不機嫌な幼なじみと鈍感な僕

そんな縁日の話しで盛り上がりながら星杏ちゃんと、教室の清掃を進める。
清掃を終えて、星杏ちゃんと一緒に下校することになり、玄関先まで行くと、下駄箱の前で寄りかかっている人影を見つけた。

 いつもアルバイトで我先にと帰ってしまう遼人がそこに立っていた。
遼人は二人を見留めると軽く舌打ちをし、背を向けて立ち去ろうとしていた。

「遼人‼」

 星杏ちゃんが遼人の背中を追いかけ、腕を掴んで引き留める。

「ちょっと、あたし達を待ってたんじゃないの?」
「別に……。違う」

 遼人は星杏ちゃんの腕を振りほどくと、後ろにいた旭に一瞬だけ目線を向け、直ぐに目を伏せてしまった。
旭も遼人と目が合ったところで先ほどの遼人との空気を引きずって何を話せばいいか分からない。

そんな二人の空気を察したのか、星杏ちゃんが遼人の手を引きなが
ら旭の前まで来る。と思えば、星杏ちゃんが遼人の背中を押したこ
とで旭の目の前に彼が立った。

「ほら、遼人。旭に謝って‼」
「はぁ?なんで⁉」
「昼休み、喧嘩したんでしょ?原因なんて遼人に決まってんだから謝って仲直りしなさいよ」

「はぁ⁉別に喧嘩したとかじゃねぇし……」

「いいから、旭。困ってたんだから」

 確かに些細なことで遼人と気まずくなってしまったものの、何時
ものことだし、彼の性格も理解していることなので咎める気はない。
けれど星杏ちゃんも彼女なりに旭のことを想っての言動なので強
く言うこともできなかった。

「星杏ちゃん、僕は大丈夫だよ。遼も悪気ないだろうし」
「そう?」
「うん、そう。それよりも縁日楽しみだね。遼、今年もヨーヨー釣りやるんでしょ?」
「ああ……」

このまま放っておけば兄妹喧嘩が勃発してしまいそうで、旭は気を逸らすために縁日の話を二人に持ち出すと遼人は素っ気なくではあるが返事をした。

 旭が話題を変えたことで星杏ちゃんの機嫌も直ったのか、縁日の話で盛ら上がりながら帰り道を歩く。

星杏ちゃんは終始楽しそうに話しているのを旭が相槌を打ち、遼人はそっぽを向いては時折頷いていた。

 最近では二人のどちらかと一緒が多かっただけに、三人で並んで歩くのは凄く懐かしい気持ちになる。
小学校までは毎日のように三人で並んで帰っては分岐である交差点で別れていたっけ……。
 二人の施設と旭の家の方向とは真逆であるがゆえに、反対側を歩いて行く二人の背中を見て、いつも寂しさを感じていたことを思い出した。


だから今日は二人を園まで見送ることにした。
二人には首を傾げられてしまったが、この時間を少しでも長く感じていたい気持ちの方が強かった。