射抜くような集中。
サバイバル・レジスタンスという、
どこか他人事だった言葉が、
滴る汗と共に遥の身体に現実味を帯びて染み込んでいった。
そして、あっという間に当日を迎える。
「やれることはやったよね?」
((──うん。))
いつも通り視界の隅にはキューブ形態のゼニスが、
淡い光を放ちぷかぷかと浮かんでいる。
サバイバル・レジスタンス用の衣装を身に纏い、
リングに向かう通路に力強く立った。
「なんか、前回の時より観客がざわざわしてる感じするね。」
((──うん。大型モニターに、
今までの調停とは異なる表示がされているからだろうね。))
「なるほどね......」
リング上部に設置されている大型モニターには、
『サバイバル・レジスタンス』についての説明が表示されていた。
「相手の表示は、整理番号4401、身長、体重と特技がボクシング......
わたしは、『Haruka』って表示名なんだ。
せっかくだし、カッコいいコードネーム考えてくれたら、
よかったのにね。あっはは」
((──そうだね。))
大型モニターの表示が、
『1R:0.13』『2R:1.14』『3R:0.89』『12R:1.01』『15R:0.11』、
ラウンド数横の赤い数値が切り替わっていた。
「15Rって......長くない?1Rって3分だっけ?5分?」
((──モニターに表示された説明によると、
1Rは3分、ラウンド間のインターバルは1分、
基本は決着がつくまでとなっているよ。))
「わたしの体力が持つわけないじゃん。あはは」
((──そうだね。スタミナが尽きる前に勝てるようにサポートするね。))
「うん、頑張って3Rくらいかな?」
((──可能な限り早いラウンドで勝負を賭けよう。))
「OK、2Rまでに終わらせたいね。」
フッと音もなく観客席の照明が落ち、
リングと入場する通路のみが明るく照らされた。
サバイバル・レジスタンスの相手の入場に合わせ、
葬送曲のような静かな音楽が流れる。
音楽に合わせ静かな歩調で、
整理番号4401がリング中央へ向かう。
「入場曲とかあるんだ......でも、静かな音楽で不気味だよね。ふふっ」
((──うん。))
「わたしも、あんな入場曲なのかな?それなら、イヤだな~、あはは」
相手の通路の照明が消え、
赤や青など派手なレーザーに合わせアップテンポの音楽が流れる。
「これ、わたしの入場曲かな?」
((──うん。そうだろうね。))
立っている通路が照らされ、
光に導かれるようにリングへと進む。
リングに入ると、
整理番号4401の男性が鋭い眼光で睨んできた。
((うわぁ、めっちゃ怖いんですけど......))
((──大丈夫。落ち着いていこう。))
レフリーを担当するドローンが、
音もなくリング中央へ飛来する。
ホバリングをしたまま、
下部のカメラを動かし何か確認をしていた。
((赤いライト点滅しながら、旋回して青に変わったら開始だったよね?))
((──うん。))
ドローンは静かにリング上部へと移動し、
旋回をし始める。
((なんか、前回と違ってライト点滅してなくない?))
((──そうだね。))
ドローンがリング上部から、
両者の目線まで降りてくる。
その直後、
ブー、という電子音と共にドローンが再び上に飛び上がった。
((えっ!?))
((──遥、危ない。))
整理番号4401は、
ドローンの動きに合わせ右ストレートを放っていた。
「ぐっ......」
((──大丈夫、遥。))
右ストレートは、的確に鳩尾を捉え、
リングに片膝をついてしまう。
((めっちゃ痛いかも......))
((──データ的には、そこまでダメージは負ってないよ。))
整理番号4401は、追撃はしてこない。
((あぁ......油断した。))
((──うん。間合いを取ろう。))
立ち上がり、整理番号4401をちらっと見ると、
ニヤリと余裕の笑みを浮かべていた。
「ふぅ~......」
少し息を吐き、構えを撮り直す。
((もう、油断しないよ。))
((──うん。ポイント表示に切り替えるね。))
((うん、お願い。))
ゼニスはキューブ形態から、ポイント表示へと切り替わる。
整理番号4401の左太ももにポイント表示がされた。
表示に合わせて、右脚を振り抜く。
バシッ、という乾いた音と共に右脚に確かな感触があった。
((これは、効いたかな?))
