不機嫌な幼なじみと鈍感な僕

縁日の一時間前。文子さんが運転する車に乗せられて、施設前まで到着した。

園に到着すると門戸前からお祭り一色だった。

風船で作られた虹色のアーチに『めぐみの祭』と書いてあり。
毎年のことながらも胸が高鳴った。
とりあえず青空をバックにアーチをカメラに納めると、文子さんは自宅に戻ると言うのでここで別れた。

 星杏ちゃんに「旭、おいで」と浴衣の裾を引っ張られて、下駄を引きずりながら歩みを進める。向かう先は遼人が手伝っている催し物のブースだ。

 園の中庭の一番奥で、施設の職員のおじいちゃん先生と一緒に水の入ったビニールプールを前で、水ヨーヨーを作っている遼人の姿があった。

「りょーうと‼みてみて‼」
「みてみてってなー。お前は呑気でいいな。少しは手伝えよ」
「だってあたし売り子だもーん。それに遼人、下手にあたしが手出したら怒るじゃん」
「それはお前が毎回ヨーヨー作るのが下手くそだからだろ」

 会って数分経たぬうちにお互いに喧嘩が始まる。普段であれば苦笑いしながら鎮火するのを傍観しているが、こんな楽しいイベントの日に喧嘩は周りには小さい子供たちも沢山いるし、避けたいところだった。

「りょう、星杏ちゃん。今日は特別な日だからその辺にして?」

 旭は二人の間に入り、仲裁を試みると「遼人、妹がおめかししたんだから褒めてくれたっていいじゃん」と星杏ちゃんは不満を零していたが、二人はあっさり止めてくれた。

「お前ら二人揃って浴衣かよ」

 ヨーヨー作りをしていた手を止め、顔を上げた遼人と視線がかち合う。

「いいでしょー。旭、カッコいいと思わない?」
「別に……」

 星杏ちゃんの問いに目を伏せ、素っ気ない返事をされたことに旭の内心はショックを受けていた。自画自賛をしているわけではないけど、浴衣を着つけて貰った時、星杏ちゃんにも文子さんにも「カッコいい」と褒められていただけに遼人からもいい反応を貰えると少し期待していた自分がいた。

「別にって、私は兄妹だからいいけど。せめて旭にくらい興味向けることできないの?」
「うるさい、いいから手伝え」
「もう……」

 素っ気ない遼人に星杏さんは反発するが、彼にヨーヨーの水入れ用のポンプを手渡されて、大人しくビニールプールの傍で屈みこんだ。

「遼、僕も手伝うよ」
「お、おう」

二人が作業している中で自分だけ突っ立っている訳にもいかず、旭はプールを廻り込んで首から下げているカメラを腰まで回した後、遼人の隣に屈む。

「何したらいい?」と問いかけると、遼人は顔を俯けながら自身が持っていたポンプとヨーヨーを無言で手渡してきた。