次に葛城に会ったのは、翌日の放課後の自習室でだった。
「特待生の試験を受けてみる話を両親にして、二人とも応援してくれるって言ってくれたんだけど、改めて特待生の勉強をするとなると、どうしていいかわからなくて」
「葛城は十分に実力あると思うよ。最近は凡ミスも減ってきたし。あとは作文とか、面接対策じゃないか?」
「自己アピールの部分ってこと? 確かに、そういうの苦手かも」
「その部分も俺が手伝おうか?」
俺は葛城と一緒にいたいし、特待生を勧めたのだってもっと長く一緒にいるためだし、そのための協力は当然惜しまない。
「これ以上、神乃くんに甘えるのは申し訳ないけれど……」
そう言いながらも葛城の瞳は期待で輝いている。
「本当に、甘えちゃってもいいの?」
その甘えるっていう言い方、すごく可愛くて、すごくいいと思う。
「特待生も俺が勧めたことだし、もちろん、全力でサポートさせてもらうよ」
「ありがとう! 神乃くん!」
葛城のこの笑顔があればなんでも出来るような気がする。
最高に可愛い。
「僕、至ちゃんのサポートをすることばかり考えてて、まさか、自分がサポートしてもらえるなんて思ってもみなかったから、すごく嬉しいよ!」
日向のことさえ絡まなければ、本当に最高の環境なんだけどな。
結局、葛城に勉強を教えることや、特待生の試験の対策を手伝うことが全て巡り巡って日向のためになるところがちょっと辛い……
でも、俺が葛城と一緒にいるためには、その部分を邪魔するわけにはいかないのだ。
葛城に協力をしないということは、葛城との接点を失うということなのだから。
「やっぱり、日向のほうが主人公ポジションな気がする」
俺の言葉に葛城は笑う。
「ジャンルが違うでしょ?」
「でも、葛城みたいなサポートキャラは俺にはいないし……」
「そう? 昨日会った高野さんとか、最強のサポート役な気がするけど? あとは、神乃くんといつも一緒にいるお友達も強そう!」
強そうとはなんだろう? BL漫画のサポートキャラが、少年漫画のサポートキャラより強いとかあるのだろうか?
いや、BL漫画の主人公って文武両道で完璧だから、もしかすると、少年漫画の主人公よりも強いのかもしれない……
そのことを踏まえて考えるなら、BL漫画のサポートキャラが少年漫画のサポートキャラよりも強いということも十分にあり得るだろう。
……俺は一体、何を真剣に考えているのだろうか?
「……日向のサポート役の葛城から見たら、俺と日向ってどっちが強そう?」
そして、俺は、何を聞いているのだろうか?
回答によっては、俺の心が瀕死に陥るかもしれないというのに。
「サッカーでは至ちゃんだと思うけど、総合的には圧倒的に神乃くんでしょ?」
俺の心は救われた。
「そうなのか?」
「うん。誰が見てもそうでしょ?」
「葛城から見てもそうってことだよね?」
他の誰かの評価なんていらない。
俺は葛城の手を握って、葛城の大きな瞳を覗き込む。
葛城が俺のことをどう思っているのか、それだけが大切なのだ。
「神乃くん、近いよ」
葛城の頬が染まる。
「葛城にとっても、俺のほうが日向より強そう?」
「強い! 強いよ!! こういうことしても様になるのは卑怯でしょ!」
どうやら、俺は卑怯なくらいに強いらしい。チートというやつだろうか?
