後夜祭の勝者が発表された。
優勝は誰しもが予想した通りの結果になったのだが、そんな賑やかな雰囲気のクラスから一人離れて昇降口に向かう冬弥と遥陽。
遥陽は隣で無言で歩いている。
その手を引いて自宅へ急いだ。
玄関の電気が自動で着いた。
いつもなら自分から部屋に向かう遥陽に声をかけても無反応な事に冬弥は目を伏せる。
「遥陽、家だ。もう、休もう。」
冬弥の言葉に反応したのか分からない。遥陽はユラユラと揺れると土足のまま部屋へ向かいベッドに横になる。
「……遥陽。」
冬弥は遥陽の部屋に向かいローファーをぬがしてうつ伏せから仰向けに変えてタオルケットをかけてやる。
薄暗い部屋は月明かりだけがさしていて、冬弥は祈る様に遥陽の温度を感じさせない手を握った。
文化祭の疲れをシャワーで流し、冷蔵庫を開けた。一つだけしか電気を付けずに水を飲んで喉を潤す。
ポタ、ポタと雫が落ちる髪の毛をそのままにソファに座っていると、ガラステーブルの上に置いたケイタイがブブブと音を鳴らせる。
体を動かすのが億劫だ。
「もしもし」
『……大丈夫か?』
電話の相手は篠宮。
「ああ、大丈夫だよ。」
冬弥はテーブルに水を置くと耳にあてたまま天井を見た。
『そうは思えないけどな。』
勘がいいと言うかなんというか。
「要件は?」
『……お前が送って来た報告書に書かれていた後夜祭に出現した怪異の件だ。』
大立ち回りをした即興ショー。
じわじわと出現した怪異を全滅させた。
「……ああ」
『想像通りだよ。』
篠宮の言葉にガツンと殴られた様な衝撃を受けると共に、何処か納得する自分もいて、返答に間が空いた。
『冬弥』
諭す様な篠宮の声。言いたいことは分かってる。でも
『無茶だけはするなよ。』
「……無茶、ね。」
てっきり辞めろとでも言われるのかと思ったが、そうでは無いらしい。
『お前達の付近での怪異の増加に観測課も違和感を感じてるぞ。仁が直接動く可能性もある。』
「もしもバレたら、始末する。それが例え遥陽の意に反する事でも」
『冬弥、お前……』
ブツッと通話を切った。
冬弥はケイタイをソファに投げてそのまま横になる。
「……お前がこの状況を知ったらどうするんだろうな。俺に怒るかな。きっと、怒るよな。 」
冬弥はそっと微笑むと瞼を閉じた。視界が全て闇色に染まる。ケイタイが光っていたのを無視してそのまま抗うこと無く眠りについた。
