また明日


この明桜学園の三年生は、毎年同じ場所へオリエンテーションに向かう。高校三年という大事な時期に、と疑問に思う者もいる。それでも、この行事は変わらない。
担任曰く、荒波を乗り越えられる糧にできるように――
そういう思いから、らしい。

「……はぁ。」
「ん、どうした、御影。酔ったか?」
高速を走り既に20分以上が経過した。周囲はレク係によるなぞなぞ大会やらで大盛り上がりしている中で、冬弥はそっと窓を見つめていた。
だが、そんな冬弥の隣の席には遥陽では無い男が座っている。
彼の名前は「立花 琉生(タチバナ ルイ)」
染めた金髪の髪と黒髪メッシュの短い髪、開けたピアスは両耳で、ひとつずつ。ラフな服装でも嫌味っぽくなく流行りを取り入れた……俗に言う一軍男子。

冬弥達は今、自然公園へと向かっていた。

時は遡り、数日前のとある時間。

「お前たち〜。来週行く自然公園の班決めをするぞー」
気怠げな担任の声に冬弥は「そうだった」と思い出す。前日に服を選びに行ったのに、篠宮から時間変更されてまともに見れていなかった。放課後にでも遥陽と向かおう。

「……げ。ーーーみーーー御影〜!」
「うわ、びっくりした。」
考え事をしていたから、ずっと呼ばれていた事に気が付かなかった。
そこに居たのは確か……
「俺、立花。お前御影だろ?班一緒になろーぜ。」
誰だったかと思い出していたのがバレた。人懐っこい顔の立花は「あとさ」と言うと、後ろで待っていた残りの三人を手招き。
「右から斎藤、秋宮、不知火。」
それぞれ紹介され「よろしく」と言われ、冬弥も頷く。
「よし。決まり。先生、決まったー」
「おー、はやいなぁ。」
立花の元気な声。了承した訳では無いが、決めるのがめんどくさかったのでちょうどいい。
先生から班名簿の紙を受け取ってきた立花は、自分の名前を書くと、「班長誰にする?」と聞いてくる。
「そこは立花がやれば?」
「それがいいですね。」
「ん。」
不知火と斎藤に頷く秋宮。立花は冬弥を見ると、冬弥も頷いたので、班長の枠に「おけおけー」と自分の名前を書いた。お。意外と字が綺麗。
「じゃあ、副班長は御影な?」
「え……まぁ、いいけど。」
なぜ?と言いかけた。

「そう言えば、今回のオリエンテーションは去年と違うらしいぜ?」
「違うとは、どういうふうに?」
立花の席に集まりそれぞれの椅子を持ち寄せ座って話を聞く。
「去年の先輩達は気に入った花の絵を書いてこいって言われたみたいだけど、そんなん誰がやるんだよって事で、スタンプラリーになったっぽい。」
確かに、男子高校生が自然公園で気に入った花のイラストを書いているのは中々にシュールだが、よくそれを何年も続けた物だ。生徒の半数以上から抗議の声が上がったとか。
「所々に先生がいて、ポイント毎にスタンプを回収して時間内に戻ってこい、だってよ。」
秋宮の説明に「へぇ」と返事した時、付け加えるように担任が近寄ってきた。
「ただし、12:00になったらお前ら一度1番初めの拠点に戻ってこいよ。」
「は!?」
全員が振り返る。
「……弁当の支給だよ。それともいらねぇのか?」
ニヤッと笑う先生。痩せの大食いの先生だ。全員のお弁当なんてすぐに無くなってしまう。
それを全員で否定した時、冬弥は静かに目を細めていた。それを見ていた立花だったが、気を取り直すように「各所のポイントなんだけどさ」と話しかけた。



「はぁ。」
「どうした、冬弥?」
「……いや、なんでもない。」
放課後、帰宅途中でずっと考え事をしていた冬弥は、遥陽を見てから視線を逸らす。不思議そうな遥陽だったが、何度もため息をつかれては遥陽とて気になるものだ。
「なんかあったのか?」
「……特に問題は無いんだろうけど。」
らしくない煮え切らない態度。カツッと大股で数歩前へ。目の前で止まり腰に手を当てた。
「話せ。」
「……今度いくオリエンテーション。」
「ああ、来週だな?」
素直に話し出す冬弥。
遥陽は指折り数えていると、三日後だと口にした。
「厄介なんだよな。」
「何がだ?」

「……スタンプラリーで回る場所のひとつに、怪異の巣窟になっている祠がある。」