俺の幼馴染(男)が俺のこと大好きなのに、告白してこない。

文化祭が終わって、次の週の月曜は振替休日。
学校は休みだけど、俺はいつも通りエントランスで待ち合わせをしていた。
「隆也、おはよ」
「……おはよ」
 軽く手を上げる。
 俺はもう、ブレザーを着ていない。
 それでも、隣にいるこいつのことは――ちゃんと分かる。

「どこ行く?」
「……樹が行きたい場所なら、どこでも」
「だから、そういうのやめろって。お前の行きたい場所に、俺は行きたいの」
「……じゃあ」

気づけば、また河川敷に来ていた。
 風が、ゆるく吹いている。
 土手に並んで立つと、自然と昔を思い出す。
「あの頃は、お前とこんな関係になるなんて考えられなかったな」
 ふと隣を見ると、隆也は俺を見つめていた。まっすぐで、逃げ場のない視線。
 
「……隆也ってさ」
 ふと思い出して、口を開く。
「彼女いたことあんの?」
「……ある」
「は!? いつ!?」
「中二の夏。一か月だけ」
「知らなかったんだけど!」
「言ってないからな」
「……」
隆也はずるい。
でも、俺もずっと、同じことしてたんだよな。

「なあ、隆也」
「ん?」
「……お前はもう、俺のだよな?」
「……どうした、急に」
「いや」
 視線を逸らして、ぼそっと言う。
「……その彼女と、どこまでいったのか気になって」
「一か月だけだぞ。何かするって言ったって……」
そこで、わざとらしく間を作る。
「……気になる?」
「お前さあ……!」
 思わず顔を上げると、楽しそうに笑っている。
「……ずるい。隆也ばっかり」
「少しは俺の気持ち、分かったかよ」
「……隆也の意地悪」
「……ごめんって」
ふっと、表情が緩む。
「樹が可愛いから、つい」
「は!? ば、馬鹿じゃねえの……」
「いいよ、馬鹿で」
 あっさり言い切られる。
「樹と一緒にいられるなら、それでいい」
「……お前、ほんとそういうの恥ずかしくねえの?」
「盗み聞きされてたからな。今さらだろ」
「……」
 言い返せない。
「はは、ほんとに可愛いな、樹は」
「……なんだよ」
 そっぽを向いた瞬間、言われる。
「俺はあの頃からずっと、樹が好きだったよ」
「なっ……」
隆也が俺の手をとる。大きくて、あたたかい。
そのぬくもりに絆されてもいいか、と思えて、黙ったまま握り返した。
風が、また静かに吹いた。
(完)