期末テストも終わって、今日は終業式。
昨晩、「絶対、告らせてやるからな!」と決意したのはいいものの、何をしたらいいか分からない、
今まで告白してきた相手は、大体同じような理由だったと思う。見た目とか、優しさとか、話しやすさとか。ちょっと距離を詰めて、適当にそれっぽいことをしていれば、告白されていた。
でも、隆也は違う。俺のどこを好きになったんだ?
「よっしゃー! 夏休み!」
「家でゲームしよ」
明日から夏休み。
隆也は部活漬けになるだろうし、会う時間だって減る。俺は帰宅部で暇だけど、遊ぶ予定はそれなりに入っている。
このままじゃ、何も進まない。
「じゃあ樹。後で」
教室を出ていこうとする隆也が、ベースを背負ったまま振り返る。
「おう。今日のライブ、絶対行くからな!」
終業式は午前で終わる。
夕方からは、軽音部のライブ兼オーディション。
チャンスがあるとしたら、そこだ。
「ここだよな……」
ライブハウスの前で立ち止まる。こういう場所に来たことは、数えるくらいしかない。
榊原はバイト、小野田はそもそも来なさそうだし。今日は、完全にひとりだ。
ワンドリンク引換券を受け取って中に入る。思っていたより、人が多い。冷房が強めに効いていて、これならブレザーを着たままでも問題なさそうだ。
「すげえな……こんなに人気なのか」
「おお、樹じゃん!」
ドリンクカウンターにいた軽音部の男子に声をかけられる。隆也とは別バンドだけど、何度か話したことがあるやつだった。
「鮫島見に来たの? 幼馴染だっけ」
「そう。隆也のバンド、順番まだだよな」
「まだまだ。でも早めに来て正解。鮫島のとこ、マジで人気あるから。他校からも結構来てるし」
「へえ」
すごいとは思ってたけど、そこまでとは知らなかった。
……ていうか。女子、多くね?
フロアを見渡すと、明らかに女子の割合が高い。ステージの方を見てる女子もいれば、スマホをいじりながらそわそわしてる子もいる。高校生バンドのライブって、こんな感じなのか。
視線を感じて、なんとなく落ち着かない。いや、いつもなら別に気にしないけど。
さっきから何回か、目が合う。やば。これ、そのうち――
「ねえ、ひとり?」
来た。振り返ると、制服を着た女子が二人、にこにこしながら立っている。
「私たち女子だけで来ててさ、ライブとか初めてなんだよね」
「良かったら一緒に見ない?」
いつもの感じなら、ここで軽く笑って受け流せる。けど、今日は隆也のオーディションも兼ねたライブだ。大事にはしたくない。
「…いや、俺は」
穏便に断ろうとした時、肩をぽんと叩かれた。
「あーいたいた、探したで」
「え?」
「一緒に見るって約束したやん。置いてかんでや」
華奢な体格に、ふわふわした茶髪。一見女子かと思ったが、声で男だと分かる。
自然すぎる口調だけど、見覚えがない顔だった。
「えー、知り合い? 可愛いね。ねえ、良かったら私たちと……」
「あんたら誰?」
さっきまでの柔らかい声が噓みたいに、低い声。
「ボクらだけで来てんねん。邪魔せんといてくれる?
