翌日、学校に行くと俺は生徒会顧問の先生に会い、星を生徒会に入れたいという話をした。
「葛城は確かに優秀な生徒だとは思うけれど、本人がやる気になってくれるだろうか? 普通科クラスから特進クラスに編入したから、馴染むまで生徒会どころではないのではないだろうか?」
「そうですね。でも、きっと大学受験の際には有効だと説得すれば、やってくれると思うんです」
そう先生に話してみたのだが、先生は「ん~」と悩むような声を出した。
「一般的には神乃が言っていることは間違っていないんだが、葛城に関してはどうだろうな……」
「なんですか?」
「葛城は一年の前期にクラス委員長をやっているし、その後も先生の補助をよく行なっていて内申点はかなり高いんだ」
「そうなんですね」
「ああ。一年の後期は他の者がクラス委員長をしていたのに、一年間ずっと葛城が委員長をしていると勘違いしている先生が数名いたほどだ」
先生曰く、星は非常に教師受けがいいのだそうだ。
「だから、葛城には内申点目当てで生徒会に入るよりも、特進クラスに問題なく馴染んでもらうことのほうを優先してもらったほうがいいと思っている」
そこまで聞いて、俺は少し戸惑っていた。
星自身から拒否されるならばまだしもまさか教師から否定の言葉があるとは思ってもみなかった。
「先生は葛城が生徒会に入ることは反対ということですか?」
「いや、反対とまでは言わないよ。ただ、普通科クラスから特進クラスへの変更というのは慣れるまでかなりの負担になるのではないかと思ったんだ。特進クラスというのは普通科クラスとはかなり違うからな」
先生としては、すでに内申点が高い星には環境に慣れることを優先させてあげたいということだった。
もちろん、まだ二年に入ったばかりだ。一年生の時だけの内申点で十分かと言えばそうではないかもしれないが、そもそも成績も特待生になれる実力のある星である。
内申点がそれほど重要ではない可能性もあるし、特進クラスに慣れてからでも内申点をあげることは可能だという。
俺は先生の話を聞いて、ひとまずは先生から星に生徒会に勧誘してもらうことは諦めた。
「しかし、葛城を生徒会に誘いたいと思うほど、神乃は葛城と親しいのか?」
「実は、特待生になるのを勧めたのは俺なんです」
放課後以外も星と一緒にいたいという願望を叶えるためだったことは言えないけれど、俺は星と仲がいいことをアピールできるチャンスを逃さずに自慢した。
「そうか。普通科クラスの葛城と特進クラスの神乃が仲が良いのは意外だったな。お前たち、二人とも帰宅部だったよな?」
「帰宅部ですが、毎日のように二人で自習室で勉強していますから」
そこまで話して、俺は慌てた。
女生徒の嫉妬を恐れる星から、これは秘密にしておいてと言われていることだった。
俺としても、このことは秘密にしておいたほうがいいと思っている。
「先生、俺と葛城が一緒に勉強していることは秘密にしてもらっても良いですか?」
「別に構わないが、どうしてだ?」
「自惚れではありませんが、俺に好意を寄せる女生徒たちが葛城をいじめると可哀想ですので」
何か思い当たることでもあるのか、「あー」と先生が納得したような声を出した。
「そうだな。葛城のために秘密にしておくよ」
先生の方から星を生徒会に誘ってほしいとお願いすることは諦めたものの、星を生徒会に誘うこと自体を諦めたわけではない俺は、正々堂々と自分から星を誘うことにした。
先生から誘ってもらった方が星を説得しやすいと思ったのだが仕方ない。
「先生から生徒会長をやってほしいという話が来ているのだが」
「副会長の話が俺にも来てるな」
鴉間が言った。
「え!? 俺には来てないけど!?」
三津谷が何やら叫んでいる。
「星を書記か会計に誘いたいと考えている」
「いいんじゃないか?」
「俺は!?」
三津谷が何やら叫んでいる。
「先生に相談したら、特進クラスに慣れるまでは星に大きな仕事を任せるのは控えたいそうだ」
俺の言葉に鴉間と三津谷は星がいるほうへと視線を向けている。
星は女生徒と話が盛り上がっているようだった。
「馴染んでると思うけど?」
