不機嫌な幼なじみと鈍感な僕

「なるべくって……。お前は?」
「僕?」

「旭はどう思ってんだよ。もしこのままとんとん拍子でデビューとかになったら、旭は寂しいとか思わねぇの?」

 今ですら、遼人を遠くに感じることが増えてきた。御昼は決まったように昼食食べて……、帰りは一緒に帰って……それが当たり前ではなくなってきていることはひしひし感じている。

 遼人の周りには常に誰かがいて、旭が安易に立ち入れる存在ではなくなってきている。
きっと、オーディションに受かってしまえば僕の幼馴染であった遼人はみんなの遼人になってしまうのだろう。

 けれど、遼人に密かな恋情を抱いている自分にとっては好都合のようなきがした。

 近くに居ても遼人を手に入れることができなことは分かっている。

なのに欲しいと思って悶々としているのは、僅かでも可能性を感じてしまっているからだった。

 なら一層の事手に届かないと分かってしまっていた方が諦めがつくかもしれない。
遼人が芸能人になって自分はファンの中の一人だと割り切ってしまえた方が、彼を好きでいることが許さるような気がした。

「いいと思う……。遼が芸能人になってくれたら僕、遼のことずっと好きでいられるから……。僕は賛成だよ」
「は⁉それは俺が居なくても寂しくないってことかよ」

 遼人は眉間に皺を寄せると旭の制服のネクタイを掴んで引き寄せてきた。また怒ってる……。

「別に、そうじゃないよ……。もちろん遼がいないのは寂しいけど……。何ていうか……、遼が芸能人になってくれた方が僕としてもいいというか……遼をずっと見ていられるっていうか……」

「意味わかんねぇ……。俺、そんなに邪魔?」

「え?」

「夏の時は旭、否定してたけど。星杏と旭さ、やっぱりそういう仲なんだろ?だから花火一緒に行ったんだろ?」

「へ?」 

 夏の日の話はとっくに終わった話しだと思っていたが、突然掘り返されて旭の目が点になる。そんなことは露知らずに遼人は淡々と話していく。

「だから、付き合ってんだろ?」
「えっ、違うよ」
「いいよ、隠さなくて……。星杏がお前に告白したって噂は本当なんだろ?縁日の時だって園の中で二人でコソコソしてたの見えたし…。腹立つけど、知らない女に取られるよりマシだから……。変に気を遣われる方が無理、じゃあ」

腹立つけど、知らない女に取られるよりマシだから……。変に気を遣われる方が無理、じゃあ」

 遼人は地面に落ちた紙パックを拾うと無言でその場を立ち去ってしまった。

とんでもない勘違いをされている気がするが、それ以上に遼人を引き留める権利なんか自分にはない。

引き止めて弁解したところで、遼人が自分のモノになるわけでもない。

 遼人の発した「じゃあ」が本当に最後なのではないかと思わせられて、旭は得も言えない虚無感を抱いていた。