そう言った瞬間、空気が凍る。女子たちは顔を見合わせて、「ごめんねー」と小さく笑って、その場を離れていった。
そ姿が人混みに紛れて見えなくなった後、隣から声がした。
「困ってそうやったから、声かけてもうたけど。大丈夫やった?」
「めちゃくちゃ助かった。急に話しかけられて、断るタイミング逃してて」
「ふふ、初めてやと分からんよな。ボクも最近こっち来たばっかで、あんまこのへん知らんのよ」
“こっち”ってことは、東京出身じゃないのか。話し方は優しいけど、丸い瞳からは意志の強さを感じた。
「ボク、鳴海明彦。男の子ひとりで来てる人、珍しいな。仲良うしたってー」
にこっと笑って、当然みたいに手を差し出してくる。
「……おれは天宮樹。よろしく」
軽く握り返すと、ぱっと表情が明るくなる。
「なるみんでええよ」
「……鳴海も、バンドやってんのか?」
「いや、ボクは聴く専門やな。小さい頃はピアノやってたけど。学校、もう夏休み入っててさ。暇やったから来てん」
鳴海の話は面白くて、気付けば自然と会話していた。
「てか、連絡先交換しよ」
「いいけど。強引だな、結構」
思わず返すと、鳴海はくすっと笑った。
「ええやん。こういうの、タイミングやし」
その勢いに押されて、ついスマホを取り出す。
「樹くんも音楽好きなん?」
「まあ、普通。知り合いを見に来てさ」
「へえ、知り合い」
少しだけ、興味深そうに目を細める。
「ああ、俺の幼馴染で」
続けようとした瞬間、ふっと、照明が落ちる。ざわついていたフロアが、一瞬で静まり返った。
次の瞬間、腹に響くような重低音が鳴り響く。思わず顔を上げる。隣で、鳴海も同じようにステージへ視線を向けていた。
ライトが点く。
――いた。隆也が、ステージの上に。
いつものベースを構えて、強い光を浴びている。長い指が弦を押さえて、リズムに合わせて滑らかに動く。
音に合わせて揺れる体も、横顔も、やけに様になっていて。
歓声が上がる。前の方では、手を上げるやつもいて、ファンがいることが分かった。
名前を呼ぶ声が、いくつも重なる。けど、そんなの全部、遠くに感じる。
「……すげえ」
思わず声が漏れる。
かっこいい、とかそんな言葉じゃ足りない。目が離せない。
こんなの、知らない。ふと、隆也が顔を上げた。視線が、ぶつかる。その瞬間。
(……樹)
心の中に、声が落ちてきた。ほんの一瞬だけ、隆也の目が柔らぐ。
(来てくれたんだ)
ドクン、と心臓が跳ねる。周りの歓声が遠くなる。
なんでだよ。ステージにいるのはあいつなのに、見られてるのは、俺の方みたいで。そのまま、目を逸らせなかった。
――やっぱすげえな。幼馴染の引け目なしでも、あれは普通にプロ並みだと思う。
「こんにちはー! 今日は来てくれてありがとう!」
ボーカルがMCに入り、メンバー紹介を始めると、客席もざわつき始めた。
「すごいなあこのバンド」
隣で、鳴海がぽつりと呟く。
「……このバンドだよ、俺の知り合いがいるの」
「え、ほんま。どの人が知り合いなん?」
驚いたようにこちらを見る鳴海に、ステージの上にいる隆也を指さす。ほんの少しだけ、誇らしい。
「……ベース弾いてるやつ。幼馴染の、鮫島隆也」
「へえ。隆也クン、いうんや……」
興味を持ったように、鳴海はじっとステージを見つめた。
一時間半くらいで、オーディション兼校外ライブは終了した。あの後もいくつかのバンドが出ていたけど、隆也のバンドが、やっぱり一番盛り上がっていた。
「いや~、めっちゃ良かったな」
「東京の高校生バンド、初めて聴いたけど。ほんま、ええもん見せてもろたわ」
フロアを出ても、まだ熱気が残っている気がする。耳の奥で、さっきのベースの音が鳴り続けているみたいだった。
「なんか、ひとりじゃなくて良かったかも。この感動を分かち合いたいっていうか」
「ほんま? ボクも同じこと思ってたわ」
