遥陽と友達になって早くも1年が経過した。
ふたりが会うのは決まって冬弥が居る離れのみ。
母屋で会ったとしても声をかけない約束をした。
傘下や使用人に変に勘ぐられてお互いが不利益にならないようにの対策。初めこそ渋っていた遥陽だが、冬弥の「頼む」に折れた。
遊ぶ内容は本を読んだり、遥陽が持ち込んだカードゲームをしたり、梅野と三人で庭のお手入れをしたりだ。
たまーーーーに遥陽が連れてくる碓氷 仁と言う少年は、どうやら冬弥が怖いらしく遥陽の背中から出てこない。
「冬弥はどこの学校に行くんだ?」
「私は当主が決めたことろだよ」
「それって、頭いいところ?」
その日も冬弥の自室で二人は話をしていた。
梅野が作ってくれたお菓子を食べながらする話は来年入学する小学校について。
冬弥は梅野が作ったもの以外口にすることが出来ない。それは、例え遥陽であっても無理だった。でも、遥陽はそれを否定せずに受け入れた。母屋の定例会の時は立場上仕方なく口にするが、毒物が入っていない日はほぼ無い為、この歳で既に毒に少しずつ耐性がついてきた。少しずつ毒も変わってきた。致死量では無いが、強いものに。
「……どうだろうな。私は何も聞かされていないから」
「なら、俺も行きたい!」
「え?」
「だって、同じ小学校に入ったら今よりもっと一緒にいれるだろ?」
目を輝かせて「よし!」と起き上がった遥陽は、身を乗り出して冬弥に「勉強教えて!」と言ったのも束の間。
「だめだ……なんも分からない。」
「初めて30分だよ、遥陽。」
平仮名とカタカナはマスターしている。これはきっと怪異と戦う上で必要だから早々に身につけたのだろう。
でも、計算が苦手らしく、算数で躓いた。机に突っ伏している遥陽の頭を撫でる。
「同じ学校に行くんでしょ?」
「うん……いく。」
きっと、当主が冬弥を通わせるのは私立の有名校だろう。それこそ受験とか有るのだろうが、管理局が管理する学校なら次期当主としての力も試される。
そんな所に遥陽が入るのは無理……と言うか、不可能だとは思うが、頑張っている遥陽に水をさしたくは無い。
「……遥陽」
「んー?」
問題を頑張って解いている遥陽に声をかけ、微笑んだ。
「ありがとう」
冬弥の部屋で勉強と遊びをしながら、少しずつ苦手を克服している遥陽。
冬弥も教えるのが楽しいのか、次に来る時までに何処を教えようかと考えていた時、呼び出しを受けて母屋の当主の書斎へ向かった。
「大型の怪異が出現した。単身で向かい処理しろ。」
「……はい。」
こちらを見ようともしない実の父。差し出してきた詳細の書かれた紙を受け取り、用は済んだと書斎を出ようとしたら
「最近、月待の倅と会っているそうだな」
扉の前で立ち止まる。梅野の報告では無い。きっと、当主に勝手に群がる蛆虫共が伝えたのだろう。冬弥の事を逐一報告しているに違いない。下手くそな式神の気配もしていた。
幾ら潰せども湧いて出るのを放置し過ぎたな。
「お前も随分と人らしくなったらしい」
温度を感じさせない言葉。だが
「次期当主として月待をそばに置いておくと言うのは賢明な判断だ。」
「お言葉ですが、彼をそういう理由で置いているわけでは有りません。」
振り返る冬弥に目を細めた。
「それに、貴方と同じにされては」
冷たい灰色の視線。当主の黒に近い灰色と重なり
「ーー反吐が出る」
