「あら、旭君‼」
勘定が終わった御客さんと入り口ですれ違い、出て行ったところで小母さんと目が合う。
「どうも、小母さん」
「いらしゃい、どうぞ入って」
厨房の星崎さんとも目が合い会釈をした旭は、小母さんに促されて小上がりのテーブル席へと靴を脱いで座った。
敷かれたぺたんこの緑色の座布団に座り、テーブル上にあるメニュー表に手を伸ばす。
革製のカバーが掛かった古びたメニュー表。幼い頃、佐野夫婦と訪れる度にワクワクしながらメニュー表を眺めていたことを思い出す。
「今、遼人くん。休憩行ってもらってたの。すぐ戻ってくるから待っててね」
小母さんは水が注がれたプラスチックの透明なコップとピッチャーを持ってきてテーブルに置く。
「いいえ、遼が休憩中なら無理に呼ばなくても……」
遼に会うために寄ったのが目的でもあるが、小母さんにも会いたかったし、何よりお腹が空いていた。
遼人が休んでいるのであれば、無理に呼び出すのは申し訳ない気がしたが、小母さんは「いいのよ」と笑顔で答えながら、お店の裏口扉を開けて「遼人くん、旭くんが来たわよ」と叫んでいた。
遼人が来るまでの間で、何時もの醤油ラーメンとチャーハンを頼んだ後、思い立った旭は徐に電気屋の紙袋からカメラの箱を取り出した。
ずっと手にするのが楽しみだったカメラ。此処で開けてしまうのはもったいない気がしたが、我慢できずに開梱する。
発砲ポースチロールで固定され、箱にみっちりと収まっているカメラを丁寧に取り出す。
少しだけ重みのある大きいレンズに被写体を映す液晶画面。電源を入れ自然と笑みを零しながら、両手でカメラを持ち、構えてみる。
「旭、来たんだ」
「わっ……」
頭に白い無地のタオルを巻き、黒いTシャツを着た遼人が液晶画面に映し出されて、旭は思わず声を上げた。
「そんな驚かなくていいだろっ」
「ごめん、そんなつもりじゃ……」
旭はカメラを下げると、小上がりに腰を預けて座った遼人に視線を向ける。
「何それ?買ったの」
「あーうん。今日の午前中、部活の先輩と念願のカメラ買いに行ってたんだ。お腹空いたから、ついでに遼にも自慢したくて」
「ふーん」
カメラを掲げて笑顔で報告したが、興味ないのか遼人の返事は素気なかった。
そっぽを向いて口を尖らしている遼人が心なしか不機嫌なようにも見える。
反応は分かりきっていたが、旭はそんな彼の反応が面白くなくて遼人に向かってカメラを構えシャッターを切る。
カシャっとシャッター音が鳴った途端に、遼人が目を丸くしてこっちを振り向いてきた。
「お前、今撮った⁉」
「うん、撮った。遼の不機嫌顔」
撮った写真を見返すと、いつも見る遼人の仏頂面が面白くて、旭は思わず笑った。
「はぁ⁉ありえねぇ。見せろよ」
「ダメ、買ったばっかだし。一枚目が遼の仏頂面は不本意だけど、これはこれでいいから取っとく」
手を伸ばしてカメラを奪い取ろうとする遼人を避けて、電源を落とすと、カメラを急いで箱に仕舞った。
「さいあく……」
頭のタオルを取って、ボサボサの髪の毛を掻きむしる遼人が苛立っていることがよく分かる。
すると、丁度良く小母さんから「遼人くん、ラーメンできたから運んで」と声が聞こえてきて、遼人は舌打ちをすると気だるそうに厨房の方へと向かって行った。
遼人が旭の元へとおぼんに出来たてのラーメンとチャーハンを乗せて、持ってくる。靴を脱いで小上がりに上がってくるとテーブルにそれらを置いた。
旭は「ありがとう」と遼人に向かって御礼を言うと、遼人は「どういたしまして」とそっぽを向いては、向かい側の座布団に座った。