隆也のライブも見られたし、鳴海にも会えたし。今日は来て良かった。
「俺、知り合いに挨拶しに楽屋行くけど。鳴海も来る?」
そう言うと、隣の鳴海がぱっと顔を上げた。
「ええの?」
「多分な。軽音部に知り合いいるしさ」
こういう時、人脈が広いと何かと便利だ。
「やった。むっちゃ楽しみ」
鳴海は屈託なく笑った。
楽屋は、ライブ終わりの熱気で満ちていた。
笑い声と、反省会と、興奮の残り火。
知り合いの軽音部も何人かいて、鳴海が入っても問題なさそうだった。
演者の楽屋を覗くと、隆也は、椅子に座ってタオルで汗を拭いていた。
「よ、お疲れ」
声をかけると、顔を上げる。
「樹。来てくれてありがとう」
その声は、ステージの上とは違って、いつもの隆也で。少し安心する。
「めっちゃ良かった。オーディションの結果、来週だっけ? 絶対いけるって」
軽く笑いながら言うと、隆也も小さく笑った。
「……どうだろ」
控えめな返事。でも、その奥にある自信も、迷いも、全部分かる気がして。
こいつが俺の幼馴染なんだぞって、ベースを始めるように言ったのは俺なんだぞって言いふらしたい気持ちでいっぱいになる。
そんな衝動を押し殺していると、後ろにいた鳴海に隆也が気付いた。
「そっちは……?」
横から、鳴海がひょいと顔を出した。
「ああ、さっき知り合ったーー」
「初めまして。ボク、鳴海明彦。なるみんて呼んでや」
鳴海が一歩前に出て、にこっと笑う。なんか、距離近くね?
隆也は少し戸惑ったように頷いた、その瞬間――鳴海が、両手で隆也の手をぎゅっと握った。
「突然やけど、隆也くんめっちゃタイプやわ」
一瞬、言葉の意味を理解するのに時間がかかって。
鳴海は気にした様子もなく、さらっと続けた。
「あ、言ってなかったっけ。ボク、ゲイやねん」
隆也を見る。俺と同じように固まっていた。
俺はすっかり忘れていた。隆也がイケメンで優しいってことは、他のヤツも、隆也を好きになっておかしくないんだって。
鳴海は、隆也の手を握りしめたまま楽しそうに笑う。
「な、ボクとデートしてくれへん?」
胸の奥が、ぐちゃっと歪んだ。
昨晩、「絶対、告らせてやるからな!」と決意したのはいいものの、何をしたらいいか分からない、
今まで告白してきた相手は、大体同じような理由だったと思う。見た目とか、優しさとか、話しやすさとか。ちょっと距離を詰めて、適当にそれっぽいことをしていれば、告白されていた。
でも、隆也は違う。俺のどこを好きになったんだ?
「よっしゃー! 夏休み!」
「家でゲームしよ」
明日から夏休み。
隆也は部活漬けになるだろうし、会う時間だって減る。俺は帰宅部で暇だけど、遊ぶ予定はそれなりに入っている。
このままじゃ、何も進まない。
「じゃあ樹。後で」
教室を出ていこうとする隆也が、ベースを背負ったまま振り返る。
「おう。今日のライブ、絶対行くからな!」
終業式は午前で終わる。
夕方からは、軽音部のライブ兼オーディション。
チャンスがあるとしたら、そこだ。
「ここだよな……」
ライブハウスの前で立ち止まる。こういう場所に来たことは、数えるくらいしかない。
榊原はバイト、小野田はそもそも来なさそうだし。今日は、完全にひとりだ。
ワンドリンク引換券を受け取って中に入る。思っていたより、人が多い。冷房が強めに効いていて、これならブレザーを着たままでも問題なさそうだ。
「すげえな……こんなに人気なのか」
「おお、樹じゃん!」
ドリンクカウンターにいた軽音部の男子に声をかけられる。隆也とは別バンドだけど、何度か話したことがあるやつだった。
「鮫島見に来たの? 幼馴染だっけ」
「そう。隆也のバンド、順番まだだよな」
「まだまだ。でも早めに来て正解。鮫島のとこ、マジで人気あるから。他校からも結構来てるし」
「へえ」
すごいとは思ってたけど、そこまでとは知らなかった。
……ていうか。女子、多くね?