((──少し浅かったかも。ダメージ率13%と推測。))
((思ったほどじゃないね。))
整理番号4401は、
軽快なステップを踏み間合いを詰めてくる。
前蹴りで牽制をしながら、
整理番号4401との距離を保つ。
整理番号4401が左足を踏み込んだ瞬間、
ゼニスのポイントが4401の左太ももに表示された。
その一瞬を見逃さず、
再度、右脚を太もも目掛けて振り抜く。
整理番号4401が「ぐぁっ」と声を出し、
そのまま動きが止まった。
((これは、チャンス。))
((──畳みかけるよ、遥。))
((OK。))
ゼニスのポイントが、
左太もも、右脛、左脇腹、と目まぐるしく表示を変える。
それに合わせて、
的確にポイントを蹴り抜く。
整理番号4401は、
ガードを固め耐え続けている。
その時、
ブー、と電子音が響きドローンが両者の間に飛んできた。
((3分経ったのかな?))
((──うん。少し休もう、遥。))
ゼニスは、
いつも通りのキューブ形態に戻ると、
視界の中にぷかぷか浮いている。
コーナーには、
いつの間にか椅子が用意されていた。
椅子に座り、
ゼニスを見つめる。
((ゼニスのポインターいいね。ホント助かる。))
((──うん。少し息を整えよう、遥。))
「すぅ~......はぁ~......すぅ~......はぁ~......」
((──落ち着いてきたみたいだね。))
((うん。大丈夫そう。))
((──相手のダメージ予測は、52%といったところだよ。))
((半分くらいか......))
((──うん。リーチでは遥が有利だから、
この調子で間合いを見誤らないようにしよう。))
((わかった。))
ドローンがリング中央へ、
整理番号4401も椅子から立ち上がり歩き始める。
((いこっか、第2R))
((──うん。))
椅子から立ち上がり、
リング中央へと歩き出す。
ゼニスは視界から消え、
ポインターへの準備をした。
天井を見上げボーっとしていると聞き覚えのない電子音が、
ピロッ、ピロッ、と2回鳴った。
テーブルの上に置いた端末に視線を落とすと、
画面に『調停のお知らせ』と記載されたメッセージ。
「ついに、日程が決まったみたいだね。」
((──うん。そうみたいだね。))
端末を手元に引き寄せ、
指でタップしメッセージを開く。
「えっと、なるほど~......3日後かぁ......」
((──うん。当日、最後の調停だから、
メインイベントって位置づけみたいだね。))
「サバイバル・レジスタンスね、あっはは」
((──うん。))
「管理官も気合入ってるのかな?」
((──調停を盛り上げたいって言ってたから、
今までとは異なる演出を考えている可能性が高いね。))
「入場の音楽とか?照明が派手になったり?」
((──うん。一般的な調停とは一線を画すと予測できるよ。))
「確かに、『あり得ないコトガ起きるト、面白いト思いマセンカ。』
って管理官も言ってたしね、ふふっ」
((──......))
「あれっ、似てなかった?ふふ」
((──うん。似てなかった。))
「えっ~、特徴は捉えてると思うけどな~、あはは」
((──......))
「ごめん、似てないね。ふふっ」
((──うん。))
「容赦ないなゼニスのダメ出し。」
((──似てないけれど、
遥がリラックスしている事が伝わってくるから、
とても良い傾向なのは間違いないよ。))
「うん、プレッシャーはないかな。」
端末の画面を指でなぞり、
メッセージの内容を確認していく。
「えっと......相手の情報は......」
ソファに深く座り直し、
再度、画面に視線を落とす。
「ねぇ、これって......」
((──うん。ボクシング経験者だね。))
「しかも、男性なのね......」
((──うん。暴行が理由の調停だから、
相手は犯罪区分という事になるね。))
「初戦からハードじゃん......」
((──そうだね。))
「腕力とか違い過ぎない?」
((──身長161cm、体重55㎏、ここから推測するとリーチは約168cm。
細身の男で、アマチュアと仮定すれば階級はバンタム級。
どの程度の経験者か不明だけれど、スピードには気をつける必要があるね。))
「ボクシングの階級とかわかんないけど......
