生徒指導の教員が生徒たちに向かって登校を急かす声が響く梅雨が明けて本格的な暑さ迎える夏の朝。
佐野旭は教室のベランダの柵に腕を乗せて寄りかかり、忙しなく吸い込まれるように校舎内へ入って行く生徒たちの姿を眺めていた。
もう二、三分もすれば各教室に担任の生徒が入ってきてホームルームが始まる。
「やばい、やばい」なんて友達と騒いで走ってくる生徒たち。そんな中で旭は本来であれば慌てても可笑しくない状況下で、堂々と校門を通り抜けゆっくり歩いてくる青年を見つけた。
那月遼人は旭の幼馴染だ。
一際目立つのは周りが忙しない中で彼がゆっくり歩いているからでもあるが、一番は彼の容姿にある。背が高くて、物語の主人公がそのまま飛び出してきたような国宝のように整った顔立ちは誰が見ても目を惹く。
走っている生徒の中には、彼に何人か目を遣る人もいた。旭もその中の一人だ。
「また、りょう遅刻してるー」
校舎の玄関口へと向かって来る彼を眺めていると女子生徒が隣で呟いてきた。
紺色の襟にリボンタイついた半袖シャツに紺色のスカートのセーラ服姿の彼女は那月遼人の双子の妹、那月星杏だ。二卵性で良く見る瓜二つの顔立ちの双子ではないが、彼女もまた、遼人と同様に目を惹く存在である。
「だね。りょうって相変わらず朝弱いんだね」
「ホント毎朝、学習しないんだから」
旭は彼女に向かって笑いかけると、彼女は顔を膨らませては呆れているようだった。
「りょーうー。早くしな!ち・こ・くするよ」
自分達のいるベランダの真下の玄関口まで遼人が近づいてきたとき、星杏が彼に向かって叫ぶ。すると、彼は徐に顔を上げて立ち止まる。
「うるせぇー。馬鹿」
「馬鹿ってひどっ。ねぇ旭聞いた?妹に向かって、遼ひどくない?」
見慣れた兄妹喧嘩に苦笑を浮かべていると遼人はムスッとした表情をしながら、此方を見ることなく校舎内へと入っていってしまった。
そんな遼人を見送ってすぐにホームルームを告げるチャイムが鳴る。
クラスメイトがぞろぞろと自席に着く中で、星杏と別れた旭も自身の座席である窓際の後ろから三番目の席に着席した。
担任教師が入ってきて教壇へ立つと出席を取り、連絡事項を話し始める。
しばらくしてスクール鞄の外ポケットに忍ばせていたスマホがバイブした。
教師の目を盗んで鞄のスマホを取り出し、画面を確認すると今朝の不機嫌な王子からだった。
『旭、おはよ』
『遼、おはよ。間に合った?』
『なんとか、ギリ。今日は担任の方が遅かった』
短い文で区切られて送られてくるメッセージ。
『もう少し早く来たら?』
『ムリ』
『星杏ちゃんが毎朝心配してるよ?』
『あいつはうるさいだけだし』
『妹には優しくしなきゃ』
返せば淡々と返ってくる他愛のないメッセージのやりとりは旭と遼人との毎朝の日課だ。
小学、中学までは奇跡的に遼人とは九年間同じクラスであったが、高校に入学し振り分けられたクラスは旭が1組で遼人が7組と別のクラスの上に階の端と端の離れた位置に教室がある。
だからであろう。一人だけクラスが離れている遼人の寂しさからこうして毎朝、旭宛にメッセージが送られてくるようになった。
旭がメッセージを送ったところで返事が途絶える。
ここらで終わりだろうかと思い、目線を担任へと移すとホームルームが終わってすぐに遼人から『旭、今日の昼、そっち行ってもいい?』とメッセージがあがった。
佐野旭は教室のベランダの柵に腕を乗せて寄りかかり、忙しなく吸い込まれるように校舎内へ入って行く生徒たちの姿を眺めていた。
もう二、三分もすれば各教室に担任の生徒が入ってきてホームルームが始まる。
「やばい、やばい」なんて友達と騒いで走ってくる生徒たち。そんな中で旭は本来であれば慌てても可笑しくない状況下で、堂々と校門を通り抜けゆっくり歩いてくる青年を見つけた。
那月遼人は旭の幼馴染だ。
一際目立つのは周りが忙しない中で彼がゆっくり歩いているからでもあるが、一番は彼の容姿にある。背が高くて、物語の主人公がそのまま飛び出してきたような国宝のように整った顔立ちは誰が見ても目を惹く。
走っている生徒の中には、彼に何人か目を遣る人もいた。旭もその中の一人だ。
「また、りょう遅刻してるー」
校舎の玄関口へと向かって来る彼を眺めていると女子生徒が隣で呟いてきた。
紺色の襟にリボンタイついた半袖シャツに紺色のスカートのセーラ服姿の彼女は那月遼人の双子の妹、那月星杏だ。二卵性で良く見る瓜二つの顔立ちの双子ではないが、彼女もまた、遼人と同様に目を惹く存在である。
「だね。りょうって相変わらず朝弱いんだね」
「ホント毎朝、学習しないんだから」
旭は彼女に向かって笑いかけると、彼女は顔を膨らませては呆れているようだった。
「りょーうー。早くしな!ち・こ・くするよ」
自分達のいるベランダの真下の玄関口まで遼人が近づいてきたとき、星杏が彼に向かって叫ぶ。すると、彼は徐に顔を上げて立ち止まる。
「うるせぇー。馬鹿」
「馬鹿ってひどっ。ねぇ旭聞いた?妹に向かって、遼ひどくない?」
見慣れた兄妹喧嘩に苦笑を浮かべていると遼人はムスッとした表情をしながら、此方を見ることなく校舎内へと入っていってしまった。
そんな遼人を見送ってすぐにホームルームを告げるチャイムが鳴る。
クラスメイトがぞろぞろと自席に着く中で、星杏と別れた旭も自身の座席である窓際の後ろから三番目の席に着席した。
担任教師が入ってきて教壇へ立つと出席を取り、連絡事項を話し始める。
しばらくしてスクール鞄の外ポケットに忍ばせていたスマホがバイブした。
教師の目を盗んで鞄のスマホを取り出し、画面を確認すると今朝の不機嫌な王子からだった。
『旭、おはよ』
『遼、おはよ。間に合った?』
『なんとか、ギリ。今日は担任の方が遅かった』
短い文で区切られて送られてくるメッセージ。
『もう少し早く来たら?』
『ムリ』
『星杏ちゃんが毎朝心配してるよ?』
『あいつはうるさいだけだし』
『妹には優しくしなきゃ』
返せば淡々と返ってくる他愛のないメッセージのやりとりは旭と遼人との毎朝の日課だ。
小学、中学までは奇跡的に遼人とは九年間同じクラスであったが、高校に入学し振り分けられたクラスは旭が1組で遼人が7組と別のクラスの上に階の端と端の離れた位置に教室がある。
だからであろう。一人だけクラスが離れている遼人の寂しさからこうして毎朝、旭宛にメッセージが送られてくるようになった。
旭がメッセージを送ったところで返事が途絶える。
ここらで終わりだろうかと思い、目線を担任へと移すとホームルームが終わってすぐに遼人から『旭、今日の昼、そっち行ってもいい?』とメッセージがあがった。
