また明日


梅野と初めて目を合わせて会話した。

冬弥は、他人と分厚い壁を作っていた。それは、例え血を分けた親兄弟であってもだ。他人を簡単に信用出来ない。それは、今までの事があったから。

それなのに、そんな壁を簡単に壊してズケズケと入ってきた遥陽は、冬弥にとって未知なる存在だった。それこそ自分の周りには絶対に存在しない様な人種。
自分の内側に入れるつもりなんて露ほどにも思っていなかったのに、それでも、この花壇に植えてもらった花の優しさは少し、ほんの少しだけ信じてみたいと思えるほどの存在になっていた。
自分自身でも驚く程に。
「……今からでも、大丈夫だろうか。」
ポソと話す冬弥に目を見開いた梅野は優しい顔で頷く。
「ええ。えぇ!坊ちゃんがそう望むのならば、今からでも。」
梅野が首を動かした時、カタンと音が聞こえ、冬弥は下を向いていた顔を上げる。
優しく微笑み続ける梅野は、気がついていたのか。
そこには、玄関から庭へ繋がる道の壁際からこちらを覗き見る遥陽がいた。
「……なんで」
バッ!と立ち上がり、信じられないような物を見る目で見つめると、遥陽は不安そうに目を揺らし「ごめん」と呟いた。
「父さんと母さんから沢山怒られた。俺、冬弥と友達になりたかっただけだったんだ。ここにも来ちゃダメって言われてたんだけど、やっぱり俺、冬弥とお友達になりたいっ」
遥陽は言い終えてもやはり不安なのだろう。視線を下げて服の裾をギュッと握る。
冬弥も震える手を握り勇気を出した。

「……わ、私は他人が信用出来ない。きっと、この先も近寄ってくる人全員を疑ってしまう。だ、だけど……もしも、なれるなら月待遥陽……いいや、遥陽と友達になりたい」
「……!」
「友達というのも私は分からない。楽しませる方法も、楽しい話題も私はーーーーっ!?」
どもりながら伝えた冬弥も視線を下げたが、突然前から衝撃を受けた。至近距離に感じる暖かな温度。
「は、遥陽?」
「ありがとう、冬弥!」
ギュッと抱きつかれ、パッと離れた遥陽は幸せそうな、嬉しそうな笑顔のまま輝く青い目を向けた。

ドクンと跳ねた冬弥の視線。

全身がソワソワモゾモゾする。だけど、それよりももっと……
ここで、遥陽も数年ともにいる梅野さえ初めて見る心から嬉しいと言う様に笑う冬弥の笑顔を見た。
声を出さずに音もなく笑う冬弥に、二人は顔を見合せ笑う。幸福に満ち溢れていた。この時間が続けば良いと心から思ったのだ。
色あせた世界に、色がついた。
おとぎ話のような、美しい世界だ。