経験者ならスピードには気をつけろってことだね。」
((──うん。パンチのリーチで考えると75~85cm。
対して遥のキックリーチは140~155cm。
距離さえ見誤らなければ、十分に対応可能な相手だよ。))
「わたしの間合いを守りさえすればってことだね。」
((──うん。そうなるね。))
「まさか、経験者で男性とは思わなかったね。」
((──うん。でも、執行担当よりは勝率は高いはず。))
「それはそうだけどさ......管理官もひどいね。ふふっ」
端末をテーブルに戻し、
立ち上がり冷蔵庫の前に行く。
冷蔵庫を開けケーキの箱を手に取り、
ソファに再び腰を下ろす。
ケーキの箱を開け、
ザッハトルテを一口頬張った。
「ゼニスの選んだケーキ美味しいね。」
((──うん。非常に良いものだね。))
「サバイバル・レジスタンス勝ち抜かないとね。」
((──うん。))
翌日からの生活は一変。
朝起きて、コーヒーを飲み、
すぐに1階のトレーニングルームへ向かう。
以前のような軽いウォーミングアップでは終わらない。
一日の大半をトレーニングルームで過ごすようになった。
ゼニスの声と計算だけを頼りに、孤独な特訓を繰り返す。
((──遥。相手の腕がこの位置にあると想定して。
そこから踏み込み、外側にステップ。キックの軌道は、ここだ。))
キューブ形態のゼニスは、
視界の隅から消え空間にポイントを指し示す。
ゼニスが示すポイントを目がけて、
何度も、何度も、右足を振り抜いた。
「ハァ......ハァ......。この、あたり?」
((──うん。今の角度なら、相手のガードをすり抜ける。完璧だよ。))
目に見えない相手を想像し、空を切る蹴り。
USA-DE-PPONのパーカーの袖は、
額の汗をぬぐうたびに湿り、重くなっていく。
食事、睡眠、そして一点を射抜くような集中。
サバイバル・レジスタンスという、
どこか他人事だった言葉が、
滴る汗と共に遥の身体に現実味を帯びて染み込んでいった。
そして、あっという間に当日を迎える。
「やれることはやったよね?」
((──うん。))
いつも通り視界の隅にはキューブ形態のゼニスが、
淡い光を放ちぷかぷかと浮かんでいる。
サバイバル・レジスタンス用の衣装を身に纏い、
リングに向かう通路に力強く立った。
「なんか、前回の時より観客がざわざわしてる感じするね。」
((──うん。大型モニターに、
今までの調停とは異なる表示がされているからだろうね。))
「なるほどね......」
リング上部に設置されている大型モニターには、
『サバイバル・レジスタンス』についての説明が表示されていた。
「相手の表示は、整理番号4401、身長、体重と特技がボクシング......
わたしは、『Haruka』って表示名なんだ。
せっかくだし、カッコいいコードネーム考えてくれたら、
よかったのにね。あっはは」
((──そうだね。))
大型モニターの表示が、
『1R:0.13』『2R:1.14』『3R:0.89』『12R:1.01』『15R:0.11』、
ラウンド数横の赤い数値が切り替わっていた。
「15Rって......長くない?1Rって3分だっけ?5分?」
((──モニターに表示された説明によると、
1Rは3分、ラウンド間のインターバルは1分、
基本は決着がつくまでとなっているよ。))
「わたしの体力が持つわけないじゃん。あはは」
((──そうだね。スタミナが尽きる前に勝てるようにサポートするね。))
「うん、頑張って3Rくらいかな?」
((──可能な限り早いラウンドで勝負を賭けよう。))
「OK、2Rまでに終わらせたいね。」
フッと音もなく観客席の照明が落ち、
リングと入場する通路のみが明るく照らされた。
サバイバル・レジスタンスの相手の入場に合わせ、
葬送曲のような静かな音楽が流れる。
音楽に合わせ静かな歩調で、
整理番号4401がリング中央へ向かう。
「入場曲とかあるんだ......でも、静かな音楽で不気味だよね。ふふっ」
((──うん。))
「わたしも、あんな入場曲なのかな?それなら、イヤだな~、あはは」
相手の通路の照明が消え、
赤や青など派手なレーザーに合わせアップテンポの音楽が流れる。
「これ、わたしの入場曲かな?」
((──うん。そうだろうね。))
立っている通路が照らされ、
光に導かれるようにリングへと進む。
リングに入ると、
整理番号4401の男性が鋭い眼光で睨んできた。
((うわぁ、めっちゃ怖いんですけど......))