「松下さんとあんなに話せるとかもはや最強だろ?」
松下さんというのは今星と話している女生徒で、俺と同じクラスになっている数少ない女生徒の中の一人だ。
特進クラスは昨年、前代未聞の学年途中でのクラス替えがあった。
一年の後期からほぼ男子生徒と俺に興味を持たない女生徒数名のうちのクラスと、俺に好意を持った結果、成績を落とした女生徒や学習に集中できていない女生徒たちのクラスに分けられたのだ。
つまり、このクラスにいる女生徒というのは、俺に興味がない……というよりは、恋愛というものに興味を持っていない女生徒のはずだったのだが、特待生になった星が特進クラスに来てからというもの、星は松下さんをはじめとした、このクラスの数少ない女生徒たちとよく話しているのを見かける。
次の授業の始まりを知らせるチャイムが鳴ると、星が俺の隣の席に戻ってきた。
「松下さんと何を話してたの?」
「それは秘密」
そう笑う星は可愛かったけれど、女生徒と秘密を共有しているというのは気になる。
「え、親友の俺にも言えないこと?」
星の顔に顔を近づけてその目を覗き込むと、星の顔が赤くなる。
「ちょっと近いよ! イケメンなんだから気をつけてよね」
星に「親友」という言葉を否定されなくてホッとする。
そして、やはり顔を赤くする星は可愛い。
星と同じクラスになり、席も隣になってから、俺はしょっちゅうこの幸せな遊びを繰り返している。
星に顔を近づけて、その可愛い顔を覗き込むと頬を赤らめて「イケメンなんだから気をつけて!」と言われるのだ。
俺の行動で星の顔が赤くなるのも可愛いのだが、好きな子から言われる「イケメン」という言葉の破壊力はすごかった。
ただ、問題が一つ、俺のこのささやかな楽しみに、鴉間も三津谷も悪ノリしてくるのだ。
「二人もイケメンだからやめて!」
俺の後にすぐ鴉間と三津谷に顔を近づけられて、星は笑っている。
鴉間はともかくとして、三津谷はイケメンか? とこの前、星に聞いたら、黙っていたらイケメンって言われた。
確かに、黙っていたらそれなりに顔が整って見えるような気がしないでもない。
「葛城は確かに優秀な生徒だとは思うけれど、本人がやる気になってくれるだろうか? 普通科クラスから特進クラスに編入したから、馴染むまで生徒会どころではないのではないだろうか?」
「そうですね。でも、きっと大学受験の際には有効だと説得すれば、やってくれると思うんです」
そう先生に話してみたのだが、先生は「ん~」と悩むような声を出した。
「一般的には神乃が言っていることは間違っていないんだが、葛城に関してはどうだろうな……」
「なんですか?」
「葛城は一年の前期にクラス委員長をやっているし、その後も先生の補助をよく行なっていて内申点はかなり高いんだ」
「そうなんですね」
「ああ。一年の後期は他の者がクラス委員長をしていたのに、一年間ずっと葛城が委員長をしていると勘違いしている先生が数名いたほどだ」
先生曰く、星は非常に教師受けがいいのだそうだ。
「だから、葛城には内申点目当てで生徒会に入るよりも、特進クラスに問題なく馴染んでもらうことのほうを優先してもらったほうがいいと思っている」
そこまで聞いて、俺は少し戸惑っていた。
星自身から拒否されるならばまだしもまさか教師から否定の言葉があるとは思ってもみなかった。
「先生は葛城が生徒会に入ることは反対ということですか?」
「いや、反対とまでは言わないよ。ただ、普通科クラスから特進クラスへの変更というのは慣れるまでかなりの負担になるのではないかと思ったんだ。特進クラスというのは普通科クラスとはかなり違うからな」
先生としては、すでに内申点が高い星には環境に慣れることを優先させてあげたいということだった。
もちろん、まだ二年に入ったばかりだ。一年生の時だけの内申点で十分かと言えばそうではないかもしれないが、そもそも成績も特待生になれる実力のある星である。
内申点がそれほど重要ではない可能性もあるし、特進クラスに慣れてからでも内申点をあげることは可能だという。
俺は先生の話を聞いて、ひとまずは先生から星に生徒会に勧誘してもらうことは諦めた。
