【完結。一気読み推奨☆】ただのハイスペックなモブだと思ってた


 文化祭中、空き教室を見回っていると、ふと、窓の下に人の気配を感じた。

 まさか、空き教室ではなく、校舎裏の人目のつかないところで何かしている人がいるのだろうかと僕は慌てて窓の下を覗いた。
 そして、至ちゃんの姿を見つける。

 至ちゃんは女生徒といた。彼女には見覚えがあった。サッカー部のマネージャーだ。
 彼女はいつも熱心に至ちゃんを見つめていたから、告白するのだろうとわかった。

 でも、至ちゃんはきっとこの告白も断る。
 これまで何度も女の子から告白されているけれど、至ちゃんがその告白にOKを出したことは一度もなかった。

 いつも、「サッカーに専念したいから」と断っていた。

 ちなみに、この断り文句は僕の受け売りだ。
 小学生の頃、初めて告白された至ちゃんは「サッカーの方が好き」と断って、相手の女の子を怒らせたことがある。
 それで相談された僕は、言い方が悪いと、真摯な対応だと受け取られるような言い方を提案した。

 それからずっと、至ちゃんは「サッカーに専念したいから、今は恋とか考えてないんだ。ごめんな」と断っている。
 言い方って大切だ。

 至ちゃんが告白されているシーンを見ながら、僕は冷静にそんなことを考えていた。
 そして、気づく。

 自分の胸がこれっぽちも痛んでいないことに。
 おかしい。いつもなら、至ちゃんが断ることを知っていても、自分ができないことを他の女の子が堂々と行えるという事実にちくりと胸が痛んでいたのに。
 今日の僕の心臓は全く痛くないし、緊張に鼓動が速くなることもない。

 至ちゃんへの告白シーンよりも、さっきの……女装姿を遥翔くんに見られた時の方がよっぽどドキドキしたし、抱きしめられた時には心臓が壊れるかと思った。
 遥翔くんのことを考えただけで、また心臓がドキドキと鼓動を早める。

 僕、一体、どうしちゃったんだろう……


 
 その後、遥翔くんと付き合うことになったけど、遥翔くんは結構甘えん坊というか、常に僕にくっついていたいタイプみたいで、僕、ずっとドキドキしてなきゃいけなくなっちゃった!
 至ちゃんを好きな時は、ちょっと切ないくらいだったのに!

 せめて、学校ではやめてって言ってるのに、生徒会室で二人きりだと絶対にくっついてくる!

 何度か、そんなところを松下さんや鴉間くん、三津谷くんに見られたけど、みんな、微笑ましい眼差しを向けてくるだけで、何も言わないし……
 え? もしかして、もう僕たちが付き合ってるってバレてるの?
 そうは思ったけど、誰にも聞けない。

 もし、僕の勘違いで全然バレてなかったら、わざわざ付き合ってるって伝えることになって恥ずかしいし。
 そもそも、バレてる? って確認すること自体も恥ずかしいし。

 遥翔くんにドキドキするし、みんなにバレてるかもしれなくてドキドキするし、遥翔くんがくっつき虫で恥ずかしくてドキドキするし!

 僕の心臓もたないよ!