不機嫌な幼なじみと鈍感な僕

今にも傾きそうな旗を眺めて溜息を吐く一方で、遼は口元を抑えて笑う。

 ラーメン屋の筈なのにこんなもの何処から持ってきたのか……。
旭のことを子供だと笑っている遼人だって、行動や言動が幼稚なところがある。

 遼人だって人のことが言えない立場であったが、此処で盾を突いたらまた彼が不機嫌になりそうだったので「はいはい、ありがとう」と半ばいい加減な返事をして、チャーハンの山を蓮華で掬って崩していった。

 旭は崩して倒れた旗を、摘まみ取ると遼人の手を掴み、手のひらに旗を乗せてやった。

「縁日の日、楽しみにしてるよ。ごちそうさま、遼」

 丁度食べ終えたどんぶりに箸と蓮華を置いて合掌する。

「なっ……。なんだよ急に……」

 動揺をしている遼人の傍らで、旭は座布団から立ち上がり、カメラの袋を持って靴を履くと小母さんの元へと真っ先に向かった。
 
 



「わー……綺麗」

 出来上がった写真を見て思わず笑みがこぼれる。

初めての自分のカメラで撮ったものたち。ラーメン屋に立ち寄った日の翌日から、旭は夢中で写真を撮っていた。

公園の風景の写真や雨の日の紫陽花など物体を被写体に撮りたいものを撮っていく。

楽しくてあっという間に容量が超えてしまい、近くのカメラ屋さんで写真プリントをもらうことにした。

その場では確認する程度にしておいて、後は自宅でゆっくり眺めようと胸を弾ませながら自宅に帰ると、文子さんに挨拶してから二階の自室へ籠る。

机の椅子に座り、一枚一枚捲りながら写真を眺めていると無機物の多い写真の中で唯一の人物の写真を見つける。
昨日、試し撮りと思って撮った遼人の写真だった。


不貞腐れていた、とてもいい表情とは言えないがどこか愛らしい。

心が穏やかになると同時に、この写真を誰にも見せたくない。
自分だけのモノにしたいと思ってしまった。
 普通であれば星杏ちゃんに見せて笑いものにする筈なのに実の妹である彼女にも見せたくない。

 その感情が何なのかよく分からないが、とても良くないものであることは分かった。

 旭は慌ててその写真を裏返すと、机の奥の引き出しにしまうことにした。