不機嫌な幼なじみと鈍感な僕

暑かった夏が終わり、新学期も始まった。何の変哲もない変わらない日常。
遼人は相変わらず、遅刻気味だしそんな彼に呆れる星杏ちゃんもいつも通り。

 ただ一つだけ変わったのは旭の心の居場所がふわふわと紐で縛られた風船のように浮いたまま何処へも行けずにいた。学校でも肌身離さず身に付けているカメラのデーターには気づけは遼人の写真が増えていた。

 建前上、幼馴染というラインを守りながらも気持ちでは遼人への恋心を制御するのがやっとだった。

気持ちを言葉や態度ではなく、カメラに納めることで気持ちを誤魔化す。それが得策なのか分からないけど、それしか手段はなかった。

 木の葉が枯れ始めた頃、遼人の周りを女の子達が取り囲むようになった。

どうやら遼人のアルバイト先のおばちゃんが芸能人オーディションに彼のことを勝手に応募したらしい。

本人は乗り気ではなかったが、おばちゃんには恩があるためと受けたオーディションがトントン拍子で最終選考まで残ってしまった。

 それはたちまち学校中の話題になり、遼人にファンクラブのようなものがつく程になってしまった。
 

午前の授業が終わり、漸く迎えた御昼の屋上。最近ではもっぱら遼人と御昼を一緒にとることが減っていたので久しぶりだった。

 御飯を食べ終え、柵に背中を預けて項垂れる遼人の隣に旭はカメラを構えて立つ。
ただ紙パックのジュースを咥えて立っているだけなのに絵になる彼に思わずシャッターを切った。

 撮れた画像を確認していると遼人が「毎日、追い回されてだるい」と言葉を漏らした。今日も特別御昼を約束はしていなかったが、遼人を追う女の子達から逃げて、たまたま旭がいた屋上に辿り着いたと言っていた。

芸能人のオーディションを受けているのはこの辺では相当珍しいのか一目置かれる存在になってしまった遼人を羨ましいというべきか……はたまた可哀相というべきなのか……。

「仕方ないじゃん、芸能人」
「芸能人っていうな。たまたま残ってるだけだろ?本意じゃない……」
「なら止めればいいじゃん。遼が嫌なら無理する必要ないし」
「こんな俺を雇ってくれてるおばさんには恩があるからっ。店も俺効果で繁盛してるみたいだし……やめるわけにいかねぇだろ」
「なら、我慢するしかないね」
「我慢って……。つか旭、さっきから俺のことばっか撮ってんだろ」
「だって遼、綺麗だし……」

 空になったであろう紙パックが、遼人が口を緩めたことで地面にたたきつけられた。

「おばさん見る目あるよ。遼はお世辞なしに芸能人みたいに綺麗だから。差最終選考に受かったのもなるべくしてなったんじゃない?」

 遼人の耳朶が見る見るうちに赤く染まる。