不機嫌な幼なじみと鈍感な僕

星杏ちゃんがいるから成り立っているこの空気に安堵しながらも、どうか遼人と二人きりにならないことを願ってしまう。

 すると、星杏ちゃんが急に椅子から立ち上がったので旭は思わず顔を上げた。

「お前どこにいくんだよ」

 問い掛けたのは遼人だった。

「女の子にそれ聞く?」

 星杏ちゃんのその返答で、旭は何となく察することができた。これ以上は突っ込まない方がいい。静かに頷いて見送ってやるだけでいい。

 そう気を遣っていた旭とは裏腹に、斜め前から「大でもしに行くのかー?」と聞こえてきて、瞠目した。

「最低ー。デリカシーなさすぎ。なんで遼ってこうもガサツなの?旭を見習いなよ」
「うるせぇ、図星なんだろ。さっさと行ってこいよ」

 遼人の視線が一瞬だけ旭の方へと向いたが直ぐに逸らされてしまう。やはり遼人は花火大会の一件のことを快くは思っていないらしい。

 自身の腕を枕にして顔を向こうへ背けてしまった。

「もう……。旭、別に違うからね‼」
「うん、大丈夫。待ってるから」
「もー。旭までー」

 本心ではこの状況下で星杏ちゃんがいなくなるのは避けたいところではあったが、生理現象なので引き止める訳にもいかない。軽く冗談交じりで返してみると、星杏ちゃんは怒ったまま図書室から出て行ってしまった。

 遼人と沈黙の時間が流れる。彼は顔を背けたまま一向に旭の方を向く気配はなかった。

何か声を掛けなければ遼人は反応してくれないだろう。何から声を掛ければいいかわからない。

 このまま星杏ちゃんが帰ってくるまで悪戯に時間を過ごしてしまうのか。けれど、それだと自分はずっと遼人を避けて避けられてが続いてしまう気がした。

「遼……。りょう?」

名前を呼んでもビクリともしない後頭部。無視されているのか、はたまた本当に眠っているのか。

「遼……」

「何だよ‼」

 名前を呼び続けて漸く、返事を返してくれたが声音から怒気が込められているのを感じた。そんな遼人の様子に萎縮しながらも、旭はめげずに声を掛ける。