「お前が星杏に誘われたんだろ‼なんで俺も行くんだよ。大体、人混み嫌いなくせになんでのこのこ星杏の誘いに乗ってんだよ……。俺だって旭と行きたかったのに……。周りだってお前らの事お似合いだってはやし立ててきてさ、あんな二人して浴衣姿見せられたんじゃ……」
瞳を涙を浮かべながら訴えてくる遼人を見て、星杏ちゃんに想いを告げられたことへの後ろめたさと今までの自分の行いを悔いた。
「ごめん……。でも、僕星杏ちゃんは家族みたいなものだから……。お似合いだとかそういう風に思ったことなくて……」
いつも三人一緒だった幼い頃。どちらかが欠けたらどちらかが憂いに思うのは当然のことで、旭は昔から二人には平等に接しようと気を付けていた。遼人も誘うか、断るべきだったんだろう……。
ひたすら謝ることしかできない。
「分かったから、謝んなっ」
「僕最近、遼を寂しくさせてばっかだから……。本当にごめん」
「もういいって」
「でも、僕が悪いから……」
「しつこいっ」
彼に突っぱねられてしまう程、彼との溝が深くなるような気がして旭を不安にさせる。本人は『いい』と言っているものの、本当に許してもらえているのかも分からない……。
「遼……」
「いい加減に……」
旭は居た堪れなさから遼人が顔を上げた瞬間、腕を掴んで抱き寄せると唇を重ねた。一瞬だけ触れて離れた感触の余韻を残しながら、遼人の顔を覗く。暗くてよく見えないが心なしか遼人の表情に艶めかしさを感じた。
「な、なにすんだよっ」
肩を強く押されて、旭はバランスを崩して少しだけ後ろへよろける。
「何って……。キスしたら遼、許してくれるかなって……」
「はぁ⁉意味わかんねぇ。恋愛も碌に知らない奴が一丁前にキスとかすんじゃねぇよ」
右手の甲で唇を拭われ、遼人が大声を上げる。これじゃあ、周りの迷惑になりかねない。旭は自身の口元に人差し指を当てた。
「遼、声大きい。周りの迷惑になるから」
「迷惑って、旭が変な事するからだろ‼」
「別に変なことじゃないよ……。嫌じゃなかったし」
ほんの数秒の出来事だったけど、遼人の唇の感触が残っている。柔らかくてどこか擽ったかったけど嫌な気分はしなかった。
「キスって言うのはなぁ、好きな人とするもんなんだぞ。幼馴染がこんなことするなんておかしいだろ……」
一方で遼人は頭をクシャクシャにかき回して困惑しているようだった。自分が衝動的に起こしたことでここまで遼人を困らせるとは思ってなかった。
けれど旭の中で不確かであった感情が明確になった気がする。もちろん、許してほしい一心もあった。だけど、自分は遼人のことが好きな感情は皆のいう恋心のような気がした。
目の前の動揺を隠せない遼人を愛おしいと思う。
愛おしくて触れたい……。
そういえば遼人には好きな人がいると言っていた。
誰なんだろう……。
もしかしたら、悪いことをしてしまったかもしれない……。
旭は我に返ると「ごめん。だよね……今の、忘れて……」と呟き、遼人に背を向け公園を出て行った。