勘定が終わった御客さんと入り口ですれ違い、出て行ったところで小母さんと目が合う。
「どうも、小母さん」
「いらしゃい、どうぞ入って」
厨房の星崎さんとも目が合い会釈をした旭は、小母さんに促されて小上がりのテーブル席へと靴を脱いで座った。
敷かれたぺたんこの緑色の座布団に座り、テーブル上にあるメニュー表に手を伸ばす。
革製のカバーが掛かった古びたメニュー表。幼い頃、佐野夫婦と訪れる度にワクワクしながらメニュー表を眺めていたことを思い出す。
「今、遼人くん。休憩行ってもらってたの。すぐ戻ってくるから待っててね」
小母さんは水が注がれたプラスチックの透明なコップとピッチャーを持ってきてテーブルに置く。
「いいえ、遼が休憩中なら無理に呼ばなくても……」
遼に会うために寄ったのが目的でもあるが、小母さんにも会いたかったし、何よりお腹が空いていた。
遼人が休んでいるのであれば、無理に呼び出すのは申し訳ない気がしたが、小母さんは「いいのよ」と笑顔で答えながら、お店の裏口扉を開けて「遼人くん、旭くんが来たわよ」と叫んでいた。
遼人が来るまでの間で、何時もの醤油ラーメンとチャーハンを頼んだ後、思い立った旭は徐に電気屋の紙袋からカメラの箱を取り出した。
ずっと手にするのが楽しみだったカメラ。此処で開けてしまうのはもったいない気がしたが、我慢できずに開梱する。
発砲ポースチロールで固定され、箱にみっちりと収まっているカメラを丁寧に取り出す。
少しだけ重みのある大きいレンズに被写体を映す液晶画面。電源を入れ自然と笑みを零しながら、両手でカメラを持ち、構えてみる。
「旭、来たんだ」
「わっ……」
頭に白い無地のタオルを巻き、黒いTシャツを着た遼人が液晶画面に映し出されて、旭は思わず声を上げた。
「そんな驚かなくていいだろっ」
「ごめん、そんなつもりじゃ……」
旭はカメラを下げると、小上がりに腰を預けて座った遼人に視線を向ける。
「何それ?買ったの」
「あーうん。今日の午前中、部活の先輩と念願のカメラ買いに行ってたんだ。お腹空いたから、ついでに遼にも自慢したくて」
「ふーん」
カメラを掲げて笑顔で報告したが、興味ないのか遼人の返事は素気なかった。
そっぽを向いて口を尖らしている遼人が心なしか不機嫌なようにも見える。
反応は分かりきっていたが、旭はそんな彼の反応が面白くなくて遼人に向かってカメラを構えシャッターを切る。
カシャっとシャッター音が鳴った途端に、遼人が目を丸くしてこっちを振り向いてきた。
「お前、今撮った⁉」
「うん、撮った。遼の不機嫌顔」
撮った写真を見返すと、いつも見る遼人の仏頂面が面白くて、旭は思わず笑った。
「はぁ⁉ありえねぇ。見せろよ」
「ダメ、買ったばっかだし。一枚目が遼の仏頂面は不本意だけど、これはこれでいいから取っとく」
手を伸ばしてカメラを奪い取ろうとする遼人を避けて、電源を落とすと、カメラを急いで箱に仕舞った。
「さいあく……」
頭のタオルを取って、ボサボサの髪の毛を掻きむしる遼人が苛立っていることがよく分かる。
すると、丁度良く小母さんから「遼人くん、ラーメンできたから運んで」と声が聞こえてきて、遼人は舌打ちをすると気だるそうに厨房の方へと向かって行った。
遼人が旭の元へとおぼんに出来たてのラーメンとチャーハンを乗せて、持ってくる。靴を脱いで小上がりに上がってくるとテーブルにそれらを置いた。
旭は「ありがとう」と遼人に向かって御礼を言うと、遼人は「どういたしまして」とそっぽを向いては、向かい側の座布団に座った。