その日から、俺たちは特待生の試験のための勉強や面接の練習、作文の対策を行った。
勉強は得意な葛城だったが、自己アピールが驚くほど下手だった。
自分の短所はいくらでも語れるのに、長所に関しては「えっと……真面目?」と首を傾げるくらいに自分のことがわかっていなかった。
「平凡な僕に長所なんてある? あ、平凡なところとか?」
ここまで来るともはや面白い。
葛城は謙遜でこんなことを言っているわけではなく、本気で思っているようだった。
「平凡を極めているところが長所とかになる?」
「葛城の長所は誰かのために全力を尽くせるところだろう?」
「え?」
「特待生になりたいのは特進クラスに進んでいい大学に行きたいからだ。いい大学に行きたいのは、将来、サッカー選手として活躍するかもしれない日向を支えられるようになるためだろう?」
「でも、それは至ちゃんのためというより、僕のためだよ? 僕はサッカー選手になれるようなすごい才能はないけれど、才能を持った至ちゃんの将来が僕も楽しみなんだ。幼馴染として、その楽しみな将来に同席させて欲しいという結構浅ましい気持ちによる努力だよ?」
「そういう自己観察ができている点も長所じゃないか?」
自分の行動の根底にどんな感情があるかを観察して語れるのも一つの才能だろう。
なんだか、謙虚すぎるような気もするけれど。
「楽しみな未来への同席なら、俺に乗り換えてもいいと思うけどな?」
なんて、俺はついつい希望を言ってしまった。
しかし、俺の下心には気づかずに葛城は「確かに」と笑った。
「神乃くんの将来も楽しみだよね。財閥の跡取りでもいいし、自分で会社を立ち上げるのもいいし、格好いいから芸能界に進んでも良さそうだし、頭もいいから、研究者とかも向いてるかもね」
俺は俺が想像もしたことがなかった俺の未来を次々に口にする葛城を思わず凝視する。
「そんな風に、葛城には見えるのか?」
「見えるよ。神乃くんなら、BL漫画だけじゃなくて、いろんな漫画の主人公になれそう」
「その主人公の隣には、葛城みたいなサポートキャラがいてほしいんだけど?」
葛城がその瞳を大きく見開いて俺をじっと見てくる。
やばい、俺の気持ちに気づかれてしまっただろうか?
よく考えたら、この先の未来もずっと一緒にいて欲しいとか、告白みたいなことを言ってしまった。
「そっか……」と、葛城は呟いた。
「僕の長所は、サポートキャラ力だ!」
「……え?」
「自分がどうしたら活躍できるかなんて思いつかないけど、至ちゃんのために何が必要かとか、神乃くんをサポートするならどんな能力があったほうがいいかとかは思いつくもん! 僕には、主人公を支えるためにどうするかを考える能力がある!」
俺は自分が主人公になることはないとすれていたのに、葛城は主人公ではなくサポートキャラ位置こそが自分の役割であり長所だと納得している。
そんなところも控えめで非常に可愛いと思う。
しかし……
「これも日頃BL漫画を愛読しているおかげだね!」
というのは、たぶん、違うと思う。
結局のところ、葛城は自分の長所を正確には把握しきれていないような気がするけれど、それは俺が見つけていけばいいことだから、まぁ、いいだろう。
「特待生の試験を受けてみる話を両親にして、二人とも応援してくれるって言ってくれたんだけど、改めて特待生の勉強をするとなると、どうしていいかわからなくて」
「葛城は十分に実力あると思うよ。最近は凡ミスも減ってきたし。あとは作文とか、面接対策じゃないか?」
「自己アピールの部分ってこと? 確かに、そういうの苦手かも」
「その部分も俺が手伝おうか?」
俺は葛城と一緒にいたいし、特待生を勧めたのだってもっと長く一緒にいるためだし、そのための協力は当然惜しまない。
「これ以上、神乃くんに甘えるのは申し訳ないけれど……」
そう言いながらも葛城の瞳は期待で輝いている。
「本当に、甘えちゃってもいいの?」
その甘えるっていう言い方、すごく可愛くて、すごくいいと思う。
「特待生も俺が勧めたことだし、もちろん、全力でサポートさせてもらうよ」
「ありがとう! 神乃くん!」
葛城のこの笑顔があればなんでも出来るような気がする。
最高に可愛い。
「僕、至ちゃんのサポートをすることばかり考えてて、まさか、自分がサポートしてもらえるなんて思ってもみなかったから、すごく嬉しいよ!」
日向のことさえ絡まなければ、本当に最高の環境なんだけどな。
結局、葛城に勉強を教えることや、特待生の試験の対策を手伝うことが全て巡り巡って日向のためになるところがちょっと辛い……
でも、俺が葛城と一緒にいるためには、その部分を邪魔するわけにはいかないのだ。
葛城に協力をしないということは、葛城との接点を失うということなのだから。
「やっぱり、日向のほうが主人公ポジションな気がする」
俺の言葉に葛城は笑う。
「ジャンルが違うでしょ?」
「でも、葛城みたいなサポートキャラは俺にはいないし……」
「そう? 昨日会った高野さんとか、最強のサポート役な気がするけど? あとは、神乃くんといつも一緒にいるお友達も強そう!」
強そうとはなんだろう? BL漫画のサポートキャラが、少年漫画のサポートキャラより強いとかあるのだろうか?