フロアを見渡すと、明らかに女子の割合が高い。ステージの方を見てる女子もいれば、スマホをいじりながらそわそわしてる子もいる。高校生バンドのライブって、こんな感じなのか。
視線を感じて、なんとなく落ち着かない。いや、いつもなら別に気にしないけど。
さっきから何回か、目が合う。やば。これ、そのうち――
「ねえ、ひとり?」
来た。振り返ると、制服を着た女子が二人、にこにこしながら立っている。
「私たち女子だけで来ててさ、ライブとか初めてなんだよね」
「良かったら一緒に見ない?」
いつもの感じなら、ここで軽く笑って受け流せる。けど、今日は隆也のオーディションも兼ねたライブだ。大事にはしたくない。
「…いや、俺は」
穏便に断ろうとした時、肩をぽんと叩かれた。
「あーいたいた、探したで」
「え?」
「一緒に見るって約束したやん。置いてかんでや」
華奢な体格に、ふわふわした茶髪。一見女子かと思ったが、声で男だと分かる。
自然すぎる口調だけど、見覚えがない顔だった。
「えー、知り合い? 可愛いね。ねえ、良かったら私たちと……」
「あんたら誰?」
さっきまでの柔らかい声が噓みたいに、低い声。
「ボクらだけで来てんねん。邪魔せんといてくれる?
そう言った瞬間、空気が凍る。女子たちは顔を見合わせて、「ごめんねー」と小さく笑って、その場を離れていった。
そ姿が人混みに紛れて見えなくなった後、隣から声がした。
「困ってそうやったから、声かけてもうたけど。大丈夫やった?」
「めちゃくちゃ助かった。急に話しかけられて、断るタイミング逃してて」
「ふふ、初めてやと分からんよな。ボクも最近こっち来たばっかで、あんまこのへん知らんのよ」
“こっち”ってことは、東京出身じゃないのか。話し方は優しいけど、丸い瞳からは意志の強さを感じた。
「ボク、鳴海明彦。男の子ひとりで来てる人、珍しいな。仲良うしたってー」
にこっと笑って、当然みたいに手を差し出してくる。
「……おれは天宮樹。よろしく」
軽く握り返すと、ぱっと表情が明るくなる。
「なるみんでええよ」
「……鳴海も、バンドやってんのか?」
「いや、ボクは聴く専門やな。小さい頃はピアノやってたけど。学校、もう夏休み入っててさ。暇やったから来てん」
鳴海の話は面白くて、気付けば自然と会話していた。
「てか、連絡先交換しよ」
「いいけど。強引だな、結構」
思わず返すと、鳴海はくすっと笑った。
「ええやん。こういうの、タイミングやし」
その勢いに押されて、ついスマホを取り出す。
「樹くんも音楽好きなん?」
「まあ、普通。知り合いを見に来てさ」
「へえ、知り合い」
少しだけ、興味深そうに目を細める。
「ああ、俺の幼馴染で」
続けようとした瞬間、ふっと、照明が落ちる。ざわついていたフロアが、一瞬で静まり返った。
次の瞬間、腹に響くような重低音が鳴り響く。思わず顔を上げる。隣で、鳴海も同じようにステージへ視線を向けていた。
ライトが点く。
――いた。隆也が、ステージの上に。
いつものベースを構えて、強い光を浴びている。長い指が弦を押さえて、リズムに合わせて滑らかに動く。
音に合わせて揺れる体も、横顔も、やけに様になっていて。
歓声が上がる。前の方では、手を上げるやつもいて、ファンがいることが分かった。
名前を呼ぶ声が、いくつも重なる。けど、そんなの全部、遠くに感じる。
「……すげえ」
思わず声が漏れる。
かっこいい、とかそんな言葉じゃ足りない。目が離せない。
こんなの、知らない。ふと、隆也が顔を上げた。視線が、ぶつかる。その瞬間。
(……樹)
