不機嫌な幼なじみと鈍感な僕

「ほら、やっぱり苛めてただろ。りょう、すぐそうやって下の子を苛めるのはやめろっていってるだろ?」
「いじめてねぇーもん。こいつがずっとそこにいるから……」
「いいから悪いことしたら直ぐ謝れ」
「……ごめんなさい」

 座り込む旭の前に少年が立ち、謝ってきたことで涙は引いたものの、旭にとってはあまり近寄りたくない存在であった。

 それから旭に執拗以上に構ってくることはなくなり、園での初めての夜を迎える。

就寝時間になり、大きいお兄ちゃんが二段ベッドの上段へ上がる時、旭は下の段が寝床だと教えてくれたが旭はそこから頑なに動かなかった。


 そのうちにお兄ちゃんたちは諦め、部屋が暗くなり、しばらくするとルームメイトの寝息が聞こえてくる。

 膝を抱え未だ現状を受け入れることができなかった旭は、膝を抱えて蹲っていた。

 すると、右足の指先にコツンと小さい球状のもとが当たる。旭はその球状のものを人差し指と親指で摘まんで、眺める。

 暗くて色がはっきりと分からないがそれがビー玉であることは分かった。月明かりから差し込む光で辛うじて、青っぽいビー玉だと認識する。

 ふと気配を感じて顔を上げると目の前に人影が現れて、旭は思わず大声を上げそうになったが口を塞がれた。

「しっ。レイ兄ぃ達が起きるだろっ」
 
 小声で叱咤してきた声は、旭を揶揄った少年のものだった。
 また苛められるのだろうか。不安で泣きそうになる。
 口元から手が離れ、屈んだ少年と視線がかち合う。

「さっきは悪かった……。お前も怖かったんだろ……。俺も此処着た時怖かったから……。妹を守ろうと必死だった……。でも安心しろよ。食堂のケンちゃんもショクインのアキちゃんもレイ兄ぃもマツにぃも、みんないい奴だからさ。泣くなよ」

 先程の悪意のあった言葉とは違う、優しい言葉が少しだけ旭の心を癒していく。悪い子じゃないのかもしれない……。

「それ、俺が集めてる一番大事なヤツ。お前にやるよ。知ってるか?それ、なんでも願い叶えてくれる魔法のビー玉なんだぜ?」 

 旭は持っているビー玉見ながらそう話してきた。

「まほう……?」
「おうっ。これに願ったらさ、神様が俺たちを助けてくれたんだ。だからお前にやる。だから失くすなよ」

 少年はそれだけ旭に言い残すと、向かい側の二段ベッドの下段へと入って行った。
 魔法と聞いて自然と胸がワクワクしてきた。
少年の優しさが嬉しくて、旭はビー玉を強く右手で握ると、自身もベッドへ戻り、ビー玉を握り横たわった。
 その後、遼人は旭を苛めたことを詫びるように毎日傍にいてくれた。

同年代であることでの安心感。
彼は園ではやんちゃの坊主で園の職員や年上のお兄ちゃんたちを困らせていたが、旭も一緒になって悪戯をして遊んでいたことで両親を亡くした寂しさを紛らわすことができていた。

それが遼人との出会いだった。