いや、BL漫画の主人公って文武両道で完璧だから、もしかすると、少年漫画の主人公よりも強いのかもしれない……
そのことを踏まえて考えるなら、BL漫画のサポートキャラが少年漫画のサポートキャラよりも強いということも十分にあり得るだろう。
……俺は一体、何を真剣に考えているのだろうか?
「……日向のサポート役の葛城から見たら、俺と日向ってどっちが強そう?」
そして、俺は、何を聞いているのだろうか?
回答によっては、俺の心が瀕死に陥るかもしれないというのに。
「サッカーでは至ちゃんだと思うけど、総合的には圧倒的に神乃くんでしょ?」
俺の心は救われた。
「そうなのか?」
「うん。誰が見てもそうでしょ?」
「葛城から見てもそうってことだよね?」
他の誰かの評価なんていらない。
俺は葛城の手を握って、葛城の大きな瞳を覗き込む。
葛城が俺のことをどう思っているのか、それだけが大切なのだ。
「神乃くん、近いよ」
葛城の頬が染まる。
「葛城にとっても、俺のほうが日向より強そう?」
「強い! 強いよ!! こういうことしても様になるのは卑怯でしょ!」
どうやら、俺は卑怯なくらいに強いらしい。チートというやつだろうか?
その日から、俺たちは特待生の試験のための勉強や面接の練習、作文の対策を行った。
勉強は得意な葛城だったが、自己アピールが驚くほど下手だった。
自分の短所はいくらでも語れるのに、長所に関しては「えっと……真面目?」と首を傾げるくらいに自分のことがわかっていなかった。
「平凡な僕に長所なんてある? あ、平凡なところとか?」
ここまで来るともはや面白い。
葛城は謙遜でこんなことを言っているわけではなく、本気で思っているようだった。
「平凡を極めているところが長所とかになる?」
「葛城の長所は誰かのために全力を尽くせるところだろう?」
「え?」
「特待生になりたいのは特進クラスに進んでいい大学に行きたいからだ。いい大学に行きたいのは、将来、サッカー選手として活躍するかもしれない日向を支えられるようになるためだろう?」
「でも、それは至ちゃんのためというより、僕のためだよ? 僕はサッカー選手になれるようなすごい才能はないけれど、才能を持った至ちゃんの将来が僕も楽しみなんだ。幼馴染として、その楽しみな将来に同席させて欲しいという結構浅ましい気持ちによる努力だよ?」
「そういう自己観察ができている点も長所じゃないか?」
自分の行動の根底にどんな感情があるかを観察して語れるのも一つの才能だろう。
なんだか、謙虚すぎるような気もするけれど。
「楽しみな未来への同席なら、俺に乗り換えてもいいと思うけどな?」
なんて、俺はついつい希望を言ってしまった。
しかし、俺の下心には気づかずに葛城は「確かに」と笑った。
「神乃くんの将来も楽しみだよね。財閥の跡取りでもいいし、自分で会社を立ち上げるのもいいし、格好いいから芸能界に進んでも良さそうだし、頭もいいから、研究者とかも向いてるかもね」
俺は俺が想像もしたことがなかった俺の未来を次々に口にする葛城を思わず凝視する。
「そんな風に、葛城には見えるのか?」
「見えるよ。神乃くんなら、BL漫画だけじゃなくて、いろんな漫画の主人公になれそう」
「その主人公の隣には、葛城みたいなサポートキャラがいてほしいんだけど?」
葛城がその瞳を大きく見開いて俺をじっと見てくる。
やばい、俺の気持ちに気づかれてしまっただろうか?
よく考えたら、この先の未来もずっと一緒にいて欲しいとか、告白みたいなことを言ってしまった。
「そっか……」と、葛城は呟いた。
「僕の長所は、サポートキャラ力だ!」
「……え?」
「自分がどうしたら活躍できるかなんて思いつかないけど、至ちゃんのために何が必要かとか、神乃くんをサポートするならどんな能力があったほうがいいかとかは思いつくもん! 僕には、主人公を支えるためにどうするかを考える能力がある!」
俺は自分が主人公になることはないとすれていたのに、葛城は主人公ではなくサポートキャラ位置こそが自分の役割であり長所だと納得している。
そんなところも控えめで非常に可愛いと思う。
しかし……
「これも日頃BL漫画を愛読しているおかげだね!」
というのは、たぶん、違うと思う。
結局のところ、葛城は自分の長所を正確には把握しきれていないような気がするけれど、それは俺が見つけていけばいいことだから、まぁ、いいだろう。