心の中に、声が落ちてきた。ほんの一瞬だけ、隆也の目が柔らぐ。
(来てくれたんだ)
ドクン、と心臓が跳ねる。周りの歓声が遠くなる。
なんでだよ。ステージにいるのはあいつなのに、見られてるのは、俺の方みたいで。そのまま、目を逸らせなかった。
――やっぱすげえな。幼馴染の引け目なしでも、あれは普通にプロ並みだと思う。
「こんにちはー! 今日は来てくれてありがとう!」
ボーカルがMCに入り、メンバー紹介を始めると、客席もざわつき始めた。
「すごいなあこのバンド」
隣で、鳴海がぽつりと呟く。
「……このバンドだよ、俺の知り合いがいるの」
「え、ほんま。どの人が知り合いなん?」
驚いたようにこちらを見る鳴海に、ステージの上にいる隆也を指さす。ほんの少しだけ、誇らしい。
「……ベース弾いてるやつ。幼馴染の、鮫島隆也」
「へえ。隆也クン、いうんや……」
興味を持ったように、鳴海はじっとステージを見つめた。
一時間半くらいで、オーディション兼校外ライブは終了した。あの後もいくつかのバンドが出ていたけど、隆也のバンドが、やっぱり一番盛り上がっていた。
「いや~、めっちゃ良かったな」
「東京の高校生バンド、初めて聴いたけど。ほんま、ええもん見せてもろたわ」
フロアを出ても、まだ熱気が残っている気がする。耳の奥で、さっきのベースの音が鳴り続けているみたいだった。
「なんか、ひとりじゃなくて良かったかも。この感動を分かち合いたいっていうか」
「ほんま? ボクも同じこと思ってたわ」
隆也のライブも見られたし、鳴海にも会えたし。今日は来て良かった。
「俺、知り合いに挨拶しに楽屋行くけど。鳴海も来る?」
そう言うと、隣の鳴海がぱっと顔を上げた。
「ええの?」
「多分な。軽音部に知り合いいるしさ」
こういう時、人脈が広いと何かと便利だ。
「やった。むっちゃ楽しみ」
鳴海は屈託なく笑った。
楽屋は、ライブ終わりの熱気で満ちていた。
笑い声と、反省会と、興奮の残り火。
知り合いの軽音部も何人かいて、鳴海が入っても問題なさそうだった。
演者の楽屋を覗くと、隆也は、椅子に座ってタオルで汗を拭いていた。
「よ、お疲れ」
声をかけると、顔を上げる。
「樹。来てくれてありがとう」
その声は、ステージの上とは違って、いつもの隆也で。少し安心する。
「めっちゃ良かった。オーディションの結果、来週だっけ? 絶対いけるって」
軽く笑いながら言うと、隆也も小さく笑った。
「……どうだろ」
控えめな返事。でも、その奥にある自信も、迷いも、全部分かる気がして。
こいつが俺の幼馴染なんだぞって、ベースを始めるように言ったのは俺なんだぞって言いふらしたい気持ちでいっぱいになる。
そんな衝動を押し殺していると、後ろにいた鳴海に隆也が気付いた。
「そっちは……?」
横から、鳴海がひょいと顔を出した。
「ああ、さっき知り合ったーー」
「初めまして。ボク、鳴海明彦。なるみんて呼んでや」
鳴海が一歩前に出て、にこっと笑う。なんか、距離近くね?
隆也は少し戸惑ったように頷いた、その瞬間――鳴海が、両手で隆也の手をぎゅっと握った。
「突然やけど、隆也くんめっちゃタイプやわ」
一瞬、言葉の意味を理解するのに時間がかかって。
鳴海は気にした様子もなく、さらっと続けた。
「あ、言ってなかったっけ。ボク、ゲイやねん」
隆也を見る。俺と同じように固まっていた。
俺はすっかり忘れていた。隆也がイケメンで優しいってことは、他のヤツも、隆也を好きになっておかしくないんだって。
鳴海は、隆也の手を握りしめたまま楽しそうに笑う。
「な、ボクとデートしてくれへん?」
胸の奥が、ぐちゃっと歪んだ。