「しかし、葛城を生徒会に誘いたいと思うほど、神乃は葛城と親しいのか?」
「実は、特待生になるのを勧めたのは俺なんです」
放課後以外も星と一緒にいたいという願望を叶えるためだったことは言えないけれど、俺は星と仲がいいことをアピールできるチャンスを逃さずに自慢した。
「そうか。普通科クラスの葛城と特進クラスの神乃が仲が良いのは意外だったな。お前たち、二人とも帰宅部だったよな?」
「帰宅部ですが、毎日のように二人で自習室で勉強していますから」
そこまで話して、俺は慌てた。
女生徒の嫉妬を恐れる星から、これは秘密にしておいてと言われていることだった。
俺としても、このことは秘密にしておいたほうがいいと思っている。
「先生、俺と葛城が一緒に勉強していることは秘密にしてもらっても良いですか?」
「別に構わないが、どうしてだ?」
「自惚れではありませんが、俺に好意を寄せる女生徒たちが葛城をいじめると可哀想ですので」
何か思い当たることでもあるのか、「あー」と先生が納得したような声を出した。
「そうだな。葛城のために秘密にしておくよ」
先生の方から星を生徒会に誘ってほしいとお願いすることは諦めたものの、星を生徒会に誘うこと自体を諦めたわけではない俺は、正々堂々と自分から星を誘うことにした。
先生から誘ってもらった方が星を説得しやすいと思ったのだが仕方ない。
「先生から生徒会長をやってほしいという話が来ているのだが」
「副会長の話が俺にも来てるな」
鴉間が言った。
「え!? 俺には来てないけど!?」
三津谷が何やら叫んでいる。
「星を書記か会計に誘いたいと考えている」
「いいんじゃないか?」
「俺は!?」
三津谷が何やら叫んでいる。
「先生に相談したら、特進クラスに慣れるまでは星に大きな仕事を任せるのは控えたいそうだ」
俺の言葉に鴉間と三津谷は星がいるほうへと視線を向けている。
星は女生徒と話が盛り上がっているようだった。
「馴染んでると思うけど?」
「松下さんとあんなに話せるとかもはや最強だろ?」
松下さんというのは今星と話している女生徒で、俺と同じクラスになっている数少ない女生徒の中の一人だ。
特進クラスは昨年、前代未聞の学年途中でのクラス替えがあった。
一年の後期からほぼ男子生徒と俺に興味を持たない女生徒数名のうちのクラスと、俺に好意を持った結果、成績を落とした女生徒や学習に集中できていない女生徒たちのクラスに分けられたのだ。
つまり、このクラスにいる女生徒というのは、俺に興味がない……というよりは、恋愛というものに興味を持っていない女生徒のはずだったのだが、特待生になった星が特進クラスに来てからというもの、星は松下さんをはじめとした、このクラスの数少ない女生徒たちとよく話しているのを見かける。
次の授業の始まりを知らせるチャイムが鳴ると、星が俺の隣の席に戻ってきた。
「松下さんと何を話してたの?」
「それは秘密」
そう笑う星は可愛かったけれど、女生徒と秘密を共有しているというのは気になる。
「え、親友の俺にも言えないこと?」
星の顔に顔を近づけてその目を覗き込むと、星の顔が赤くなる。
「ちょっと近いよ! イケメンなんだから気をつけてよね」
星に「親友」という言葉を否定されなくてホッとする。
そして、やはり顔を赤くする星は可愛い。
星と同じクラスになり、席も隣になってから、俺はしょっちゅうこの幸せな遊びを繰り返している。
星に顔を近づけて、その可愛い顔を覗き込むと頬を赤らめて「イケメンなんだから気をつけて!」と言われるのだ。
俺の行動で星の顔が赤くなるのも可愛いのだが、好きな子から言われる「イケメン」という言葉の破壊力はすごかった。
ただ、問題が一つ、俺のこのささやかな楽しみに、鴉間も三津谷も悪ノリしてくるのだ。
「二人もイケメンだからやめて!」
俺の後にすぐ鴉間と三津谷に顔を近づけられて、星は笑っている。
鴉間はともかくとして、三津谷はイケメンか? とこの前、星に聞いたら、黙っていたらイケメンって言われた。
確かに、黙っていたらそれなりに顔が整って見えるような気がしないでもない。
