不機嫌な幼なじみと鈍感な僕

星杏ちゃんとは縁日終わりに、旭のこと迎えに行くと告げられ施設内玄関で別れた。

別れ際に「私が告白したこと遼人には内緒ね?」と星杏ちゃんに口止めをされたので、旭は少しの緊張を抱えながら遼人のもとに戻ることにした。

 星杏ちゃんの気持ちもあるだろうし、根拠はないが遼人がガッカリするような気がしたから……。

 旭がブースに戻ると、おじいちゃん先生は既に戻って来ていて遼人も変わらずに店番をしていた。

先程のこともあってか気まずさを感じてしまうが、物怖じしてしまえば遼人に怪しまれそうで旭は身を引き締めて近づく。

 接客を終えた遼人と目が合い「ただいま」と声を掛けてみたが、そっぽを向かれてしまった。いつもの遼人のツンデレだろう。

「星杏は?あいつまだ帰ってこねぇの?」
「うん、他のとこ行ってるんじゃないのかな?」
「あーそう」

 いつも以上に言葉に刺々しさを感じる遼人に違和感を覚える。
右足を貧乏ゆすりして落ち着きがないようだし、何か不機嫌にさせてしまったのだろうか。
 店番代わるって言ったのに抜けてしまったことに怒っているのだろうか……。

「遼、なんかあった?」
「あ?なんもねぇよ」
「そう、でも心なしか落ち着きないように見えたから……」
「うるせぇ、何もねぇつってんだろ」

 遼人が声を荒らげ、右手を振りかざした途端に、彼の持っていた小さい桶に入っていた水が旭の浴衣と首から下げていたカメラにかかってしまった。

 スーパーボールを掬うような小さい桶なので、浴衣はすぐ乾く程度ではあるが、カメラはまずいかもしれない……。

旭は慌ててカメラの方を浴衣の袖口で拭く。

一部始終を見ていたおじいちゃん先生が駆け寄ってタオルを渡してくれ、水滴は拭うことが出来たので安堵していると、遼人が徐に椅子から立ち上がりブースから離れてしまった。

 どうやらまた遼人を不愉快にさせてしまったらしい……。