((──大丈夫。落ち着いていこう。))
レフリーを担当するドローンが、
音もなくリング中央へ飛来する。
ホバリングをしたまま、
下部のカメラを動かし何か確認をしていた。
((赤いライト点滅しながら、旋回して青に変わったら開始だったよね?))
((──うん。))
ドローンは静かにリング上部へと移動し、
旋回をし始める。
((なんか、前回と違ってライト点滅してなくない?))
((──そうだね。))
ドローンがリング上部から、
両者の目線まで降りてくる。
その直後、
ブー、という電子音と共にドローンが再び上に飛び上がった。
((えっ!?))
((──遥、危ない。))
整理番号4401は、
ドローンの動きに合わせ右ストレートを放っていた。
「ぐっ......」
((──大丈夫、遥。))
右ストレートは、的確に鳩尾を捉え、
リングに片膝をついてしまう。
((めっちゃ痛いかも......))
((──データ的には、そこまでダメージは負ってないよ。))
整理番号4401は、追撃はしてこない。
((あぁ......油断した。))
((──うん。間合いを取ろう。))
立ち上がり、整理番号4401をちらっと見ると、
ニヤリと余裕の笑みを浮かべていた。
「ふぅ~......」
少し息を吐き、構えを撮り直す。
((もう、油断しないよ。))
((──うん。ポイント表示に切り替えるね。))
((うん、お願い。))
ゼニスはキューブ形態から、ポイント表示へと切り替わる。
整理番号4401の左太ももにポイント表示がされた。
表示に合わせて、右脚を振り抜く。
バシッ、という乾いた音と共に右脚に確かな感触があった。
((これは、効いたかな?))
((──少し浅かったかも。ダメージ率13%と推測。))
((思ったほどじゃないね。))
整理番号4401は、
軽快なステップを踏み間合いを詰めてくる。
前蹴りで牽制をしながら、
整理番号4401との距離を保つ。
整理番号4401が左足を踏み込んだ瞬間、
ゼニスのポイントが4401の左太ももに表示された。
その一瞬を見逃さず、
再度、右脚を太もも目掛けて振り抜く。
整理番号4401が「ぐぁっ」と声を出し、
そのまま動きが止まった。
((これは、チャンス。))
((──畳みかけるよ、遥。))
((OK。))
ゼニスのポイントが、
左太もも、右脛、左脇腹、と目まぐるしく表示を変える。
それに合わせて、
的確にポイントを蹴り抜く。
整理番号4401は、
ガードを固め耐え続けている。
その時、
ブー、と電子音が響きドローンが両者の間に飛んできた。
((3分経ったのかな?))
((──うん。少し休もう、遥。))
ゼニスは、
いつも通りのキューブ形態に戻ると、
視界の中にぷかぷか浮いている。
コーナーには、
いつの間にか椅子が用意されていた。
椅子に座り、
ゼニスを見つめる。
((ゼニスのポインターいいね。ホント助かる。))
((──うん。少し息を整えよう、遥。))
「すぅ~......はぁ~......すぅ~......はぁ~......」
((──落ち着いてきたみたいだね。))
((うん。大丈夫そう。))
((──相手のダメージ予測は、52%といったところだよ。))
((半分くらいか......))
((──うん。リーチでは遥が有利だから、
この調子で間合いを見誤らないようにしよう。))
((わかった。))
ドローンがリング中央へ、
整理番号4401も椅子から立ち上がり歩き始める。
((いこっか、第2R))
((──うん。))
椅子から立ち上がり、
リング中央へと歩き出す。
ゼニスは視界から消え、
ポインターへの準備をした。

